焼きたてパンだからできるちょっと贅沢な食文化を提案。 - 小麦の郷ピーターパン - ブランスリー電子版

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お店拝見/2006年2月号

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焼きたてパンだからできるちょっと贅沢な食文化を提案。 - 小麦の郷ピーターパン

木の温もりが伝わってくる小麦の郷ピーターパン。
敷地面積1200坪の日本最大級のベーカリーがオープン。

小麦の郷ピーターパン
住所 千葉県鎌ケ谷市東道野辺3-5-14
電話 047-441-5901
営業時間 午前7時〜午後8時
定休日 木曜日



顧客とスタッフが共有する空間

入り口のすぐ右手にある「石窯パン工房」と名づけた一角。売場と厨房の仕切りが一切なく、石窯のすぐ近くにはコーヒーサーバーが2台置かれている。


販売スペースの一角に設置された「キッズコーナー」。小さな窓から厨房を覗けるようになっている。


コーヒーサーバーを2台設置したのは、万が一1台が故障しても大丈夫なようにと考えてのことだった。


石窯は、店の外から中を覗けるようになっている。
 小麦の郷ピーターパンは、東武野田線・鎌ヶ谷駅と馬込沢駅のちょうど中間の場所に位置する郊外型ロードサイドベーカリーだ。敷地面積はなんと1200坪もあり、およそ60台分の駐車スペースを確保。店舗は2階建てで、建坪はおよそ100坪。
 面した通りから敷地に入って、店舗の入り口までおよそ50メートルはある。土日祭日は専用の交通整理要員を雇っているほどだ。
 店舗の正面に向かって右側に、石を積み上げて作った石窯舎があって、そこから大きな煉瓦造りの煙突が2階の屋根の上までのびている。もちろん中には大きな石窯があって、店の外からも、店の中からも見えるようになっている。
 店舗の前には、オープンカフェ風のテラスがあって、無料サービスのコーヒーなどを飲んだり、購入したパンを食べたりできるようになっている。
 入り口を入ると、すぐ右手に大きな石窯が迫ってくる。石窯から出たパンは、近くに設置された作業台の上で最後の仕上げなどが施される。
 石窯のすぐ近くには、コーヒーサーバーが2台置いてあって、顧客が自由にコーヒーを入れられるようになっている。
 この一角は、「石窯パン工房」と名づけられ、顧客と同ベーカリーのスタッフが共有できる空間になっていて、「お客様との距離を縮める」という同ベーカリーの目標を達成するための大きな力になっている。というのも、この一角だけ、販売スペースと、厨房の仕切りが一切ないのだ。
 同ベーカリーの横手和彦社長は「『お店のどこで食べたいか』という調査をしたら、『厨房』という答えが最も多かったという話を聞いたことがあります」と話した。



顧客を喜ばせるための様々な工夫。

多くの客で活気づく小麦の郷ピーターパンの店内。


ピーナッツの形の「ピーナッツフランス」。カットしてピーナッツクリームをはさんである。


1日150個は売れるという人気商品の「メロンパン」。


人気商品のひとつの「チーズフランス」。カット面から見えるチーズが購買意欲を刺激する。


ブルーベリーを練り込んだ直焼きパンの「ブルーベリークッペ」。


調理パンなどを加工するためのオープンキッチンも店を活気づける大きな要因のひとつだ。
 「パンの製造では生地の温度管理が最も大切」との考えから、小麦の郷ピーターパンでは、冷水機を導入し、ミキサーはすべてジャケット付きのものを入れた。特に夏場の暑い時期に捏ね上げ温度を一定に保つことを念頭に置いている。「品質のブレを極力小さくし、常に最高の状態のパンを提供するには、パン生地の温度管理を徹底させることが最も大事だと考えたんです」と横手社長はいう。少量ずつ小まめに仕込むことも心掛けている。
 店内には、様々なパンが所狭しと並んでいた。「メロンパン」(105円)はメロン皮に工夫を凝らし、独特のさくっとした食感を実現している。土日で1日150個は売れるという。
 「黒糖かりんとう」(262円)は、透明のカップに入れて販売するカリントウドーナツで、売場にちょっとしたアクセントをつける役割も担っている。
 「ピーナッツフランス」(126円)は、ソフトフランスの生地をピーナッツの形に焼き上げて、千葉県産のピーナツを使ったピーナツクリームをサンドした商品。
 「チーズフランス」(273円、ハーフカット137円)は、チーズをたっぷりと入れて焼き上げた商品で、ホールとハーフカットをいっしょに陳列。ハーフカットの切り口から見える、今にもこぼれ出しそうなチーズが食欲を刺激する。
 「ブルーベリークッペ」(126円)も人気商品。ややソフトな生地にブルーベリーを練り込んで焼き上げた商品。
 小麦の郷ピーターパンの店内には、顧客を喜ばせるための様々な工夫が施されている。
 「キッズルーム」は、売場の一角にある子供用の小さなスペースで、絵本などが置いてあって、母親がパンを選んでいる間、子供が楽しく過ごせるようになっている。厨房に向かって小さな窓が付いていて、厨房の様子を覗くことができる。
 「サービスカウンター」は、試食を配ったり、予約の商品を手渡したりする場所で、「グリーター」と呼ぶお客様係が付いて対応する。
 一方、調理パンやサンドイッチなどを加工するためのオープンキッチンが、売場の奥にあって、「ハム&チーズ」(336円)や「マスタードチキンサンド」(441円)などが顧客の前で加工されていく。「そのパンはどんなパンですか?」などとスタッフに声をかける顧客も多く、スタッフと顧客のコミュニケーションの場のひとつになっている。



異業種交流会での出来事だった。

石窯が収まっている石づくりの石窯舎。階段を登ると2階の多目的スペースへ出る。


店内は天井が高くゆったりとした雰囲気だ。


屋外のテラスにあるゴミ箱も木製で、統一感がある。ゴミはきちんと分別して捨ててもらう。
 横手和彦社長は、ベーカリー経営暦30年のベテランだ。最初に店をオープンしてから20年が過ぎようとしていたとき、ある人から「あなたの店のパンの魅力は何ですか?」と聞かれて、「焼きたてでおいしいパン」と答えると、「焼きたてでおいしいのはどこのパン屋さんも同じです。ピーターパンさんじゃないと駄目だ、というものは何ですか?」と問いただされた。異業種交流会での出来事だった。
 「ショックでしたね。それまで長い間ベーカリーをやってきて、改めて自問してみると、はっきりとした答えが出てこなかったんです」
 そんなときに、ある講習会で「焼きたてパン
だからこそできるちょっと贅沢な食文化を提供する」というテーマに出合って、「これだ」と思った。ベーカリーのあるべき姿をゼロから考え直し、1999年、千葉県市川市に新たにベーカリーをオープン。キーワードは「手作り」「無添加」「彩り」「自然の温もり」の4つだった。
その3年後には、石窯を導入した初めての店を千葉県船橋市にオープン。顧客との距離を縮めるために、厨房と売り場の間に大きなガラス窓を設置。パンを食べてもらうスペースも作り、コーヒーを無料で提供した。
 さらに、段数の多いパンの陳列棚をなるべく少なくし、できる限り平台を多くした。パンは上から見てもらった方がおいしく見え、より身近に感じてもらえると判断したからだ。
 寿司屋のカウンターをイメージして、調理パンのオープンキッチンも作った。
 「お客様はあることに満足すると、今度はそれより一段高いレベルのことを求めてくるようになります」と横手社長はいう。
 「あるとき、あるお客様が、パンに手の甲を当てて、『これいつ焼いたパン?』と聞いてきたんですね。つまり焼きたての温もりがないと駄目だということなんです」
 横手社長は「タイムベーカリー」といった。「焼き上がってからどれくらいの時間なら販売していいか」を常に真剣に考えているのだ。
 「現在のうちの力では、店に並んでいるすべてのパンを温もりがあるうちにお客様の手に渡すことはできませんが、その理想に近づけるようにできる限りの努力はしています」
 そしてついに昨年12月、「小麦の郷ピーターパン」がオープン。それは、横手社長がこれまで追求してきた理想的なベーカリーのあり方の、ひとつの集大成でもあった。
 およそ1200坪の敷地に、大きな2階建てのウッディーな店舗。石窯と煉瓦づくりの煙突。庭には、木や花がいっぱいのテラス。横手社長は「自然の温もりを表現したかった」と話した。
 ドイツの古代米から起こしたルバン種で作る「ピーター食パン」や、ホシノ酵母でオーバー
ナイトで発酵させて作る「天然酵母バゲット」、液種を使用して作る「ノア・レザン」、栄養のバランスに配慮した様々な総菜パンなど、商品ごとの特徴付けをしっかりと行った。また、「無添加」を強く意識し、カスターやあん、カレーなどは完全自家製のものを使用している。



スタッフの独立を支援していきたい。

ディスプレー用のコーナーには、正月用の飾り付けが施されていた。


ブレッド類も様々な種類があって充実している。
 「小麦の郷ピーターパンの現在の課題は何ですか?」との質問に横手社長は「まだオープンして日が浅いせいもあり、従業員一人当たりの生産性が低いことです。オペレーションがさらにスムーズになって、スタッフが慣れてくれば生産性は上がると考えています。現在は少し余裕をみて、人を多めに配置しているということもあります」。
 「今後の展開について何か考えていることはありますか?」との質問には「直営店をさらに増やしていくより、従業員が一人前に育ったら、のれん分けというか、独立する手伝いをしていきたいですね。この歳になると会社がどんどん大きくなるよりも、自分のところで人が育つということの方が嬉しいですね。うちで修業し、価値観を共有する人が、日本各地で、ベーカリーをやっているという感覚はとてもいいものです。『小麦の郷』の次には、地方都市でも充分やっていける日商規模40〜50万円の店を出したいと考えています。うちのスタッフが独立するときのモデル店舗にしたいんですよ」。

「木」と「石」に加えて「水」もとり入れたい。

「ごまチキン」(168円)など焼き込み調理パンも充実。


レジは2台あって、1台のレジに2人のスタッフが付き、効率よく清算していた。
 屋外のテラスの隣に、大きな水車小屋を作る計画を現在検討中だ。「温かさや懐かしさなんかを表現したいと思っているのですが、『木』『石』に加えて、『水』があったら、さらにいいと思っているんですよ」(横手社長)
 小麦の郷ピーターパンの現在の平均日商はおよそ90万円。オープン初日は300万円を売り上げたそう。敷地面積およそ1200坪。建坪がおよそ100坪。販売スペースがおよそ28坪で、厨房がおよそ60坪。従業員は製造が常時約10人、販売が常時およそ10人、調理パン担当が常時3人。「お客様に喜んでもらうためには、従業員が満たされた環境になければならない」との考えから、休憩室や仮眠室など従業員のための施設も充実させている。

原価計算女王
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