
炭入り食パンの「チャコールフェレテリア」。発売して2カ月だが、支持者が少しずつ増えているという。

夫人と共にオーナーの河合尊準さん

ワンローフの「チャコールブレッド」(上)、なまこ形の「チャコール」(右)、「チャコールあんぱん」(左)

炭入りの生地で粒あんを包んだ「チャコールあんぱん」。

フェレテリアは、街道沿いにあるが、観光地のペンションといった趣だ。
飼っていた豚の胃腸の調子がよくなった。 東京・町田市のベーカリー、フェレテリアは、「チャコールフェレテリア」「チャコールあんぱん」など、細かな粉末にした炭を生地に練り込んだパンを今年5月に商品化した。
炭を練り込んだパンは商品化しているベーカリーも少なくないが、同ベーカリーの河合尊準オーナーは、こうした流行にはまったく関心がない。開発したきっかけは、幼いころの思い出だった。食パンの「チャコールフェレテリア」は平均して1日10斤程度売れていて、出だしとしては好調だそうだ。
河合さんは、東京・町田市で代々農業を営なむ農家に育った。幼いころ、家で飼育していた豚が胃腸を壊すと、燃え残った炭を集めた「消し炭」を飼育小屋にまいていた。それを食べた豚は、すぐに胃腸の調子をとり戻した。
炭は、このとき、河合さんの脳裏に、「体にいいもの」として焼き付けられた。
細かな木炭の粉を生地に練り込んだパンが最初にフェレテリアに登場したのは、およそ5年前。しかし、炭が充分に細かい粉になっていなかったせいか、食感が納得いくものにならなかった。河合さんはすぐに販売を打ち切った。
そして、今年5月、ようやく納得のいく食感の「炭入りパン」が完成した。救世主は書道に使う硯(すずり)だった。河合さんは、木炭を硯でていねいにすってみた。水に溶けた状態のすり上がった炭を、ミキシング時に生地に配合すると、滑らかなパンに仕上がった。長年の課題だった「炭入りパン」が完成した。
炭は、木炭を使ったり竹炭を使ったりする。配合量は、生地の色を見ながらそのつど決めるので、量ったこはないという。炭を入れることによる味、食感への影響はないという。
炭のパンの品揃えは、食パンの「チャコールフェレテリア」(1斤420円)、粒あんを包んで焼いた「チャコールあんぱん」(130円)、ワンローフ型で焼く「チャコールブレッド」(290円)、なまこ形の「チャコール」(260円)の4品目。
河合さんは「代々受け継いできた農家の知恵をパンに応用しました。価格が安くないので、万人に受け入れられるとは思いませんが、理解していただける方に、食べていただければいいと思っています」と話している。
顧客からアイデアをもらい常に独自の道を行く。 河合さんは、町田市役所に長い間勤めていた。およそ15年前、思うところあって、脱サラ。
最初はベーカリーではなく、別の仕事で独立するつもりだったが、ちょうどバブルが崩壊した時期で、計画通りにことが運ばず、紆余曲折の末、ベーカリーに商売変え。そのとき河合さんはパン作りは未経験で、パン職人を雇ってのスタートだった。同時に大手製パンメーカーの販売店も経営した。
経営的には楽ではなかった。数年後、パン職人を解雇。店を閉めるべきか続けるべきか悩む日々が続いたが、続ける決心をした。職人が残していったレシピを頼りにパン作りに苦闘する日々が始まった。職人がいたときに働いていたパートのスタッフにアドバイスを求めることもしばしばだった。
「食パンがうまくできるようになったら、今度は菓子パン。そんな感じでした」。河合さんはこう当時を振り返った。
常に独自の道を行く。ほかの店で修行したことはない。すべて独学。
これまで、柿やたけのこなどからおこす酵母を開発したり、近くの実家でとれる様々な野菜を使ったパンを作ったりと、独自のパン作りの道を進んできた。
キーワードは「古きよき時代の生活の知恵をパン作りに活かすこと」だ。
「お客様に育てられてきました。お客さんから知恵を授かるんです。お客さんの『おいしい、まずい、すっぱい』という声を素直に聞いて、どうしたら喜んでいただけるかをいつも考えています。面倒なことでも進んで行い、愛情をもって接すれば、パンとお客様は必ず応えてくれます」
▽フェレテリア 東京都町田市図師町1919-1、電話042-794-3915