売上4割増を期して、移転、リニューアルオープン。 - パン焼き人 - ブランスリー電子版

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お店拝見/2005年8月号

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売上4割増を期して、移転、リニューアルオープン。 - パン焼き人

ベーカリーと共にレストランを運営することにこだわる。

パン焼き人
住所 東京都世田谷区代田1‐35‐13
電話 03-3421-9399
営業時間 午前11時〜午後9時(月曜は午後7時閉店)
定休日 火曜日



大きな石窯がそのまま搬入できる物件

パン焼き人の店構え。左側が大きな通りに向かった面で、右側が通りから入った道に向かう面。右側の面から石窯を搬入した。


オーナーの安井定義さん(中央)と女性スタッフ。


「パン焼き人」の看板がとてもユニーク。


厨房と売り場は、パンの陳列棚で仕切られていて、陳列棚越しに厨房のスタッフに気軽に声をかける客も多い。(厨房から陳列棚越しに売り場を見た写真)
 東京・目黒区で長い間、ベーカリーを営んできたが、立地条件を考えたとき、「これ以上売上は伸ばせない」と判断せざるを得なかった。売上4割アップを期して、移転することになった。
 満たさなければならない条件がふたつあった。ひとつは、それまでの店舗で使用していた石窯が搬入できること。同石窯は分解できないため、そのままの状態で搬入する必要があった。高さ約3メートル、重さ4・5トンの石窯を搬入できる物件はそう簡単に見つかるものではなかった。
 ふたつめは、人が集まる場所であること。それまでの店舗は、最寄り駅から徒歩約15分の大きな街道沿いにあったが、人が集まるような場所ではなかった。パンの力だけで人を集めなければならなかった。さまざまな提案を地道に行ってきて、馴染み客もだいぶ増えていたが、さらに増やそうと考えたとき、限界を感じざるを得なかった。
 神奈川県の東急東横線、東急田園都市線沿いなどを探したが、ふたつの条件を満たす物件は見つからなかった。千葉県で探そうかと思っていた時に、たまたま現在の物件が見つかった。
 もともと機械のショールームだったところで、1階の天井が高い造りだった。トラックが入れる道に向かった面が大きな4枚の扉で、柱がない。大きな石窯がそのまま搬入できることがわかった。
 近くに高級スーパーがあって賑わっていることもわかった。最初の店を出したときは、価格の問題に苦しんだ。スーパーで売っている180円の食パンと、価格だけで比較して、何も買わずに出て行ってしまう人を目の当たりにして、価格ではなく品質で選んでもらえるようにと、無我夢中で顧客を啓蒙してきた。
 「ここだったら、その苦労をしなくても、最初から自分のパンを理解してもらえるのではないか」と安井さんは思った。



陳列棚越しに顧客との会話が弾む。

売り場は天井が高く、広々とした印象。テーブルが配され、お昼と夕方はレストランになる。レストラン用に焼くさまざまなプチサイズのパンのバイキングが人気を呼んでいる。


入り口は正面から少し奥まったところにあり、趣がある。


200グラム分割のオニオンブレッド。これと同じ生地を40グラムに分割して焼き上げ、2個入り150円で販売したところ、飛ぶように売れた。


陳列棚越しにパン職人と交わす会話は、食通の心をくすぐる。
 オープンから、約1カ月。全体の顧客の2〜3割は、前の店からの馴染み客。残りが新店舗で出会った新しい客。新しい客の中には、入ってきて一通り見て、何も買わずに出て行く人が少なくなかった。最初の店を出した当初と同じだった。
 「その場所場所で、臨機応変に対応していくのがプロのパン職人」と考える安井さんは、作戦を練った。
 例えば、フライしたオニオンを練り込んだなまこ形のパンの「ローストオニオン」(250円)。200グラム分割の製品だが、40グラムに分割して、2個入り150円で販売してみたところ、飛ぶように売れた。
 「生地の重量と値段の割合からいうと、2個入り150円の方が実際は割高なのですが、売れますね。見た目の割安感があるのだと思います。あと、いろんなパンが食べたいという願望もあるのではないかと思います。1個のパンが大きいと、それしか食べられませんから」(安井さん)
 前の店で行っていたパンの説明も積極的に行っている。同ベーカリーは陳列棚が、厨房を囲うようになっていて、棚の隙間から厨房の中がのぞけるようになっている。棚に並んでいるパン越しに厨房で働くスタッフが見えるのだ。
 顧客から、パンについて質問されると陳列棚越しに、すぐに答えられる。陳列棚をはさんで顧客と会話が弾むこともしばしばだ。陳列棚越しだと話しやすいという利点もあるそうだ。
 「試食提供も積極的に行っていきたいと思っています。スタッフがパンを切って、お客様に手渡す方法がいいと考えています」(安井さん)。



ソフトな食事パンの時代が来る。

きな粉を使ったカスタードクリームを包んだ「きな粉カスタードクリーム」(120円)。


中種法のパンの中種をそのまま成形し、ホイロをとって焼き上げる「ルロー」(左、230円)と、同じ生地にグリーンオリーブを練り込んだ「オリーブ」(右、200円)。


仕込み水にココナッツミルクを使用した「ココナッツのパン」(ワンローフ500円、ハーフ270円)。


砂糖不使用の生地で粒あんを包んだ「塩あんぱん」(130円)。
 「正統派のハード系もいいのですが、これからはしっとり感のあるソフトな食事パンだと思います」
 安井さんはこう力説する。「高齢者が多くなる時代、バリバリのフランスパンは、食べづらいという人が多いのではないかと思います。食パンは、ソフトな食事パンの代表ですが、もっといろんなソフトな食事パンがあってもいいと思うんです」
 「新しいソフトな食事パン」のひとつが「ルロー」(230円)だ。この商品は、中種法でパンを作る時の中種をそのまま成形して焼き上げた商品で、独特なソフト感が新鮮な商品だ。 
 「ローストオニオン」も「ソフトな食事パン」のひとつだ。プチサイズがよく売れているが、安井さんとしては、200グラム分割のなまこ形の大きな商品を最終的には普及させたいと思っている。
 「ロールパンやコッペパンと違うところは、直焼きだということです。特に石窯で焼くと、中の水分が閉じ込められて、とてもいい感じになります。このサイズでこの形だと、いろいろな食べ方ができると思うんです。スライスしてトーストして食べてもいいし、サンドイッチにもできます。ちぎって食べてもいいわけです。お客様の食卓で、お客様がいろいろと工夫をしていただけると思うんですよ」(安井さん)



きな粉を使ったカスタードクリームのパンも

「よもぎカレーパン」(左、130円)、「激辛カレーパン」(中、130円)、「ココナッツカレーパン」(右、150円)などカレーパンの種類も豊富だ。


生ハムやスモークベーコンなど様々な食材も販売している。


厨房で作業する安井さん(右)とスタッフ。
 「ブルーチーズハニー」(440円)も比較的ソフトな食感のユニークな商品だ。ブルーベリーを練り込んだ生地に、黒胡椒を混ぜたハチミツに浸したブルーチーズを巻き込んで焼き上げた商品。
 ワンローフ型で焼く食パンにも、ユニークな商品が多い。
 「ココナッツのパン」(ワンローフ500円、ハーフ270円)は、仕込み水にココナッツミルクを使用し、生地にはココナッツを細かく砕いてローストしたものを練り込む。焼く前に表面にココナッツをまぶす。ココナッツの香りがほんのりとする上品な味に仕上がっている。
 「昔の食パン」(1斤320円、ハーフ170円)は、国産小麦粉を100%使用したパンで、砂糖5%、塩2%、酵母2%の配合。これが食パンの配合の原形なのだそうだ。
 きな粉を使ったカスタードクリームを包んだクリームパンもある。商品名は「きな粉カスタードクリーム」(120円)。同ベーカリーのスタッフが帰郷した際に買ってきたお土産のお菓子にヒントを得て開発した商品。カスタードを炊く際に、小麦粉にきな粉を混ぜて使用する。

レストランを併設することにこだわる。

ブルーベリー入りの生地でハチミツ漬けのブルーチーズを巻き込んだ「ブルーチーズハニー」(右、440円)と、赤ワイン入りの生地にブルーチーズを入れた「ブルーチーズロッソ」(左、370円)。


「カロリー」では、「トマト」(80円)や「かぼちゃもろこし」(80円)など様々な素材を練り込み、ワンローフ型で焼き上げた製品をスライスして販売。


パン焼き人の売り場の一角には、「カロリー」と名づけたコーナーがある。無塩無糖のパンを販売するコーナーだ。無塩無糖でもおいしく食べてもらえるよう様々な工夫が施されている。食事制限をしている人などから、支持を得ているそうだ。
 安井さんは、レストランをベーカリーに併設することにこだわっている。
 「カフェではなくレストランなんです。パンといっしょに料理を出すことにこだわっているんです。パンのバイキングでいろいろなパンを料理と共に食べていただくことで、お客様にウチのパンについての理解を深めていただけるんです。売上的にも4〜5万は上乗せになりますし」。安井さんはこう話した。
 午前11時から午後2時までがランチタイム、午後2時から5時までがデザートタイム、午後5時から8時までがディナータイムになっていて、売り場のテーブル席のあるスペースがホールになる。
 ただ、レストラン運営に当たって、ひとつだけ安井さんを悩ませていることがある。子供が騒いでしまうことだ。ベーカリーの場合は、顧客の滞留時間が短いので、それほど問題にはならないが、レストランの場合は、顧客の滞留時間が長くなるので、この問題は深刻だ。
 「中には、席を離れて、走り回る子供さんもいるんですよ。ほかのお客様に迷惑になるし、あまりにひどいときは、結構きつく注意します。もっと困るのは、自分の子供が騒いでいるのに親が何も言わず、ほったらかしという時です」
 現在のところ、子供連れで食事に来る客に対しては、「お子さんが席から離れないようにしてください」とお願いしているという。
 パン焼き人は、売り場約20坪。厨房が約18坪。スタッフは、製造が安井さんを入れて2人。レストランの調理は、安井さんの指導の下、5人のうちの1人が担当。
 販売やホール担当が由美子夫人を入れて5人。平均日商は、レストランも含めておよそ17万円という。

原価計算女王
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