実践的ベーカリーマネージメントの基礎知識(12) - ブランスリー電子版


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実践的ベーカリーマネージメントの基礎知識/2005年3月号

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実践的ベーカリーマネージメントの基礎知識(12)

文・折井英雅
昭和30年に東京農工大学農芸化学科を卒業し、(株)東急フーズ(現サンジェルマン)入社、サンジェルマン開発部長、海外事業部長として国内外約120店舗のインストアベーカリー、レストランベーカリーの企画から開店までをプロデュース。平成3年ハワイ・ディーライトベーカリーでの2年間の社長職の後退社。平成4年から11年まで食糧学院・東京ホテルレストランカレッジ製菓喫茶店経営科(現在、東京栄養食糧専門学校に移管)科長として専門学校の教育に従事。現在はベーカリー会社顧問のほか、名古屋文化短大食生活専攻科講師として製菓製パン理論、フードマネージメント論を講義。所属団体としてはRC・アミカル会副会長、フードシステム研究所主任研究員として「食文化から食マーケティングヘ」の視点から、同研究所の江戸を学ぶ会、新発想開発塾に研究員として参画。



店を繁盛させ、利益を出すための出店の進め方は?

第5章 出店戦略

第8節 プランニングプレゼンテーション


多くの会社では、経営者が企画書を読んで納得し、物件の採用を決定すれば、次の具体的な契約や設計の段階に入ることになります。しかし、前回掲載した「開店計画のフローチャート」では次の項目としてプランニングプレゼンテーションが入っております。良い店を作るには、社長、幹部社員、関係の担当者、外部の設計者や施工先などすべて関係者の意志統一を計ることが重要で、そのための有力な手段がプランニングプレゼンテーションです。すなわち企画書の内容を図表等で視覚に訴え、シーンとして皆の頭に描くことで、店舗づくりのストーリーを、全員が共有することが可能になります。これを行うには、ビジュアルな表現や、ネーミング、ロゴ、パース作成などが不可欠で、専門の知識が必要になります。したがって企画担当者だけでは難しくなるので、専門のデザイナーに協力を頼むケースも多くなります。私のかってのサンジェルマン出店時の経験からも、デザイナーはぜひ必要だと思います。できればコンセプトワークの時から参画してもらい、会社の内容や方針、経営者の意志をよく理解してもらっておくとよいと思います。商品やデザインのコンセプトづくりにもかかわってもらい、会社側に立って設計の指針や施行の管理に責任を持ってもらえば、その後の店作りがスムーズに進んでいくと思います。
プレゼンテーションではA3判位のボードか、OHP等を用いて次の項目を図解などで解りやすく説明します。
▼ボード1 基本コンセプト(業態、立地、客層、ネーミング、ロゴマーク、商品構成コンセプト、デザインコンセプト)
▼ボード2 投資額、売上推定、収支表、損益分岐点売上、将来見通し
▼ボード3 平面レイアウト
▼ボード4 パース
▼ボード5 材質、カラーサンプル表



第9節 賃貸借契約

物件を借りてテナントとして出店する場合が多いと思いますが、その場合は、契約書を締結します。その契約書は貸主から原案が借主に渡されるのが通例です。個人の貸主で物件が1店しかないような場合は、仲介の不動産会社が一般的な雛型を示してくれることがよくあります。また駅ビルやショッピングセンターのような大規模の貸主になりますと、出来上がっている契約書を渡されることがよくありますが、条件が借主に厳しくなっている場合が多いので注意が必要です。いずれにしても字句の内容を理解して十分検討し、不利にならないよう交渉することが大切です。
なお賃借物件については契約書以前に次のようなことに注意する必要があります。
1・ビル所有者と物件賃貸先とが異なる場合がありますので両者の意志の確認が必要です。即ちビル所有者と物件賃貸先はテナント関係にありますので、その契約で又貸しの禁止がある場合や業種の限定がある場合があります。あらかじめ確認しておく必要があります。
2・店舗に必要な基本設備が整っているかチェックします。物件建物の建築設備仕様表があればこれで確認できますが、ない場合、事前に電気、ガス、給排水、給排気設備の有無と容量を調べておきます。容量不足の場合増設が可能か、増設の場合の費用負担はどうなるか、事前に両者で了解し合っておくことが必要です。
3・連帯保証人が必要か否かを確認しておきます。できたら必要ない方がよいのですが、通常個人での契約の場合、保証をするため連帯保証人を要求され、その保証人についての資格条件を制限される場合があるからです。



第10節 店舗設計、見積、施工

店舗設計については、建築、設備、機械什器の配置というハードの面と、店舗のデザイン、什器のイメージ、カラーコーディネートというソフトの面の両方から考えていく必要があり、重要な段階です。
構想、コンセプトワーク、企画について、経営者の意志と社員の意志がかたまってきたら、プレゼンテーションを行い、デザイナーと打ち合せをします。こうして店舗設計の基本コンセプトを最終的に決定します。
これをもとに外部の設計者(施行会社の設計部の場合もあります)に設計を依頼することになります。
外部に店舗設計をお願いする時、基本コンセプトに基づいて次の点について自分の店はこうなんだという考え方をしっかり持って常に接触していくことが重要です。
1・基本的なオペレーション作り
店舗を作るのは営業して利益を出していくのが目的ですから、ただ美しい店だ、すばらしい内装だ、という静止状態の評価だけが良くても駄目です。
その店が繁盛して利益を出してくれなければなりません。そのためには、客に愛される魅力のある店であると同時に、優れた機能をもった店であることが必要です。その優れた機能を持った店づくりには、次のようなオペレーションを考えていくことが重要です。
[1]効果的なゾーニング
ベーカリーは機能面から工場と売場に大別できます。これに飲食をつければ厨房と客席が加わります。
更にこれに付随して設備室、倉庫、休憩室、ロッカー、トイレなど必要に応じて整えます。この機能別スペースをどの位ずつの大きさに配分するか、どのような位置どりで配置するかを考えてゾーニングを決めていきます。
[2]機能的工場(厨房)システム
ベーカリーでは、商品をスムーズに製造する能力のある機械の選択とその配置、品揃えのために細かく何回にも分けて製造できるシステムづくりを行います。イートインではメニューコンセプトに合った料理が調理でき、客のオーダーにスムーズに対応できる効率の良いシステムを構築することが肝要です。
[3]客も従業員も満足感を持てる売場(客席)
売場はまず対面販売かセルフ販売か、あるいは併用型かを決めます。
そして客に商品が見易いこと(特に重点商品群について)、買いやすいことを中心に考え、あわせて従業員が動きやすいことも考えて、什器の選択と配置をします。
客席については、フルサービスでいくのかセルフサービスでいくのかを決めてから、カウンター席やボックス席の大きさや席数、その配置を考えていきます。
この際に従業員の働く距離が長すぎたり、従業員どうしが交錯してしまう配置だと、それだけで神経がすりへってしまい、お客さんに笑顔で接することがとうていできなくなってしまいますので、導線の研究が重要です。
[4]効果的なアメニティ施設の設置
客や従業員が心地よくその店で過ごせるようにするための工夫です。
特に最近従業員満足(ES)経営(第8回参照)の重要性が指摘されていますので、従業員のための働きやすい環境作りを心掛けましょう。
多くの場合、借りる物件は狭いので、どうしてもしわよせが従業員にきてしまいがちですが、ES経営の観点からぜひ工夫して良い環境を整えるべきです。
2・快適な空間作り
お客さんが店に入った時、ああ良い雰囲気の店だなと感じてもらえるような空間にするために、次のようなことに注意します。
[1]適正な空間ボリューム
売場は客に狭すぎる感じを持たれないように、通路の確保とか天井の高さに気をつかいます。
[2]快適な空調
お客さんのためにも、商品(特にセルフでは)のためにも、心地よい温度条件が要求されますが、単に温度だけではなく湿度、清浄度、分布を適切に処理することが重要です。
[2]店舗の照明
デザインコンセプトともおおいに関係してきますが、照明については、設計上重要な項目として次のことを考えていきます。
○照度
○演色性
○照明器具の種類と使用場所、使用方法
○照明の演出
[3]色彩の工夫
テーマカラーとアクセントカラーは、デザインコンセプトのカラー計画において重要な項目です。
3・店舗コンセプトに合った内装材、什器のデザイン統一
プランニングプレゼンテーションの時にデザイナーとの打ち合せでおおよそのパースや、カラーサンプルは表示してありますが、設計の段階ではこの節で説明してきた事柄も加味して、内装、床、壁、天井の材質、カラーをより具体的に計画します。
什器については、機能性と同時に、店舗デザインに合うような形、材質感、カラーであることが大切です。
以上のことをふまえて、会社側、デザイナー、設計者の間で議論を重ね、より良い店舗になるように改善して、基本設計図書を作り上げます。
その基本設計図書ができてから、それをもとに工事の見積りをとることになります。
設計をお願いしている建築会社に信頼があれば、そのまま施工までやらせる場合もあります。
設計だけを設計会社に頼んで、あとは3、4社からの競争入札で決めることもあります。いずれにしても、適正な見積額になっているか注意深く確認する必要があります。デザイナーにチェックしてもらうのがよいと思います。
そのためにも信頼できるデザイナーをできるだけ早い段階から参画させておくことが望ましいと、私の過去の経験からお薦めしておきます。
施工先が決まりましたら、会社の日程にしたがって工事に入ります。



第11節 営業計画

営業計画書は、開店のための手引書にもなるものです。企画書をベースにして、プレゼンテーション、契約書締結、設計見積りなどの過程で、より詳しく記述したり、訂正したりして、より正確で具体的なものに仕上げていきます。
営業計画書の内容は一言でいえば「アタマ」「モノ」「ヒト」「カネ」になります。
アタマは、考え方のことです。企画書作成に当たって、充分検討してきた店舗の目的とコンセプトを記します。
モノは、商品のことです。企画書の商品コンセプトに基づいて商品プランニングをします(プランニングの手順についてはこの連載の第8回を参照)。そして、重点商品群、一般商品群の個々のアイテムを決めていきます(重点商品群、一般商品群についてはこの連載の第8回を参照)。そして個々の商品の商品マニュアル表を別に作っておきます。
ヒトは、店の組織、人員のことです。組織人員計画では会社組織における店舗の位置付け、店を維持していくために必要な人員構成を決めます。足りない社員やパートはどう募集し、どう採用し、どう教育していくかについても決め、その日程も調整します。
カネは、収支関係のことです。企画の段階でおおよその収支表ができておりましたが、計画が進むに従ってより精度の高い数字が分かってきますので、それをもとに3〜5年の損益収支表を作成します。これは開店後の収支と比較して成果分析をするための重要な基礎資料となります。

第12節 業務書類整備

開店後必要とする帳票類を整備しておき、まごつかないように準備しておくことになります。次のフローチャートに従い必要とする帳票類を整備します。
▼管理様式 
○生産日報(生産指示書含む)
○営業日報(商品ロス表含む)
▼係数管理様式 
○売上伝票→売上統計表→売上集計表
○材料仕入伝票→材料管理表
○経費伝票→経費集計表
○タイムカード→実働時間集計表→人件費集計表
これらの帳票類は、損益計算書作成に必要なものです。

原価計算女王
原価計算女王
第13節 営業許可申請

食品関係の営業には保健所の営業許可が必要です。申請して許可がおりるまで2〜3週間位必要ですし、不備な点があれば変更命令も出ますので、図面ができた早い段階から相談をかねて接触しておいた方が良いでしょう。

第14節 開店日程、スケジュールチェック

開店日程表の一例とスケジュール表の一例
開店日程表は開店前50日位から次のすべての項目について、もれのないように、進行が錯綜しないように作成します。(写真参照)
▼日程記入前に既に作成してある書類
○出店営業計画書
○店舗設計図書・工事見積書
○賃貸借契約書
▼日程作成前に既に決定してあるもの
○店名・ロゴタイブ
○店舗(商品、デザイン)コンセプト
○収支予想表
▼日程表に記入する項目
○建築・内装・設備
○人事計画、商品計画
○機器・備品、販促・事務
◇
また仕事が日程通り進んでいるかを毎日チェックしていくため、スケジュール表を作って書き込んでいくのも効果があります(写真参考)

第15節 成果分析

オープン後、営業計画で狙ったコンセプトどおりの店舗になっているか、商品構成は正しかったか、予想の売上げが確保され利益の見通しは大丈夫か、などについて、毎日の営業の情報を収集し、分析し、差異があれば戦略をたてていくことが、今後の会社発展のための重点になってきます。そのためにはこの連載の第1回で述べた経営系統図の流れをしっかりつかみ、プラン、ドゥ、チェック、アクションの経営のサイクルをまわしていくことが大切です。
以上2回にわたり出店戦略の考え方を述べてきました。紙数の関係でやや抽象的なきらいになってしまいましたが、フローチャートのストーリーはしっかり把握してもらえたと思います。具体的なストーリー(出店技法)については機会がありましたらまた述べたいと存じます。



ベーカリーマネージメントについて、第1回の最初に表示した、経営系統図の流れに従って12回にわたって説明してきました。そしてその流れ(ストーリー)の節々でシーン展開の姿をみてきました。頭の中で、ストーリーを書けること、シーンを描けること、そしてそれらを有機的、系統的に結び付けて考えられることが、経営能力のセンスアップにつながるのだということを感じとっていただき、日々の経営活動に生かしていただければ、筆者にとって大変幸甚なことでございます。(折井英雅)


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