実践的ベーカリーマネージメントの基礎知識(10) - ブランスリー電子版

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実践的ベーカリーマネージメントの基礎知識/2005年1月号

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実践的ベーカリーマネージメントの基礎知識(10)

文・折井英雅
昭和30年に東京農工大学農芸化学科を卒業し、(株)東急フーズ(現サンジェルマン)入社、サンジェルマン開発部長、海外事業部長として国内外約120店舗のインストアベーカリー、レストランベーカリーの企画から開店までをプロデュース。平成3年ハワイ・ディーライトベーカリーでの2年間の社長職の後退社。平成4年から11年まで食糧学院・東京ホテルレストランカレッジ製菓喫茶店経営科(現在、東京栄養食糧専門学校に移管)科長として専門学校の教育に従事。現在はベーカリー会社顧問のほか、名古屋文化短大食生活専攻科講師として製菓製パン理論、フードマネージメント論を講義。所属団体としてはRC・アミカル会副会長、フードシステム研究所主任研究員として「食文化から食マーケティングヘ」の視点から、同研究所の江戸を学ぶ会、新発想開発塾に研究員として参画。



重点商品群は、1品目について必ず1日3回は焼成する。

第4章 営業活動

第1節 売上増加策(続)


2.商品
C品揃え
商品構成と品揃えが同じような使われ方をする場合がしばしばありますが、ここでは次のような区分で使い分けたいと思います。
商品構成は、この節のA(月刊ブランスリー12月号)で述べているように、その店の商品コンセプトに基づき、どの品群にどの商品アイテムを採用するかという、そのお店で取り扱う全商品の設計ということになります。
品揃えは、その設計された商品を客の購買動機に基づき客の欲しい時間に欲しい量を、理想的には過不足なく提供するという、お客さんのためにお店に並べられた状態の商品ということになります。
製造の立場からすると、プロダクトミックス(1日にどんな種類のパンをとれだけ作るか)によって生産性が左右されますので、効率の良いパンだけを作っていたり、また1日分を1回で大量に焼いてしまえば、生産性は大幅に上がります。
しかし効率の良いパンだけを作っていたのでは品群の広さが図られず、商品に魅力が出ません。1日に1回の焼成では夕方のパンは冷えきってしまい、焼きたての魅力はまったくありません。プロダクトミックスは、セールスミックス(何がどれだけいつ売れていくか)によって決めていかなければなりません。
すなわち何をどれだけいつ売りたいから、何をどれだけいつ作るかの調和があって、お店にとって売上高がもっとも高くなる品揃えになるわけです。
品揃えの要点は
◎営業時間を次の3区分とし、重点商品群については、それぞれの時間帯に必ず焼きたて品が出るように、1品目3回は焼成する。他の品目も2区分の時間帯で焼きたて品が出るように、最低2回は焼成する。どの区分で焼くかはパンの性格でどの食形態に合うか、お客さんの反応を見ながら決めていく。
▼第1区分 開店時〜11時
▼第2区分 11時〜3時
▼第3区分 3時〜閉店時1時間前
◎夕方から閉店時にかけてロスを減らそうと、ほとんどパンが並んでいない店をみかけますが、これでは客はいつ行ってもパンがないからと来なくなってしまい、チャンスロスが多くなります。重点商品の3品群のそれぞれの5品目は閉店時まではあるようにします。重点商品でこれだけあれば、お客さんは何らかのパンを買ってくれて、不満は出ません。
もし15品目で5個づつ残ったとしても 75個×150円=1万1250円で1日売上23万円(年間売上7千万円、300日営業の1日平均)に対し4・9%にすぎません。
なお、残品の問題は次節で説明します。
3.販売促進
売上を増大させその売上を推持していくためには、顧客の増大を図り、その顧客をリピーターとして固定化していかなければなりません。
 そのためにはこの販売促進の日常の活動が必要になってきます。基本的な考え方や年度計画については第7回で説明しておきましたが、販促の手段については項目だけであったので、今回はそれが日常のベーカリーの販売活動でどう使われたら効果が上がるかについて述べていきます。
来店促進
新規出店の場合はもちろん、既存店でも、新たに顧客を開拓するための促進です。
◎新聞折込広告―リニューアルオープンとか、開店何周年記念などで店の存在を再認識してもらう時に効果があります。
◎チラシ―新商品の開発とか大きな催事のときなど街頭で配布したり戸別に配ります。直接個人に接触するので、笑顔と意欲をもって主旨を説明し、好意を持ってもらうことが大切です。
◎パブリシティ―新商品や店づくりの特徴をマスコミの記事で取り上げてもらいますが、実情とちがっていて不利益をこうむることもありますので、取材と掲載の時期、内容に注意します。
店内促進
お店まで来てくれたお客さんが、商品に魅力を感じ固定客になってもらえるように促進することです。
◎プライスカード―以前は商品名と値段だけの表示でしたが、商品の特徴も記載してアピールします。
しかしあくまで客に見易く、わかりやすくという点から、カードは大きめにした方が良いと思いますが、そうかといってあまり大きいとパンが隠れたり、取りにくかったりしますのでほどほどにします。
Aベーカリーも以前は7×3センチの大きさでしたが12×4センチと大きくしました。商品名と価格はなるべく大きく、特徴の説明文はなるべく1行で簡潔に書きました。品質保証の点からプライスカードに説明文を細かく記載した方が客に親切だという意見もあります。しかしプライスカードではどうしても字が小さくなり一々読んでくれません。説明が必要な新商品や特徴については、POPカードを活用し、場所が離れる場合もありますので写真入りで別に表示するか、販売員が説明することにして、プライスカードは簡潔明瞭にしておく方が客に親切だと思います。
◎POPカード―新商品とか特に季節で特徴を紹介したい時に使いますので、やや大きめのA5版ぐらいです。従って商品とやや離れた場所になる場合もあるので写真をつけておくのが良いでしょう。説明文は前回製品開発で使った「3りの理」にしたがって表現すると的確になります。
▼こだわり―特徴のある材料、特別な製法
▼わけあり―どういう食べ方が良いか、体にどうか
▼わざあり―どういう風味か、どういう技術か
◎試食販売―よく見かけるのは、試食提供品が時間がたって乾燥してしまってばさばさのまま並べられていることです。よく店員が注意して、食べてみてまずくなったらひっこめろとか、そのパンがのっている同じトレーに沢山置いておくようにとか言っている人もいますが、なにせパンは乾燥が早く、さらに細かく切ってあるので、すぐにはじから捨てるはめになります。
Aベーカリーでは特別に店の中央入り口近くに試食台をおき、今日試食してもらう焼きたての商品を試食当番の販売員が説明しながら、切りながら提供します。その台の上にはプライスカードをつけたその商品のトレーが置いてあるのでそこからも客は買っていけます。
4.接客
接客の基礎的なことは、どこのお店でも販売マニュアルとして文章化してあり、入店時はもちろん、常に機会あるごとにOJTとして教育しておられると思います。したがってここでは、視点を変えて客とのパーティシペーションを持ちながらの接客はいかにあるべきか、販売員に必要とされている3機能について説明しておきます。
3機能とは▼アドバイサー機能▼トレーナー機能▼パートナー機能の3つです。
◎アドバイザー機能〜沢山ある商品の中から客の望む一番合ったものを情報としてアドバイスしてあげる。販売員には豊富な商品知識と表現力が要求されます。
◎トレーナー機能〜食材の調理法、食卓の演出などの指導ができる。イートインコーナーのような場所で「作るところを見せ、作りながら食べてもらい、食べながら買ってもらう」ということで、実際には試食実演を充実させて、試食担当の販売員はこの精神で説明に当たってもらうということです。
◎パートナー機能〜当店の商品はお客さんとともにあるという仲間意識を持ってもらうことが大事です。販売員は客の意見をよく聞き、すぐに答えを出してあげることで、双方向のパートナーシップを結んでいくことになります。



第2節 費用削減策

費用項目には収支表で見るようにいろいろの項目があり、それぞれに節減を図ることは大切ですが、その中でも金額が大きく、日常の管理で成果も出る(逆に放置すれば損失も出やすい)材料費と人件費について述べていきます。
1.材料費
Aベーカリーの損益計算書(第3回表1参照)で売上原価=材料費は34・3%になっています。 
この内訳は―
a標準材料費比率(設計の材料費比率27%+歩留率1%)=28・0%
b製造ロス(工程ロス2%+不良品ロス(第8回表12参照)1%=3・0%
c販売ロス(残品ロス=商品ロス比11・8%×28%)=3・3%
―になっており、ここで節減を考えると、aでは新製品を企画する時に設計材料費が27%以下を目標にします。しかしこれは商品政策ともからみますから総体の材料費で27%以下を目指します。
bの工程ロスで大きいのは材料の計りこみや、規格以上に重量をつけてしまう(第8回表16バターロールの例参照)ことが多く、予定収量がとれません。従業員の意識と技術向上(第8回表14参照)が重要になります。bの不良品ロスは原因が集計表(第8回表12)からわかりますので対策をとっていきます。
cの販売ロスは、ロスの中で一番大きいものですから、重点的に管理します。
しかし残品を減らそうとそればかりに力を入れますと、欠品が多くなりチャンスロスが大きくなって、売上に影響しますので、この兼ね合いが管理の重点になります。
品揃えの時の説明のように、重点商品群の15品目は残っても良いと考えたとしても、商品価格対で4・9%です。
もちろんこの比率を下げる努力も必要ですが、まだこのAベーカリーの実績ではその外のパンで6・9%も残品ロスが出ています。一般的なリテールベーカリーのロス率は5〜8%といわれますので、この結果から本年は残品ロスを10%以下にし、次の年は7%以下にする計画を立てました。これですと収支表での材料比率は、1・3%も下がり利益に大きく貢献することになります。
常に機会損失と残品損失の両面から考えることが重要で、これが発注管理の重要性につながります。
発注管理とは、生産数指示のための販売の予想と製造の修正の管理をいいますが、ここでその考え方を述べておきます。
◎月別、曜日別、変動指数に催事を加味して生産数の計画を立てる
◎11時〜1時、3時〜6時の売れる時間帯に商品の充実感と新鮮感を客に与えることが大切です。品揃えで述べたように重点商品群は1日最低3回、その他のパンは2回適正な時間区分で焼き上げます。
◎閉店までの商品提供
これも品揃えで述べてありますが、残品を減らすためには夕方欠品してよい商品を決めます。重点商品群でない、嗜好品的なものになります。
重点商品群で1品群で5アイテムぐらいは残っても良いとします。そして重点商品群で15品目5個づつ残り、その他パンで30品目ぐらい平均4個づつ残ったとして残品率を計算すると―
▼重点商品→75個×150円=1万1250円(残品率4・9%)
▼一般商品→120個×130円=1万5600円(残品率  6・8%)
▼合計残品率11・7%
これから目標の10%にするためには一般商品で30個ぐらい、7%にするためには一般商品で80個ぐらい減らせば良いことになります。
2.人件費
Aベーカリーの損益計算書(第3回表1)では35%になっており、説明にもある通り、一般に比べてかなり高いのは、将来の多店舗化のための人材投資の部分があるということでした。
実情をシフト表(表18)と構成人件費(同)で説明します。
社長は給与総額が人件費となります。社員は基本給の1・4倍が人件費となります。
パートは基本時給額が800円ですがそれに交通費、福利費を時間あたり50円加算しました。
年間で2454万円で35%になりました。
リテールベーカリーの製造の人時生産性は、初心者、パート6000〜9000円、一般技術者9000〜1万2000円、チーフ級技術者1万2000〜1万5000円。
販売の人時生産性は 8000〜1万2000円といわれています。人材投資を考えずに節減だけを図れば、23万円の売上に対し人時生産性から製造は3人必要です。Aベーカリーでは、社長は社長本来の企画や管理の仕事ということで、生産シフトに入っていません。しかし店も当分1店舗だけであるし、とにかく利益を出すために人件費を切り詰めようと考えた時には、社長も生産シフトに入ることもありましょう。
社長がシフトに入って店長も兼務ということになれば、チーフの39万2000円、年間で470万円が浮き、6・7%の節減になり、人件費比率は28・3%で、30%を割り込みます。
もし社長はそのままで2店舗目の技術者養成をとりあえず考えないで、社員技術者をパートに置き換えたとすれば、30万8000円-17万円=13万8000円、年間で165万円が浮き、2・4%の節減になりますが、その場しのぎのぎりぎりの選択でしかありません。
重要なことは実際の生産工程に合った人と時間の適正な能力配置になっているか、この態勢で品質を落とすことはないか、また会社の将来のための人材育成に支障をきたさないかということであり、シフト編成には十分な検討が必要になります。



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