実践的ベーカリーマネージメントの基礎知識(9) - ブランスリー電子版

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実践的ベーカリーマネージメントの基礎知識/2004年12月号

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実践的ベーカリーマネージメントの基礎知識(9)

文・折井英雅
昭和30年に東京農工大学農芸化学科を卒業し、(株)東急フーズ(現サンジェルマン)入社、サンジェルマン開発部長、海外事業部長として国内外約120店舗のインストアベーカリー、レストランベーカリーの企画から開店までをプロデュース。平成3年ハワイ・ディーライトベーカリーでの2年間の社長職の後退社。平成4年から11年まで食糧学院・東京ホテルレストランカレッジ製菓喫茶店経営科(現在、東京栄養食糧専門学校に移管)科長として専門学校の教育に従事。現在はベーカリー会社顧問のほか、名古屋文化短大食生活専攻科講師として製菓製パン理論、フードマネージメント論を講義。所属団体としてはRC・アミカル会副会長、フードシステム研究所主任研究員として「食文化から食マーケティングヘ」の視点から、同研究所の江戸を学ぶ会、新発想開発塾に研究員として参画。



いかにして売上を増加させるか!?店舗と商品の観点から考察する

第4章 営業活動


企業運営の長期方針と年度方針については第2章で述べてあり、その延長線上に実際に利益を産み出す日々の営業活動があります。
その営業活動の前に経営系統図では営業活動の次の項目であるマーケティング戦略をあえて先に説明してきました。これは日常の営業活動のサポートとしても重要であり、このマーケティング戦略の考え方や手法を理解しておくことが、営業活動の計画や行動に計り知れない効果をもたらすものと思ったからです。
事実営業活動の実施については随所にマーケティング戦略でとり上げてきたことを活用しております。
端的に利益は 利益=売上-費用の公式から考えられます。
経営の第一線におられる皆さんにはご存じのことばかりとは思いますが、Aベーカリーのようなリテイルベーカリーで、利益増大のためにいかに売上を上げていくか、いかに費用を下げていくか、などについてお伝えすることで、少しは参考になるものもあろうかと、あえて述べていきます。



第1節 売上増加策

売上増加の施策または活動をすることによって直接間接に売上増加に結びついていきます。
この構成要素を考えますと、まず商品を売る場所としての店舗、即ちplaceと、価格Priceを含んだ商品、即ちproductが必要です。そしてそこで少しでも多く売りたいという意志で販売促進、即ちpromotionを行い、日々お客さんとの間に心を通わすparticipationを保ちながら、接客サービス、即ちpersonalを心をこめてやっていくことで、売上が上がっていくことになります。
これは第3章第4節の顧客づくりの6pと同じ考えに基づくもので、顧客が増え、リピートが多くなれば、当然売上は上がるわけです。
これをふまえ、項目別に売上増加策を考えていきます。

1.店舗
出店戦略については次章で述べるとして、ここでは現在営業している店舗で、売上増加に結びつく要素を考えてみます。ここでは4点からみることが大切です。
a清潔
店を清潔に保つことは食品を取り扱う衛生上からも当然のことで、清掃マニュアル等でいつ、だれが、どこを清掃するか決めてあると思いますが、ともすればマンネリ化して、お客さんからみれば不満足の場合が多々ありますので、特に店長のチェックと気配りが必要です。
例えば路面店で、お店の前の掃除が行き届いていなかったり、外壁が薄汚れていたりでは、お客さんに不快感を与え、お店に入ってくれないかも知れません。(外観は売上を上げる大きな要素で、店のデザインについては出店戦略について述べる際に説明します)
また店に入ったとき見える通路は掃除し易いのできれいにしてあっても、セルフ棚の粋が磨いてなかったり、棚の奥にパン屑がたまっていたりではお客さんの買う意欲がわきません。
b整理、整頓
整理とは器具や備品が所定の場所に置かれていることであり、整頓とはものが乱雑にならないできちんと整っていることです。
よく忙しい時は、きちんとしろといわれると何でもかんでもすみに積み重ねます。一見綺麗に見えますが、次に必要なものを取り出すとき、あれどこにやったかなあと引っ繰り返したり、となります。最初から場所を決めて常にそこに置く習慣をつけておくことが大切です。お客さんからみても「ああこの店はいつ来ても整っているな」と好感が持たれますし、従業員の方も能率が上がってきます。
C美感
清潔で整っているだけでは、お客さんに潤いがありません。そこで花を飾ったり、陶器を陳列したりします。それが商品と調和していることが大切です。
ある洋菓子店では売っている菓子と、飾ってある花の一体感から、客の方から「これを一緒にギフトに使いたい」と買っていったことから、菓子と花のセット販売を始めて、たいへん好評だということです。
ベーカリーにおいてもパンと籠、パンと皿の陳列から、そのセット販売が始まるかも知れません。丁度ブランスリーの先月号(11月号)で(株)サンバックエイティさんがパンの籠盛りなどパンのギフトの提案のPRをされておりまして、まったくその通りだと思います。とにかく、調和のとれた美感の演出が、お客さんを引き寄せることになります。
d保全
店舗計画で内装設備をきちんと設計し、施工してあっても、日常それらをうまく機能させるための保全がされていなければ意味がありません。特に照度が足りないとせっかくの商品がおいしそうに見えませんし、店全体が何となくみすぼらしく見えます。
切れた電球がそのままなんていうのは論外ですが、切れていなくても古くなって照度が落ちていたり、ガラス面が汚れていたりする場合が見受けられますので、注意が必要です。

2.商品
前回の第8回で、商品については商品構成、品揃えまで含めた設計の品質、製造の品質を品質管理の面から述べておきましたが、ここでは売上増加策の視点から、品質管理を参考にして説明します。
a商品構成
パンの製品特性で分けた次の品群の中から、どの品群に力を入れるか、また特定の少数の品群のみを取り扱う専門店になるか、全品群まで広めた総合店になるか、その中間店になるか・・・。こうしたことをまず決めておくことです。このとき、店のコンセプトをはっきりさせておくことが大切です。
品群としては一般的に、▼食パン▼テーブルパン▼フランスパン―ハードロール▼菓子パン▼デニッシュ▼クロワッサン―ブリオッシュ▼ドーナツ▼調理パン▼サンドイッチ、の9群を考えます。
Aベーカリーは、JR山手線駅近くの商店街の立地ということで、住宅街の主婦をメインに、OL、女子学生をも対象にしましたので、専門的商品構成を採用し、食パン、フランスパン―ハードロール、クロワッサン―ブリオツシユの3群を重点品群とし、欧風パン屋をコンセプトとしました。
総合的な商品構成店とは、この全ての品群を平等に並べてありアイテム数も多く、150から200種近くはあるでしょう。
専門的な商品構成店とは、お客さんが店に入ったとき、その重点品群がすぐわかるように、他の品群よりアイテム数がずば抜けて多く、目につきやすいところに並んでいる、常に焼きたてが豊富に並んでいる店といえましょう。大体1品群で20〜30アイテムはあるでしょう。
専門的商品構成店も1、2品群しか取り扱わない極端な超専門店から、取り扱いは総合店に近い多品群を持ち、その中の何品群かを専門的に取り扱う形までいろいろありましよう。
Aベーカリーも3品群を重点に考えましたが、立地からいって客層もある程度広いので、他の品群も全てアイテム数は少ないが取り扱うことにして、100アイテムくらいの店になりました。
この理由として、地域密着型のベーカリーは、そこに住んでいる日常の買物客を対象にしますので、店のコンセプトから、重点は2、3品群でも、やはり取り扱いアイテムは多くした方が売上が上がる、ということがあると思います。
品群は多くなっても、うちは欧風パン屋だ、という性格づけは必要でしよう。
 それがあった方が客は安心できるわけです。多店舗展開している総合ベーカリーでも、核となる品群を持ち、その商品群で面をもった売場を構成しています。
例えばアンデルセンはデニッシュペーストリー、ボンパドウルはフランス生地のパン、ジョアンは食パンと、各ベーカリーの特徴がすぐ出てきます。しかし取り扱いはすべての品群にわたっており、全体で大きな売上になっています。
ベーカリーは商品を1、2群に絞って、それだけを取り扱う専門店から、全品群を取り扱う総合店までの様々なので、経営者は、店の性格付けをどこにするかを考え、マーケティンクグリサーチの情報等から品群の取り扱う度合いを決めていくべきでしょう。
商品構成を考えるとき、品群から考えるのは、どちらかというと店側の意志ですが、これからは、客側の方も向いて考えるべきだということで、商品に対するいろいろのカテゴリー構成が言われるようになりました。
店の商品訴求の面からは、4カテゴリー(▼基本商品▼戦略商品▼季節商品▼店長、従業員オリジナル商品)が考えられます。
これについては、橋本氏が「パン屋さん手帳〜ブランスリー2003年8月号」で詳しく説明しておりますので精読してください。
一方、客の購買動機の面からの4カテゴリー(▼食事用▼おやつ用▼手土産用▼寄り合い、パーティー用)が考えられます。
これは商品開発の時、どの品群のどのアイテムをどのカテゴリーで考えていくか、という点から重要になってきます。
b新商品開発手法
商品開発の基本的考え方は第6回のメニュープランニングのところで述べてあります。
すなわち、メニューコンセプトがあり、それから構成カテゴリーを決定し、各カテゴリーについて、具体的にお客さんのニーズ、自己のシーズから商品を開発する、となっています。
しかし具体的な手法ということになりますと、一概にはいえませんし、一つの系統だけではおさまりません。ニーズはマーケティングリサーチでわかるとしても、シーズはその人の感性と経験ともいえるわけですから。
ここでは経験的に2、3参考になる手法を述べますので、これをヒントにあとは賢明なる皆さんにお任せいたします。
◎パン特性分類のある項目を置換、付加、削減させる
パンをいろいろな角度から分類していきますと、そのパンの性格が浮かび上がってきます。その一部を他のものに置き換えるか、なにか別のものを加えることによって、従来とは違った新商品になります。
分類は大きくボデー系とナショナル系、喫食形態系に分かれます。
ボデー系分類は、パンの原料になる穀物や、配合の相違、製法、できた製品の形とか大きさで分ける方法です。
ナショナル系分類は、字の通りパンの国籍というかパンの歴史から分けるやり方です。喫食形態系分類は、お客さんが何の目的でどう食べるかという食形態で分ける方法で、主食用とか、おやつ用とかいうことです。
パンを全て知る上ではこれら三つの分類が重要ですが、商品開発ではボデー系分類で考えます。
一つの例としてイギリスパンを考えてみましょう。
イギリスパンのボデー系分類
原料穀物は――小麦粉〜(置換)小麦粉の一部を蕎麦粉に――そば食パン
穀物種粒食部位は――胚乳部(白パン)〜(置換)全粒粉に――ホールウィートパン
生地仕込みは――ストレート法
加熱は――焼く
加熱の形態は――2斤型で蓋なし
製品の形は――角パンで山形〜(付加)トップに手を加え編みパンに
生地のリッチ度は――リーン〜(削減)更に砂糖、バターを落としシンプルに――パンドミー
パンの固さは――ソフトタイブ
これにナショナル系はイギリス、食形態系で主食用を入れれば、イギリスパンの性格がよくわかってきます。
そこで右側の〜のあとに変化させた別のパンをあげておきました。
◎生地または焼いたパンに具を組合せる作業を表すあらゆる動詞を収集し細かく分析する
例としてメロンパンについて考えてみます。
mixing(混ぜる)
混ぜ込む〜メロンの断片を
溶かし込む〜メロンのジュースを
練り込む〜メロンペーストを
clothing(包む)
包み込む〜メロン餡を
薄く包む〜メロンペーストをロール状に
一部出して包む〜メロンそのものをブロック状で
topping(掛ける)
ふりかける〜ドライメロンの砕片を
spreading(塗る)
上の表面に塗る〜メロンジャムを
全体の表面に塗る〜メロンクリームを
covering(被せる)
上に蓋をする〜メロンクッキー生地で
putting(挟む)
上を切り挟む〜スライスしたメロンを
横を切り挟む〜メロンクリームを
メロンのところを、果実、ナッツ等で置換すると別の製品の分析になります。
◎洋の素材、技法を和の素材、技法に変えてみる
最近の新製品開発では、和風回帰とか、和洋折衷とかがブームの感がありますが、おいしいものは本質的にどちらの素材、技法でつくられても良いわけで、ベーカリー技術者にとっても和菓子の食文化的な学習が必要と思われます。(第6回コラム参照)
例えば、▼落雁の技法でポロボローネをつくる▼みぞれ嚢の材料(道明寺粉、寒天)と技法で和風プリンをつくる▼おやきの具でおやきパンをつくる、などが考えられましょう。
◎商品構成組立原表(表17)から最適の製品になるように組合せを考える
これは特に調理パンやサンドイッチ等で活用できます。
また各項目には新しい素材や形態などをどんどんプラスしていくことで最新のニーズに応えられます。
この組合せを行う時、「3り」の理で考えると、アイデアが出やすいといわれます。
「3り」とは、こだわり、わけあり、わざあり、のことです。
一例として、生ハムサンドを作るときのことを考えてみましょう。ある商品開発担当者は、商品構成組立原票から、肉類の生ハムと野菜のトマト、ルッコラを選び、パンはライブレッドを採用し小さな正方形に切り、パンのスライス面には粒マスタードの合わせバターを塗って具をはさみ、白いボックスにかわいらしく詰めました。
実はこの商品開発の過程で「3り」の考え方が活かされているのです。すなわち、「こだわり」(材料、形にこだわること)の観点から、生ハムは特徴を出すため原産地にこだわり、○○高原の○○加工場の○○氏の手作りハムを使用したのです。
ライブレッドを選んだことには、「わけあり」です。つまり、生ハムは塩味が強いので味覚の調和上から普通の食パンでなくライブレッドを使用したのです。
そして、あざやかな配色の妙によって、出来上がった製品を美しくおいしく見せるために、沢山の野菜の中からトマト、ルッコラを選んだことが「わざあり」ということになります。





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