延期はしたけれど…収穫は大きかった! - 私の開業物語(5) BY 鈴木紀美枝 - ブランスリー電子版

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私の開業物語/2004年11月号

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延期はしたけれど…収穫は大きかった! - 私の開業物語(5) BY 鈴木紀美枝
9月最終土曜の夕方、商店街で露天商を始めた。
パウンドケーキ2種とスイートポテト、ガーリック
ラスクが1個100円で計80個。3時間で完売した。
平カゴを肩から下げた姿はまるでサンドイッチマン。
翌週は台風で順延することに・・・。
休日を利用するとはいえ、大忙し。
日曜日は朝から売りに出るぞー。



手探りマーケティング

この辺にはおいしいパン屋さんがない、遠くまで買いに行く、近所の人たちのこんな声が、地元の商店街で開業したいと思った理由の一つである。店を出したあかつきには、お客さんの要望を大事にして、味を変えていきたいと思う。2月下旬の起業家セミナー(正しくは『市民事業ビジネススクール』という)で、事業計画書の講義があるので、下準備をする。
商圏は、半径1キロメートルか500メートルか。人口、年代、家族構成、所得層、嗜好、志向、・・・なんてどうやって調べるんだろう。とりあえず、自宅のすぐそばにある図書館に行き、住宅地図をコピーしてつなげてみた。貸し店舗を中心に半径500メートルの円を描いてみると、ちょうど円周上に、区立小学校が3つもあったのだ(ほぉ〜)。店の近くには、区立と私立の中学・高校や、幼稚園・保育園が。商店街の先にある駅は、乗降客が多く、いつもにぎわっている。新築マンションも建っていく。
通行者も数えることにした。朝7時から、商店街と店の通りとの十字路に立ち、男女、老若別にノートに正の字を書いていく。私立中学生が大挙して通ったため数え切れず、しょっぱなから挫折。
国産小麦粉100%と国産材料、有機農法・減農薬をウリにするつもりなので、短絡的に生協の組合員にウケると考えた。3つの生協(首都圏コープ、コープとうきょう、生活クラブ生協)のセンターに電話をして、半径500メートル圏内の町名を伝え、組合員の人数を尋ねた。一番こだわっている生協の職員が、概算で答えてくれたが、残り2軒は断られた。練馬区などに比べてこの辺は組織率(加入率)が低いが、30世帯ぐらいはあるとのこと。この人たちには是非ともファンになってもらいたい。いや、なるに違いない、・・・と思うことにした。
私自身、子供が生まれた20代前半に加入して以来、生協の組合員歴は20年になる。ご近所で班を作って一括して配達してもらい、その場で仕分けをした。食料品全般に雑貨、衛生用品、書籍、家具、電化製品、と多岐にわたって扱っている。有機・低農薬の農・畜産物も購入出来る。組合員活動というのにも参加し、イベントの運営に携わったことも、なつかしい思い出となっている。



辞めたくなる理由

今までの道のりの様々なことが、良くも悪くも影響するものだ。前記の生協活動然り。
製菓学校を卒業して3年半になるが、パン屋に就職する時は、最低でも1年は勤めよう、とか3年は働きたいと思う。辞めてきた理由は2パターン。一つ目は、面接当初と労働条件が全く違う、または変えられた場合。もう一つは、オーナー(あるいは店長)に絶えられなくなったこと。抑圧され、不当な評価を受けた(と私は思う)時である。
相手から、叱咤し詰問するのは見込んでいるからだ、と言われても、自分でもそう思い込もうとしても駄目。次第に心と体が離れてゆき、辞めモードに入る。たいていコンビニで『ガテン』を手に取っている頃である。言葉の暴力と威圧的な態度に弱いのは、物心つく前からの父娘関係が影を落としていると、人に言われたこともある。私も反抗心旺盛で、その態度が更に相手を刺激してしまう。
現在はというと、とても親切なオーナーと同僚たちに囲まれて、話し合いながら、なごやかに仕事ができて、ストレスなし、という毎日である。
昨今、従業員教育の手法は、コーチングがブームになっており、飲食店や職人の世界でもとり入れられつつあると言われている。作業習熟と個別の問題解決能力を身につけるためには、体育会的な指導(トレーニング)やマニュアル教育では無理だと言うのである。対等な立場でカウンセリング的な対話を重ね、共同で問題を解決していく。今の職場はまさにそんな感じだし、私の目指している姿でもある。それにしても、製造室で泣き、品出しで売り場に出ると同時の笑顔、ひきつるよね。



『市民事業ビジネススクール』にて

恵比寿駅から歩いてWWBジャパン(「女性のための世界銀行」)の事務所を通り過ぎ、セミナー会場へ。小さな会議室に、受講生は22名。そのうち男性は3名。年代は、20歳前後から60代まで。2日間の講座の内容は、自己紹介と起業家度チェックの項目の自己採点、起業家の事例紹介2名(ミルク酵母のパン屋「マールツァイト」オーナー白井さんの講演と、着物のネット販売のHPの紹介)、講義が3コマ(事業形態について、事業計画の立て方、計画書の作り方)、市民バンク代表の片岡勝氏の講演、最後に、自分の事業や夢の紹介(発表)である。
パン屋の白井幸子さんは、準備期間3年、50歳で開業した。印象に残ったお話―。場所の選定にこだわったこと。手間のかかる高価なパンの製造販売なので、文化の薫りのする地域の住宅地に店を構えた。自分のやり方、個性をしっかりと出す方がよい。口うるさく気難しい人は、長く続くよいお客様になる。
また、資料として配られた雑誌「月刊店舗」に掲載されていた記事の中で彼女は、準備期間に自宅の台所で焼いたパンを卸して、コツコツとお金を貯めたと話している。あせる必要もないかなあ。
ラストの事業計画発表会。タイトルは『毎日たべるジャぱん』で語った。少年漫画『焼きたてジャぱん』とカブッているが、この頃は全く知らずに、あとで分かってビックリ。読んでみると、少年誌にありがちなバトル物で「味平」のベーカリー版、最近TV放映が始まったという人気ぶりである。
横道にそれてしまったが、このセミナーは「市民事業」という名前が示す通り、社会の役に立つ、すなわち、福祉や環境、安全な食、教育といった、人々にとって本当に必要なサービスを提供する事業をするためのものだ。受講生の1人に天然酵母パン屋を計画している人がいたが、お話ししてみると、また、過去の受講生が天然酵母店ばかりなのを考えても、安全な食=(イコール)天然酵母プラス国産小麦粉という考えが根強いのだろうか。
社会の役に立つサービスといっても、文化や芸術だって含まれるだろう。それに今までの事例でも、私個人としては生涯全く必要を感じない、アクセサリーやオーダーのドレスもあった。高価なパンとは別に、毎日買える、安くて庶民的なパンを提供するのもサービスだと思うが・・・。



プレゼンに向けて

右足首の骨折で、1ヶ月半仕事を休んでいたが、セミナーの翌日から職場復帰した。痛みもなく、仕事には全く支障が出なかったのは幸いである。その頃は、小さなインストアベーカリーで働いていた。パート社員として1日当たり9時間分の給料をもらっていたが、実際は10〜12時間働いていた。製造スタッフは2人。もう1人は、私より遅く出社し、先に帰り、仕事は品出し、揚げ物、成形の一部と雑用。私は仕事が終わるまで帰れない。1日10万円分ぐらいを、冷凍の生地玉、成形冷凍を使い、成形・焼成していた。売れ行きがいいと自発的に(?)作らざるを得ず、13時間労働にもなる。発注の多くも担当するようになり、休日も翌朝の準備のため必ず夜は無給で店に行くほど、気に入っていた。やはり、店長と販売スタッフに相談したり、指示されるとはいえ、自分のやり方で作れるのが大きな魅力だった。この店での経験は、1人ないし2人で店をきりもりする、いい参考材料になると思った。
セミナーで勉強した、事業計画書と資金計画書の内容を以下に記す。
『事業計画書』は、▼販売計画表▼損益計画表▼経費計画表▼設備・投資計画表▼人員計画表▼資金計画表の6つで構成されていた。
もう一つは『夢を形にする起業プラン』。●基本理念〜起業の動機、事業の目的●基本方針〜提供するメニュー・サービス・店のイメージ・対象顧客の絞り込み・経営形態とスタッフ数●マーケティング〜商圏、物件、通行者の量、他の店舗●損益計画〜月間の売上予想・売上原価・経費予想から、月平均の損益予想を試算する●投資計画〜設備資金と運転資金●資金計画&返済計画。
右下の隅を見ると「起業プランが埋まったら、計画の実行です」と書いてあった。A3サイズの計画書を、自分の夢で埋めるべく、売上予想から着手。生地の配合にもとづいて、電卓片手に製品一個一個の原価計算を始めていったのである。

原価計算女王
原価計算女王

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