実践的ベーカリーマネージメントの基礎知識(8) - ブランスリー電子版

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実践的ベーカリーマネージメントの基礎知識/2004年11月号

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実践的ベーカリーマネージメントの基礎知識(8)

文・折井英雅
昭和30年に東京農工大学農芸化学科を卒業し、(株)東急フーズ(現サンジェルマン)入社、サンジェルマン開発部長、海外事業部長として国内外約120店舗のインストアベーカリー、レストランベーカリーの企画から開店までをプロデュース。平成3年ハワイ・ディーライトベーカリーでの2年間の社長職の後退社。平成4年から11年まで食糧学院・東京ホテルレストランカレッジ製菓喫茶店経営科(現在、東京栄養食糧専門学校に移管)科長として専門学校の教育に従事。現在はベーカリー会社顧問のほか、名古屋文化短大食生活専攻科講師として製菓製パン理論、フードマネージメント論を講義。所属団体としてはRC・アミカル会副会長、フードシステム研究所主任研究員として「食文化から食マーケティングヘ」の視点から、同研究所の江戸を学ぶ会、新発想開発塾に研究員として参画。



製造の品質と設計の品質とをいかにして一致させるか!?
第3章 マーケティング活動(続)

第5節 クォリティコントロール




文字通り翻訳すれば品質管理ということですが、ここでは製造での品質管理のことだけではなく、材料仕入からお客さんの食卓に上がるまでを考え、製造部門、販売部門、更に消費者相談室のような部門までが関る全社的品質管理(TQC)について考えます。お客さんに対して「わが社の品質」を保証するということです。これは商品の質はもちろんサービスの質も含めてお客さんに満足してもらうという、最近普及してきた顧客満足経営(CS経営)につながっております。商品の質もサービスの質も会社で働く全ての人が仕事をした結果生まれるものですから、仕事の質が向上しますと、会社の体質も向上し、働く人一人一人も物心両面で向上していきます。その意味で従業員満足経営(ES経営)の必要性がいわれております。ここではベーカリーがとるべき日常の品質管理活動の考え方を主体に述べていきます。

1.品質管理(quality control)とは
定義としては「顧客の要求する品質(単なる品質仕様だけでなく、製品の働き、寿命、仕様の経済性ならびに安全性、サービスなどを含めた広義の品質ををいう)を確保することができるように企業の品質目標を定め、これを合理的かつ経済的に達成するもの」(田中掃六著レストラン・マネジメント概論より)といえます。これをベーカリーに当てはめて考えますと・・・。
a まず顧客の要求を満足させるために消費者指向の商品を企画し実施することです。
実施する場合、品質の設定が必要になります。これが「設計の品質」で、「狙いの品質」ともいわれるものです。ここで必要な事項は・・・。
品質仕様―規格、レシピーになります。おいしい食べ方、賞味期限を含みます。
価格―適正価格を、市場価値と、材料費の両面から考えます。
名称―具体的な特徴、材料、抽象的イメージ、特産地域などから客にアピールできるネーミングを考えます。
ベーカリーでは明文化したものとしては原価計算書が製造にあるだけということが多いようですが、製販一体のお店では新商品のアイデア提案にしても、商品説明にしても、販売員にも商品についてすべてを共有(第4回コラム全商品格参照)してもらうことが重要ですので、商品マニュアルとして1つの表で製販共通のものがあれば良いと思います。
商品マニュアルとしては、商品名、価格、レシピー、製法、特徴、写真があれば良いと思います。
b ここで広義の設計の品質について考えてみましょう。単に一つ一つの単品商品が客の要求に合っているかどうかということだけではなく、商品構成で満足してもらっているのかが重要です。そのためにマーケティングリサーチでしっかり、客層をつかみ、どういう品群を採用しどの品群に力を入れるか、それぞれに何品目の商品を作るかを決めていきます。
商品構成については営業活動の章で具体的に説明します。
c 顧客に満足してもらうためには商品が設計の品質通りに仕上がっていることが大切です。この仕上がりの品質を「製造の品質」または「出来栄えの品質」といっております。
これが品質管理の定義のところで述べた「目標を定め合理的、経済的に達成する」ということです。パンの場合は設計の狙い通りの商品が常に生産されてくるためには細心の注意が必要です。この製造の品質で特に重要なことは、できた製品のどこまでをお客さんに提供できる範囲とするかということです。製造の方は「せっかく作ったから店に並べたい」といい、販売の方は「これは不良品だから引っ込めろ」といって、やり合いになることがよくあります。そこで商品マニュアルで設計の品質の規格を製販共通のものとして認識していれば、良否の判断基準が明確になってくるわけです。
あるパンの重量の規格について考えますと、生地重量何g、フィリング何g、焼き上がり重量何gと決めてあって、重量が重いか軽いかいちいち量らないで、手にもった感じで判断していると思います。しかしあまりにバラツキがあるようでしたら焼上重量のみでなく、分割にもどって生地重量を量ってみるでしょう。設計の品質で生地重量の規格を40gとしてあっても、ぴったり40gにおさまらず必ずばらつきます。Aベーカリーではこの許容範囲(全量の90%のものが入る範囲)をプラスマイナス4gの36gから44g迄とし36g以下のものは100個に5個以下にすることに決めていました。(このバラツキの範囲の大小はその会社の技術力に左右されます。技術力が高いと小さくなります)
44g以上のものが多いということは材料の食い込みになりますので、会社利益の圧迫になりますし、36gより少ない場合はお客さんに失礼になるだけではなく、お客さんの不信を買い売上減に結びついていくことになります。具体的な例は次の項で述べます。数字で表示できないものについては、言葉で表現するか、または限度見本を作って置いておきます。たとえば窯の出口に焼き色の上限下限を表す色彩カードを置いたりします。また仕上がり具合の製品の写真をマニュアルにつけておけば、出来栄えを製販で共有して判断できます。
d 製造の広義の品質では品揃えが重要になります。設計の広義の品質では商品構成が重要と述べましたが、いかに計画時に良い商品構成を考えても、実際にお店でお客さんが欲しい時間に欲しいものがなければ満足してもらえません。商品の性格による提供の最適時間の考察と、製品毎の生産の組合せの工程管理が重要になってきます。詳しくは営業活動の章で説明します。

2.ベーカリーのQC手法
設計の品質と製造の品質との差異が不良品を生み出すわけですがこの不良の原因を究明し、改善の施策を講じていくことが、お客さんの信用を得て、売上を向上させることに結びつきます。そして、会社の利益にも貢献することになります。
この一連の手法は、経営のサイクルと同じでプラン、ドウ、チェック、アクションの環をまわすことです。
生産工場での一般的な品質管理では統計学などを駆使した「QC七つの道具」と呼ばれる手法を使っております。七つとは、パレート図、特性要因図、層別、ヒストグラム、チェックシート、散布図、管理図になります。
ベーカリーの日常の品質管理では、パレート図、特性要因図、ヒストグラムがよく使われます。これらを使ったAベーカリーでの具体的な品質管理の進め方を考えていきましょう。
「Plan」の段階
まず計画を立てます。何をテーマにしたらよいかを掴むため、いろいろの情報から問題点の把握をします。具体的には、生産日報や営業日報の不良品やロスの記録から、どの商品が不良品やロスが多かったか、どんな原因なのかなどについて、不良品月別集計表にまとめます(表12)。横行は不良総個数の多い順に商品名を並べてあります。縦列は不良の原因別にそれぞれの数を入れてあります。商品と原因のどちらから攻めたら良いか、選びます。一般的にはこの表から多いものを選べば効果的ですし、波及的に他の商品まで不良品が減っていきます。順位は上でなくても皆の意見ですぐ改善すれば効果が絶大だろうというものでもかまいません。ここでは改善の対象として一番不良数の多いバターロールをとりあげて、わかりやすくするために原因別のパレート図を作りました(表13)。圧倒的に多い原因は、見た目が小さいものがあったりして、大きさにバラツキがあることでした。生産ではねたもの、販売でストップしたもの、お客さんから苦情があったものなど様々でした。そこでこれを減らすことをテーマにとり上げました。
ばらつく原因は何か、従業員皆で工程ごとに特性要因図を作り、それぞれの項目について実態を観察したり、討議をしたりして何が原因かを究明しました。(表14)
ここで皆の意見や実際の仕事ぶりから、分割成型の工程で分割重量が適正な数値になっているかが問題だということになりました。そこでテーマを「バタロールの分割重量について調査し改善を図る」ことと決めました。
「doの段階」
バタロールの全重量調査をした100個について、重量の分布を度数表にしました(表15)。これを一目でわかりやすくするためにヒストグラムにしました(表16)。
まずバタロールの規格線は中心が40gで裾野は36gから44gまでの間に90%のものが入ることになっています。しかし実態はあまりにひどいものでした。
A線が実態でこれは中心が48gにもなっており90%が入る範囲は36gから64gと広くなっています。これですと確かに規格通り36g以下は5個におさまっていますが、そうかといってあまりに大小のバラツキが多く、お客さんからの不信感は免れません。会社にとっては規格の1・2倍もの材料を使い込んでいることになります。
だからといって、もしB線のようにこのままの状態で中心を40gにもってくれば、36g以下は実に27個にもなってしまいます。またばらつく範囲が24gから56gまでと広くなっており、これではお客さんに品質保証したことにはなりません。
「check」の段階
そこで従業員は特性要因図の分割成型の項目一つ一つを検証しました。
▼秤精度―古くから使用の感度のにぶくなった秤があったので新しくする。支持こまをしっかり固定する。
▼スピート―出荷時間におわれ、ただ早く早くという状態で重量に対し関心が薄かった。工程管理を作るとき各製品毎の時間設定を的確にする。
▼作業員能力―初心者の技術教育をきちんとし、能力向上にあわせてスピードを上げていってもバラツキの範囲は狭くなっているよう安定させる。
▼作業員意識―会社の定めとして規格の10%減の36g以下は100個のうち5個以下におさえることになっている。36g以下を出すまいとするあまり、ずるずる重量を付けてしまう傾向にあった。技術の向上とともに意識改革も図っていくことにした。
「action」の段階
以上のことから皆の意見を集約し第一段階の改善として「中心が44gで100個のうち5個以下が36gになるような、分布の範囲が36gから52gまでの裾野の狭いC線になるように改善を図っていくこと」にしました。これによりバラツキが減って不良が少なくなり、材料の使い込みも少なくなりました。

3.CS経営とES経営
このバタロールの品質管理一つとってみても、お客さんが満足してくれるように品質の設計をし、その設計の品質通りに製造の品質を作り上げていくことがいかに大切かが分かります。それがきちんとなされればお客さんの信用を得ることになります。製造の品質が設計の品質に充分に到達していない場合には、顧客の声も聞いて原因を究明し改善していくことで顧客のパーティシベーション(仲間意識)もてきて、まさしくCS経営につながっていくことになります。
また従業員もこのサイクルを通して、品質の向上には皆の積極参加が必要であり、その解決には自分自身の意識改革と技術向上が大事なんだなということがわかります。またこの問題の改善を計ることによって会社にも利益をもたらすことになり、ひいては物心ともに自分に還元されてくるという満足感を得ることになります。これがまさしくES経営ということになります。










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