延期はしたけれど…収穫は大きかった! - 私の開業物語(4) BY 鈴木紀美枝 - ブランスリー電子版

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私の開業物語/2004年10月号

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延期はしたけれど…収穫は大きかった! - 私の開業物語(4) BY 鈴木紀美枝
資金ゼロの開業計画――その頃の私の口座は、残金30万円。定期や有価証券もなし。全額借金でどこまでできるか、開業できるのか!?――イチかバチかやってみた。



「女性のための世界銀行」

パン屋で働く前の私は、普通の(?)主婦だった。かなり自由奔放ではあったが・・・。それが一転して、早朝(時として深夜)から長時間労働、アパートには寝に帰るだけ、という変容ぶり。
そんなある日、区の広報に載っていた「女性講座」を受講することにした。
「私の働き方発見講座」という、1回2時間、全4回コース。内容は、(1)わたしと仕事〜働き方いろいろ(講師・リクルートHUMAN・AD編集長、渡辺嘉子さん)(2)企業(会社)で働こう!(同上)(3)資格を取ろう!活かそう!(ビーグッド教育企画、中村一樹さん)(4)目指せ!起業(WWB/ジャパン、奥谷京子さん)。会場は、自宅から徒歩15分の女性センター。週一で、店の定休日だったので、当時4歳の息子とともに、センターで保育してもらっての受講だったナー。
最終回の講師の、「WWB/ジャパン」とはなにか? Women’s World Banking  Japan(女性のための世界銀行)の頭文字で、女性起業家に対する世界的支援ネットワークの日本支部である。女性の起業は、「儲け」より「自己実現」や「社会貢献」という意志がはっきりしているそうだ。
ここで余談。パン屋における女性問題。この講座受講中に働いていた店は、ある意味「女人禁制」だった。創業が古いせいか、女にはパン生地を触らせないのだ!? なので1カ月で辞めた。
また、製菓学校の授業でのこと。製粉会社の外部講師が、生地を手で捏ねながら言った。「パン作りと子作りは、男の仕事」と。時代は流れ、「女の仕事」なんて言われるかもね。
前々回のTVチャンピオン「パン職人選手権」で、初めて女が出場したときは、「来たか」と思ったよ。
話を元に戻して、WWBはノウハウの面の支援をする。ホームページ作り、会計相談、事業相談など。
そして姉妹組織の「市民バンク」が融資をしているという。審査は厳しいが、「夢作文」なるものを書くらしい。自分の思い。何をしたいのか。事業にはどんな社会的意義があるのか。そんな話を聞いて、自分が店を持つときには、ここに申し込もうと思ったのだ(その時が来た)。
電話をして尋ねたところ、審査後、現金がおりるまで、3カ月かかるというのだ。あまりここをアテにしてはいけないということだ。
また、定期的に起業家セミナーを開催している。この2月がそれにあたっており、しかも、タイミングよく、先輩起業家として講演するのがパン屋だというではないか。
本にも載っている、珍しいミルク酵母の店『マールツァイト』のオーナーの白井幸子氏である。まる2日間のセミナーの受講料は、2万6500円。少し迷ったが、すぐに申し込んだ。50歳でパン屋をはじめた女性の話を2時間もなかなか聞けないものね。



骨折中だった!?

いつも時空を超えて(?)書いているので一度カレンダーに沿って開業への道のりをたどってみたいと思う。
連載冒頭の「店をたたんで人に貸すことになりました」との話を聞いた日、あろうことか、私は職場の近くで休憩中に骨折したのだった。階段を踏み間違えて足首をくじいたのである。
整形外科では、ギプスをはめて1カ月、はずしてからリハビリに1カ月、と言い渡された。片足とはいえ、ギプスに膝まで覆われた生活はとても不便だった。左右の足の高さが違うので、もう一方の足腰にかかる負担は並ではない。
店の大家さんのアドバイスで、翌日接骨院に行き、ギプスを割って取ってもらい、そちらに通院することにした。要するに休職期間だったというわけだ(決してヒマ潰しじゃないヨ!)。
1月いっぱいは、融資先、材料問屋、機械と什器備品の販売元への問い合わせに費やす。パン屋開業に関する本も読んだ。
1月末日に彼氏と1泊で静岡県の母と妹に会いに行き、開業の話をする。その宿泊先で、大家さんから、借り手がつくかも、という電話をもらうのである。
翌2月2日には預かり金として家賃2カ月分を納め、本格的にスタート。最も懸案なのは資金集め。それに、気力、体力、手腕があるかも、不安がないわけではない。でも、そんな負の気持ちは隅っこにしまって、私はやる気まんまんである。
2月に入ってからは、業者さんを訪ねたり、来てもらったりしての打ち合わせ。9日の夜は、相棒のBさんが泊りに来た。2人で、ミルク酵母の『マールツァイト』でパンを買い、再生機械の工場に行ったのは、その3日後だった。
その間、ちょこちょこと友人知人に会ったり、製菓学校の先輩と同級生たちの店に行ったりした。友人知人の反応はさまざま。驚き、感心、そして冷笑(?)。
3年前に製菓学校の製パンコース(1年間、全日制)を卒業したのだが、クラスに私より10歳年上の生徒が2人在籍していた。脱サラ組である。2人とも卒業を前後して開業していた。何回か店に足を運んだが、今回も相談がてら店を訪ねた。
どちらも西武池袋線の駅からアクセスできる。お二人の人柄のよさに、固客がつき、地域の方々に愛されているという印象をいつも受ける。
またさらに池袋線を下り、駅のそばで開店しているのは年下の先輩。彼はベーカリーチェーン店に10年勤めてから独立、昨年夏から夫妻で店を営んでいる。居抜き料タダ、売り場がおしゃれな店である。
彼からは、「自分の場合は開業資金を国民金融公庫から借りたが、保証人がちゃんとした普通の人なら融資を受けられる」との情報を得た。
国金は、彼が言うように、保証人をつけるか、無保証人で自己資金が沢山かのどちらかである。私の場合は、大口小口の出資や融資者を募るとともに、保証人をたてなくてはならない。
そのために必要な「事業計画書」を作成する、書き方の本も、自宅の目の前にある図書館から借りて読んだ。
そして、WWBの起業家セミナーは21日(土)・22日(日)だった。この講座でも事業計画書の書き方を教えてくれ、りっぱな計画書が出来上がる、とのふれこみ。その後、計画書を仕上げ、28日(土)、例の高校同窓会の名簿委員の集まりで、配布して説明することになる。



粉と塩と酵母と水と

製菓学校に通っていた頃や、働き始めた頃は、フランスパン以外は配合に、砂糖、卵、油脂、乳製品が入っているのは、あたり前だと思っていた。いくら私が「ごはん党員」だといえども、パンを食べる機会は多いわけで、有名無名店で買ったパン、働いている店のパン、自宅で作ったパンを食べて、いろいろと考えることは多い。
甘いあんこやクリームを包む生地も甘くする必要があるのか。焼き込み調理パンを菓子パン生地で作ってしまうのは何故か。甘・辛、さまざまなフィリングを包んだり、トッピングしたりするパンの味は、どんな配合がよいのか。
要するに、近頃思うのだが、粉と塩と酵母と水、それに少しばかりの糖分を加えたリ加えなかったりといった素朴なパンが、粉の味わいがあって、かえっておいしいのではないだろうか。
それに、ミキシングが簡単でよろしい。材料費もかからないし。
昔といわず、数年前と比べても、日本のパンの、なんと多種多様なことか。贅沢や飽食の時代は去った。私はシンプル路線で行く。
そんなことを考え、アイテムと原材料費、売価、そして収支計算へ突入していくのだった。

原価計算女王
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