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| 海外情報/2003年6月号 |
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| アメリカのリテールベーカリー自由討論会
「今後の経営拡大」という観点
ベーカリーの特徴を生かした商品開発 ホールセールは総製造量の10%以下に 海外情報29 by 高橋秀尚(株式会社パンワールド代表取締役、海外情報研究会主宰) RBA(全米リテーラーズベーカリー協会)は毎年3月から4月にかけて、米国の主要都市において展示会を開催している。 今年は4月3日から5日まで、カリフォルニア州アナハイムにおいて開かれたが、筆者もRBA会員として、展示会に赴いた。 この機会に特別企画として、RBA展示会会議室において自由討論会を開いた。 その要旨をまとめてお伝えする。 出席者は、コーディネーターとして、パンワールド代表・高橋秀尚=筆者(発言内容をTと表示)、RBAを代表して2人のリテールペーカリー経営者(B1、B2と表示)、コンサルタント会社代表(Cと表示)。 1日12〜13時間は働いている T 本日は皆さん忙しいのに私の希望を聞いて集まっていただいて感謝します。 普段はお互いにRBA会員ということで名前は知っているけれど初対面に近い。 最近はeメールで毎日のように意見や情報の交換をしているので、お互いの考え方や悩みごとなどはある程度理解していると思う。 これはインターネットが普及した結果の大きなメリットでしょう。 まず、今年の展示会を見た感想を聞きます。 B1 昨年に比べて展示会参観者の数が少ないのが気になった。 毎年この時期に1回開催されるのに昨年は10月にもう一度変則的に開催したからだと思う。 会員は忙しいので1年に2回は多すぎると思う。(一同同感)。 T この点は私から事務局に伝えておくけど、皆さんは週に何時間働くの? B1 従業員は時給計算の関係で記録をとるけれど、私たちオーナーは分からない。でも週に一度の休みを除けば、一日おそらく12〜13時間は働いていると思う。 T それではこの展示会に来ている間は誰が店の管理をしているの? B1 私の場合は息子が製造責任者なので展示会も交代で見ることができる。 店で販売管理をしているのは私のワイフ、それに10年ほど働いてくれている女性が補佐役を務める。 製造要員はその他に3名。販売はパートタイマーが3名、シフトで2名ずつ店に出る。 店は一軒なのでこれで十分。おそらくほかの店も同様と思う。 T 今は一店舗というけれど将来は店を増やす計画、希望があるの? 支店の業態チェンジで、利益率が上がった C 実はその話はリテールにとって重要な課題なので「今後の経営拡大計画」という観点で、私を加えて皆で話をしましょう。 ミスター高橋の話では日本では我々の考えるリテール・ベーカリーは「ホームベーカリー」とも呼ぶそうだけれど、かなり大規模な会社が20〜30といった規模で店舗展開するという形態はアメリカでは珍しい。 例外としてフランチャイズ方式のものはある。例えばイル・フォルナイオなど。 B2 私の場合は本店に加えて、同じ市内に支店が2軒ある。製造は本店に隣接する工場ですべて行い、支店は工場から配送された商品を販売するのみ。 これをコールド・スポットというけれど、やはり焼きたて商品の提供という魅力が支店では欠けるので業態はベーカリー+カフェにして16席ほどの飲食スペースを設けてある。 メニューは朝食、ランチ、それにライト・ディナーと呼ぶ軽い食事ができる夕食を提供しているけれど、お客の評判も良いし利益率も高い。 今後はあと3店舗ほど同じ形態の店を出す予定でいる。 T その話は大変興味があるし、日本のリテール・ベーカリーにも参考になるので、もう少し詳しく話してください。 B2 ベーカリーというビジネスは、ブレッド類という日常生活に欠かすことのできない商品を売るのだから、単体では大きなマージンを得ることはできない。 その意味では数セントの利幅が問題視される「ペニービジネス」だと思う。また他店の商品とも価格比較をされやすい。 そこで考えたのは支店の業態チェンジ。 業態のみでなく商品、販売戦略、宣伝方法、営業時間など多くの点が本店とは異なる。 このアイデアは私の息子が出したのですが、私たちの年代では考えられなかった発想です。 C それが新しい時代に求められるマーケティングです。つまり顧客ライフスタイルの追求です。ちなみに営業時間はどのように違いますか? B2 本店は月〜金曜日が午前6時から午後7時まで。土曜日は午前7時から午後5時まで。日曜日は休み。 支店は月〜金曜日が午前7時から午後8時まで。土曜日は午前8時から午後8時まで。日曜日は午前9時から午後9時まで。 日曜日は遅めの朝食をとるお客のための「ブランチ・メニュー」が人気です。 当店自慢のクロワッサン、サラダ、ハーブティーかイタリアンコーヒーのセットで12ドルです。 C ベーカリーカフェを成功させるポイントは何でしょうか? B2 それはいうまでもなく、おいしいベーカリー商品の提供です。 私の店が成功したのも、「あの店のクロワッサンやペーグルは美味しい」という評価があったからこそだと思います。 またこれらの商品はサンドイッチ化するのに適しているのでカフェのメニュー開発に応用ができました。 能力の範印で最大限の効果を出す T 夕食メニューの開発はべーカリーにとっては難題と思うし、商品管理や売れ残りロスの発生など、苦労はありませんか? B2 それが最初に解決すべき課題でした。 私たちはべー力ーでありシェフではありません。またシェフを雇うほどの予算もありません。ですが夕食の提供は不可欠でした。 まずメニュー開発に際して、自分たちの能力、調理設備への予算とスペースなどを考えました。 温かい食事の提供ということを考えればスープ類は必要ですが、キャンペルという会社が業務用のものを販売しているので、これを利用しました。 食事メニューは先程お話したライトディナーなので30種類ほどのホットサンドイッチを開発し、常時7種類づつの日替わりメニューとして提供しています。 使うのはサブマリン・ブレッドとして知られているイタリアン・ブレッド、チヤバツタ、ベーグルなどです。 T その他に工夫していることはありますか? B2 店作りには木材を多く使い、ホーミーなムードを出しています。 T ところで店の近くにはスターバックスはありますが? B2 もちろんあります。アメリカはどこへ行ってもSBだらけ。彼らはコーヒー類が得意だけれど私の店は美味しいペーカリー商品で勝負する。これが大きな違いですから競合はしません。 ホールセールには、十分な検討が必要 T それでは最初の話のテーマであるリテール・ベーカリーの複数店舗展開ですが、本店・支店それぞれ異なる業態、商品開発を考えることが重要であると結論を出しておきます。 さて次にリテール・ベーカリーのホールセールビジネスについて話を進めたいと思います。これはどういうことですか? C リテール・ベーカリーのオーナーから「お宅のパンは評判が良いから私の店で売らせてくださいという依頼が来る。このような場合はどうしたら良いのだろうか?」というのが相談の内容です。 T 依頼をしてくるのは誰ですか? C まず、近くのレストラン、それから10店舗以下の小さなスーパーマーケットです。 おそらくレストランは自慢のメニューに美味しいパン類を組み合わせたい、スーパーマーケットはインストア・ベーカリーの商品力強化、惣菜類との相乗効果のためだと思います。 T 私の判断では良い商談と思いますが何か問題が発生しますか? C ケースは異なるが、1つ参考になる話をします。ご存知のように世界最大の小売業ウォルマート社は世界中で多くのベンダー(商品供給業者)と契約しています。 もちろん多くの食品製造メーカーも含まれますが、ウォルマート社が求める商品数は膨大です。 また、卸値に対する要求も過酷です。したがって契約を結ぶ際にはメーカーは十分な配慮が必要です。 私の考えでは同社と契約する卸し商品量は自社製造量の10%以下にとどめるべきです。これが20%を超えると極めて危険だと思います。 T それは何を意味しますか? C 取引を1社に絞り込むのは危険だという意味です。実際に同社のベンダーで卸価格の引き下げに応えられないで取 り引き中止、同時に他社取り引きを失うといった不幸なケースに陥った例が多くあります。私のリテール・ベーカリーに対する提言は「決して無理をしない範囲でホールセールを行うように」です。 T 無理をしないということは設備投資、製造要員の増加などですか? C その通りです。また配送コストが予期したよりかかることも知っておくべきです。 B2 さて一般的には大手スーパーマーケット(以下SMと略)はベーカリーからの卸し商品に10%のマークアップ(乗せ幅)で売価設定をしますが、これが小規模SMの場合は30%になるといいます。となれば他店の店頭価格に比べて高くなるでしょう。当然SMはベーカリー に対して卸価格を下げることを要求します。 当社が最近まとめたSMとの商談例ですが、マークアップは15%で契約しました。この数字はほぽ妥当だと思います。 T 私の親しい友人は大手SMチェーンの卸し担当者ですがマークアップは40%にもかかわらず、純利は1〜2%だといっていました。SMビジネスは大変な仕事だと同情します。 C 私が調べたところではSMへの卸し商品の95%は包装して売るパッケージ商品ですが、日持ち期限後の商品はどのように扱うかは重要な契約事項です。 また配送時刻、回数もSMの希望とベーカリ一例の両方の都合で決めることが出来れば理想です。実際には大きな差異があり、コストを無視している例が多い。 参考資料として次のような計算例を見てください。 (1)小売価格5ドル ↓ (2)小売マージン40%>>問屋か ら小売への卸価格=5×60%=3ドル ↓ (3)問屋マージン25%>>製造者から問屋への卸価格=3×75%=2・25ドル ↓ (4)製造者負担配送などの諸経費0・05ドル>>製造者実質受取額=2・25マイナス905=2・2ドル ↓ (5)製造者マージン40%>>材料コスト=2・2×60%=1・32ドル また別の例を紹介しよう。このペーカリーは4店舗を所有、この配送ルートを利用して小規模SM店舗に商品供給するので配送コストは35%に削減。毎月の最低取り引き額4200ドル以上に契約。卸価格は当社の販売価格からブレッド類は25%、ドーナツ類は45%をマイナス。双方とも取り引き条件には満足し、売上げも順調である。 このような成功例の根底には、良好な相互の信頼関係が見られます。これがビジネス・サクセスの必要条件でしょう。 T いろいろと有意義な話を聞かせていただいて有難う。 日米のビジネス環境は異なる点もあると思いますが、リテール・ベーカリーのオーナーは皆さん良い人たちばかりです。お仕事の成功を祈ります。グッド ラック! |




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