第3節メニュープランニング〜商品開発プランニングマーケティング業界では、飲食店を扱う場合などに、「メニュープランニング」という言葉を使いますが、ベーカリーでの商品開発プランニングも同じことです。このプランニングは大きくは新店舗開発の時の商品開発にかかわってきますし、企業運営の長期戦略の中の商品戦略や、それをもととした日常の営業活動の商品戦術にも関連してきます。すなわち、商品開発プランニングは、企業経営のあらゆる場面で重要な要素になるのです。これは第1回図1の経営系統図で見た通りです。
ベーカリーでは売上向上のための日常の営業活動として、新商品導入が行なわれておりますが、多くの新商品は、シェフの固有の技術、経験、知恵(これらをシーズといっております)から生まれてくるのではないかと思います。しかし商品は店に来る客のニーズにも合っていることが大切で、これは第4回のマーケティング活動の「商品化の流れ」で説明した通りです。このシーズとニーズが一致した時にすばらしい商品ができるわけです。シーズを高めるためには技術力を高め、知恵とセンスを高めなければなりません。そのためには頭の中に有効な情報を網目状に蓄えておいて、すぐに取り出せるようにしておかなくてはなりません。
ニーズを的確に掴むためにはお客さんの声を良く聞き、情報の収集、分析、集約をすることが大切です。シーズを高めるためにもニーズを把握するためにも重要な情報収集について次に考えてみましょう。
(1)情報収集源商品開発に限らず情報は経営にとっても必要なもので、その情報源を何にどのように求めるかによって情報の価値や精度が変ってきます。ブランスリー5月号の特集「情報はどう集めているのか」は皆さんの実際の体験からのお話が載っていて大変参考になります。

A情報ネットワーク
いろいろな情報源がありますが、それぞれの情報源によって、情報集の方法が異なります。主に読む、見る、聞くの3つがありますが、目的に応じて使い分け、情報収集にあたりますので、3つの分野の内容を例示しておきます。
*「読む」には、読み取る、見取るも含めて考えますので、インターネット、テレビ等も入れます。
製菓製パン関係誌、料理書、ファッション誌、テレビ、インターネット、食関連専門誌、食歴史書、食文化書などがあります。
前述のブランスリーの特集で、杉山さんはパンの本より料理の本に触発されたと言い、イタリアンデザートからヒントを得て開発したという「いちごデニッシュ」に触れています。広い視野から情報を収集し集約していくことが必要だという良い例でしょう。
*「見る」は市場の見学まで広くとらえます。もちろん味を見ることも含めます。
同業ベーカリー、デパ地下食品売場、ホテイチ食品売場、スーパーコンビニ食品、問屋展示会、人気店、和菓子洋菓子銘店 見本市、国内外旅行などが考えられるでしょう。
ブランスリーの特集で、高田さんはベーカリーで見た製品を画像として頭に入れ、自分の感性で再現するといっておられます。ベーカリーで見たパンの画像、インターネットで見たパンの画像、本や雑誌から見付け出したパンの画像を、シーンとして頭に鮮明に描いておくことで、新商品の発想が浮かんでくるというまさしくマーケティングセンスの高い人といえましょう。(第4回センス系統図参照)
*「聞く」は耳に入ってくる情報です。
問屋、メーカー、技師、セールスマン、お客様、ベーカリーの先輩や仲間などが、聞く情報の情報源です。
ブランスリーの特集で、八村さんや大島さんは恩師の方からの情報が貴重だと言っておられます。まさしく愛弟子への情のこもった情報ということでしょう。また橋本さんは材料メーカーからの情報のことに触れておられますが、それぞれメーカーは自分の材料について深く研究しているわけですから、積極的に相談していくことで有効な情報が得られましょう。

B人脈ネットワーク
情報ネットワークは情報源を網羅していますから、聞く情報源は人になるので、この人脈ネットワークとだぶっているともいえますが、自分を中心に自分のまわりにはどんな人がいてその中で常に自分に結びついている人は誰かと考えてみることが重要なので特に人脈ネットワークを別に考えてみました。
第1環―ベーカリーの仕事について何でも相談出来る人
第2環―食全般の広い視野から情報を与えてくれる人
第3環―人生、教養面から深く指導してくれる人
皆さんも、同業者やベーカリーの先輩、同輩、後輩、研究会仲間など声をかけられる人がたくさんいることと思います。そういう人との関係も大切ですが、本当に何のわだかまりもなく、常に拠り所となる信頼できる人との人脈を保つことも重要です。その人脈は前述の各環にまたがっていることが大切で、私の今までの経験から、この環にはこれぐらいの人数がいたら良いだろうなと思われる最低の数字を入れておきますので、あとは皆さんでお考えください。
第1環 ベーカリー仲間、店舗厨房デザイナー、ベーカリー研究会仲間、材料メーカー技術者等から5人
第2環 飲食店シェフ、専門誌記者、料理研究家、食文化研究会研究員、大学専門学校教授、ベーカリーコンサルタント、インテリアデザイナー等から3人。
第3環 学校恩師、ベーカリー恩師、先輩、食文化研究会長、企業経営者等から2人。
C文化情報系
情報ネットワークの「読む」の中に食文化書もあげてありますが、特に最近は和風回帰が食のトレンドといわれておりますし、この情報源を重要視したいと思います。
経時情報とは過去からの発信ということで、例えば江戸の食文化を研究して現在のマーケティングに応用するというようなことです。
同時情報とは現時点の日本や世界の食の情報のことで、これはインターネットやテレビなどでどんどん入ってくるので、むしろ有効情報の選別が重要になってきます。
特に新商品開発では経時情報と同時情報の両面から研究していくとで有効な企画が出てきます。江戸の南蛮菓子の研究と、現在のポルトガルやスペインの焼菓子を結び付けて、ボルボローネのクッキーが開発され何店かのお店から売り出されております。そして和風ということで蕎麦粉や米粉をまぜたり、ごまをまぶしたりして種類も多くなっています。日清製粉では南欧菓子シリーズとしてミックス粉6種類を発売しております。これも江戸の南蛮菓子に触発されての企画だと思います。コラムを参照してください。
(2)メニュープランニング企画手法
メニュープランニングの基本的な体系をストーリーとして頭に入れてもらうために、企画手法の系統表を示します。具体的な例としてAベーカリーがカフェベーカリーを企画で併設する喫茶室のメニューの体系です。そしてそれぞれの項目について流れを説明しておきます。
1店舗コンセプト
この店を企画する段階で店の方向性と形態を決めた内容がコンセプトです。経営者の目的とする業態と出店地がマーケティングリサーチの結果と一致するように出店企画をします。このコンセプトで商品開発の方向性も決められます。
2対象客層
更にマーケティングリサーチと自己情報から商品開発の対象とする客層を決定します。
3メニューコンセプト
1、2で集めた情報の分析と集約をし、メニューコンセプトを決定します。
4構成カテゴリー
お客様のウォンツ、自己情報などを集約した情報から各カテゴリーの構成のストーリー、シーンを描き、それをもとにして、コンセプトワークを行い、構成カテゴリーを決定します。
5メニュー作成
各カテゴリーについてお客様のニーズ、自己のシーズから具体的に商品を開発していきます。この際各商品についてレシピー、プライス、ネーミングが重要になります。この商品開発の具体的手法は重要なので営業活動の章で後述します。
6メニュー表のデザイン
デザイナーに依頼する場合もありますし、手作り感を出すために自己制作の場合もありましょう。要はお客様にとってわかりやすいこと、見やすいこと、楽しいことが、大切になりましょう。このことは販売促進の項で説明します。
