実践的ベーカリーマネージメントの基礎知識(6) - ブランスリー電子版

2026年10月21日に公表されたPHPの脆弱性(CVE-2026-109618、CVE-2026-109619)については、いずれも対策を完了しています。

ブランスリーアーカイブ(創刊号からの全記事)
記事の閲覧
<<戻る
実践的ベーカリーマネージメントの基礎知識/2004年9月号

2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。


実践的ベーカリーマネージメントの基礎知識(6)

文・折井英雅
昭和30年に東京農工大学農芸化学科を卒業し、(株)東急フーズ(現サンジェルマン)入社、サンジェルマン開発部長、海外事業部長として国内外約120店舗のインストアベーカリー、レストランベーカリーの企画から開店までをプロデュース。平成3年ハワイ・ディーライトベーカリーでの2年間の社長職の後退社。平成4年から11年まで食糧学院・東京ホテルレストランカレッジ製菓喫茶店経営科(現在、東京栄養食糧専門学校に移管)科長として専門学校の教育に従事。現在はベーカリー会社顧問のほか、名古屋文化短大食生活専攻科講師として製菓製パン理論、フードマネージメント論を講義。所属団体としてはRC・アミカル会副会長、フードシステム研究所主任研究員として「食文化から食マーケティングヘ」の視点から、同研究所の江戸を学ぶ会、新発想開発塾に研究員として参画。



商品開発プランニングには情報収集が欠かせない。
第3章マーケティング活動(続)


第3節メニュープランニング〜商品開発プランニング

マーケティング業界では、飲食店を扱う場合などに、「メニュープランニング」という言葉を使いますが、ベーカリーでの商品開発プランニングも同じことです。このプランニングは大きくは新店舗開発の時の商品開発にかかわってきますし、企業運営の長期戦略の中の商品戦略や、それをもととした日常の営業活動の商品戦術にも関連してきます。すなわち、商品開発プランニングは、企業経営のあらゆる場面で重要な要素になるのです。これは第1回図1の経営系統図で見た通りです。
ベーカリーでは売上向上のための日常の営業活動として、新商品導入が行なわれておりますが、多くの新商品は、シェフの固有の技術、経験、知恵(これらをシーズといっております)から生まれてくるのではないかと思います。しかし商品は店に来る客のニーズにも合っていることが大切で、これは第4回のマーケティング活動の「商品化の流れ」で説明した通りです。このシーズとニーズが一致した時にすばらしい商品ができるわけです。シーズを高めるためには技術力を高め、知恵とセンスを高めなければなりません。そのためには頭の中に有効な情報を網目状に蓄えておいて、すぐに取り出せるようにしておかなくてはなりません。
ニーズを的確に掴むためにはお客さんの声を良く聞き、情報の収集、分析、集約をすることが大切です。シーズを高めるためにもニーズを把握するためにも重要な情報収集について次に考えてみましょう。

(1)情報収集源
商品開発に限らず情報は経営にとっても必要なもので、その情報源を何にどのように求めるかによって情報の価値や精度が変ってきます。ブランスリー5月号の特集「情報はどう集めているのか」は皆さんの実際の体験からのお話が載っていて大変参考になります。
A情報ネットワーク
いろいろな情報源がありますが、それぞれの情報源によって、情報集の方法が異なります。主に読む、見る、聞くの3つがありますが、目的に応じて使い分け、情報収集にあたりますので、3つの分野の内容を例示しておきます。
*「読む」には、読み取る、見取るも含めて考えますので、インターネット、テレビ等も入れます。
製菓製パン関係誌、料理書、ファッション誌、テレビ、インターネット、食関連専門誌、食歴史書、食文化書などがあります。
前述のブランスリーの特集で、杉山さんはパンの本より料理の本に触発されたと言い、イタリアンデザートからヒントを得て開発したという「いちごデニッシュ」に触れています。広い視野から情報を収集し集約していくことが必要だという良い例でしょう。
*「見る」は市場の見学まで広くとらえます。もちろん味を見ることも含めます。
同業ベーカリー、デパ地下食品売場、ホテイチ食品売場、スーパーコンビニ食品、問屋展示会、人気店、和菓子洋菓子銘店 見本市、国内外旅行などが考えられるでしょう。
ブランスリーの特集で、高田さんはベーカリーで見た製品を画像として頭に入れ、自分の感性で再現するといっておられます。ベーカリーで見たパンの画像、インターネットで見たパンの画像、本や雑誌から見付け出したパンの画像を、シーンとして頭に鮮明に描いておくことで、新商品の発想が浮かんでくるというまさしくマーケティングセンスの高い人といえましょう。(第4回センス系統図参照)
*「聞く」は耳に入ってくる情報です。
問屋、メーカー、技師、セールスマン、お客様、ベーカリーの先輩や仲間などが、聞く情報の情報源です。
ブランスリーの特集で、八村さんや大島さんは恩師の方からの情報が貴重だと言っておられます。まさしく愛弟子への情のこもった情報ということでしょう。また橋本さんは材料メーカーからの情報のことに触れておられますが、それぞれメーカーは自分の材料について深く研究しているわけですから、積極的に相談していくことで有効な情報が得られましょう。
B人脈ネットワーク
情報ネットワークは情報源を網羅していますから、聞く情報源は人になるので、この人脈ネットワークとだぶっているともいえますが、自分を中心に自分のまわりにはどんな人がいてその中で常に自分に結びついている人は誰かと考えてみることが重要なので特に人脈ネットワークを別に考えてみました。
第1環―ベーカリーの仕事について何でも相談出来る人
第2環―食全般の広い視野から情報を与えてくれる人
第3環―人生、教養面から深く指導してくれる人
皆さんも、同業者やベーカリーの先輩、同輩、後輩、研究会仲間など声をかけられる人がたくさんいることと思います。そういう人との関係も大切ですが、本当に何のわだかまりもなく、常に拠り所となる信頼できる人との人脈を保つことも重要です。その人脈は前述の各環にまたがっていることが大切で、私の今までの経験から、この環にはこれぐらいの人数がいたら良いだろうなと思われる最低の数字を入れておきますので、あとは皆さんでお考えください。
第1環 ベーカリー仲間、店舗厨房デザイナー、ベーカリー研究会仲間、材料メーカー技術者等から5人
第2環 飲食店シェフ、専門誌記者、料理研究家、食文化研究会研究員、大学専門学校教授、ベーカリーコンサルタント、インテリアデザイナー等から3人。
第3環 学校恩師、ベーカリー恩師、先輩、食文化研究会長、企業経営者等から2人。
C文化情報系
情報ネットワークの「読む」の中に食文化書もあげてありますが、特に最近は和風回帰が食のトレンドといわれておりますし、この情報源を重要視したいと思います。
経時情報とは過去からの発信ということで、例えば江戸の食文化を研究して現在のマーケティングに応用するというようなことです。
同時情報とは現時点の日本や世界の食の情報のことで、これはインターネットやテレビなどでどんどん入ってくるので、むしろ有効情報の選別が重要になってきます。
特に新商品開発では経時情報と同時情報の両面から研究していくとで有効な企画が出てきます。江戸の南蛮菓子の研究と、現在のポルトガルやスペインの焼菓子を結び付けて、ボルボローネのクッキーが開発され何店かのお店から売り出されております。そして和風ということで蕎麦粉や米粉をまぜたり、ごまをまぶしたりして種類も多くなっています。日清製粉では南欧菓子シリーズとしてミックス粉6種類を発売しております。これも江戸の南蛮菓子に触発されての企画だと思います。コラムを参照してください。

(2)メニュープランニング企画手法
メニュープランニングの基本的な体系をストーリーとして頭に入れてもらうために、企画手法の系統表を示します。具体的な例としてAベーカリーがカフェベーカリーを企画で併設する喫茶室のメニューの体系です。そしてそれぞれの項目について流れを説明しておきます。
1店舗コンセプト
この店を企画する段階で店の方向性と形態を決めた内容がコンセプトです。経営者の目的とする業態と出店地がマーケティングリサーチの結果と一致するように出店企画をします。このコンセプトで商品開発の方向性も決められます。
2対象客層
更にマーケティングリサーチと自己情報から商品開発の対象とする客層を決定します。
3メニューコンセプト
1、2で集めた情報の分析と集約をし、メニューコンセプトを決定します。
4構成カテゴリー
お客様のウォンツ、自己情報などを集約した情報から各カテゴリーの構成のストーリー、シーンを描き、それをもとにして、コンセプトワークを行い、構成カテゴリーを決定します。
5メニュー作成
各カテゴリーについてお客様のニーズ、自己のシーズから具体的に商品を開発していきます。この際各商品についてレシピー、プライス、ネーミングが重要になります。この商品開発の具体的手法は重要なので営業活動の章で後述します。
6メニュー表のデザイン
デザイナーに依頼する場合もありますし、手作り感を出すために自己制作の場合もありましょう。要はお客様にとってわかりやすいこと、見やすいこと、楽しいことが、大切になりましょう。このことは販売促進の項で説明します。




コラム

和の素材、技法の菓子、パンヘの活用
今、食のトレンドは、和風回帰だといわれ、菓子の世界では、和洋折衷だといわれていますが、日本の食の歴史、特に江戸の菓子を通じて考えさせられることは、和の素材や技法が今日の菓子やパンにも本質的にかかわってきているということです。本当においしい菓子やパンは和、洋を問わずどのジャンルの素材、技法で作られてもよく、垣根はないということでしょう。
日本古来の錦玉に使う寒天を使った洋のゼリーや、パンではみそパン、野沢菜のおやきパンなどがあります。また焼菓子にごま、抹茶、甘納豆を使ったり、さらに豆乳のホイップクリームを使ったりと、いろいろ考えられましょう。

経時情報
日本の食文化史との関連で、世界各国の食文化の経時情報を収集することで新製品開発につながります。
今パン業界はお店に焼菓子を並べることで、売上向上を図っていく傾向にあります。そこには特徴を出す新商品が必要で、その開発の一例を見てみましょう。
江戸の菓子を文献の「南蛮料理書」から研究し、ボーロの一種を南欧菓子として企画しました。同時情報として現在スペインで売れているクッキーについてその文化史をたどると、中世僧院でさかんに作られていたボルボロンというものが起源でした。これは日本の落雁に似た口溶けで、日本人にも合うだろうということでポロボロネーズとかポロンといった名称で、今、いろいろのお店で新しい素材や技法を駆使して売られておりす。

和風回帰の両面
その菓子やパンを過去に食べた人、背景を知っている人の多くは年配者でしょうが、なつかしさで、またまったく過去に経験がなく知らない人の多くは若者でしょうが、新鮮さでアッピール出来るでしょう。





原価計算女王
原価計算女王

2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。

今月の公開記事

  1. POLINの高性能オーブンを日本市場へ 。450℃の焼成力と緻密なヒーター制御 - スズキ産業の下河拓磨社長
  2. 見やすい売り場と旬の味で、地域が誇れるベーカリーへ - アリマベーカリー
  3. 「ちいかわ」の世界観を表現したパンと店づくり - ちいかわベーカリー
  4. 掲載から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文を公開しています。
    ブランスリーアーカイブ
ブラ立ち読み
(記事の無料メール配信)
詳細はこちら