記事の閲覧
| <<戻る |
| 特集/2004年9月号 |
2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
| 夏をどう過ごしていますか?
「夏をどう過ごしていますか?」のテーマで、
ベーカリーを取材した。記録的な猛暑となった今年の夏だが、取材したベーカリーでも、一様に苦戦を強いられていた。しかし、考えて行動するのとしないのとでは大違い。売上低下の幅を少しでも縮め、秋以降につなげていこうと、頑張っている。 |

| ポスト・サマーを視野に入れて様々な企画をぶつける。 - サンセリテ(埼玉県狭山市)
夏は売上より客数確保
埼玉県狭山市のベーカリー、サンセリテでは、今年7月中旬に、パンの購入金額300円に対して100円の金券をプレゼントするキャンペーンを行った。金券の期限は8月31日まで。このキャンペーンの告知チラシを3万枚ポスティングした。 高田知明オーナーは、「夏場は、売上を確保することよりも、いかにしてお客様に店に来てもらうかが大事だと思います。300円に100円の金券というのは、店的にはきついのですが、それよりも、夏場に来店客数が減って、それが習慣になってしまって、秋口からの売上に影響することの方がこわいと思います。お客様は習慣でものを買いますから」と説明する。 「夢のあるパンの絵大募集」 夏場の客数確保の仕掛けはほかにもいろいろある。同ベーカリーは、今年初めに子供が遊べるスペース「キッズコーナー」を設けたが、そこに小さなテーブルと紙とクレヨンを置き、来店した子供にパンの絵を描いてもらった。題して「夢のあるパンの絵大募集」。パンの絵を描いてくれた子供には、動物の風船をプレゼントし、親にはパンの金券を贈呈した。「想像力豊かなパンの絵が50枚ぐらい集まりました」と高田さんは嬉しそう。 これら子供が描いたパンの絵を使って、カレンダーを作る計画を練っている。「子供のコックさんが作るハッピーブレッドと題して、子供のコックさんのキャラクターを配して、そこに子供たちが描いてくれた絵をレイアウトしようかと考えています。それを10月に予定している創業祭に配るんです。7000部ほど作ろうと思っています」(高田さん) カレンダーは今年の11月から来年の10月までのもので、月ごとに1割引のサービス券も印刷するという。 「例えば11月のページのサービス券は11月1日から30日まで使えるようにして、カレンダーをめくるごとにその月に使える金券が出てくるという仕掛けです」(高田さん) 店内では冷たいアイスコーヒーと麦茶の無料サービスも行っている。「この猛暑なので、かなり喜ばれています」と高田さん。 全体の3割の商品を入れ替えた 商品も夏向けに全体の3割弱を入れ替えた。デニッシュは、トッピングを変えるだけで、様々なアレンジができる。例えば、「マンゴーデニッシュ」(136円)。カスタードクリームをトッピングして焼いたデニッシュに、サワークリームを絞って、マンゴーをのせ、あんずジャムを塗って粉糖をふる。最後にミントをトッピングして完成。「アロエヨーグルト」(136円)も人気。同じくカスタードクリームをトッピングして焼いたデニッシュに、ヨーグルトクリームを絞ってアロエをのせる。さらに粉糖をふって、ミントをトッピングする。 「ソースもの」(高田さん)も夏向けの商品だという。この「ソースもの」の代表選手が「モダン焼き」だ。50グラムの生地を円盤状にのばして、焼きそばをのせ、その上にもう1枚の円盤状の50グラムの生地をのせてホイロをとる。ホイロが出たら、卵を塗って、ゆで卵を半分にカットして2つとものせ、マヨネーズを絞って焼成。焼成後おたふくソースを塗って、花かつおをかけ、半分にカットする。「秋口は、スーパーなども色々な企画をぶつけてきます。ウチはスーパーとの競合が激しいので、夏は売上より客数をどれだけキープして秋以降につなげるかが勝負なんです」と高田さんはいう。 サンセリテの夏場のこうした様々な企画は、夏が終わってからのことを視野入れたものだったのだ。 |

| なるべくロスを出さないように製造量は控えめに - ラ・フーガス(東京・世田谷区)
夏限定の定番商品がある。
東京・世田谷区のベーカリー、ラ・フーガスは、夏場限定の商品が数多くある。同ベーカリーは春夏秋冬と季節ごとに、旬の素材を使った様々な商品を出しているが、夏の商品は特に多いという。 「夏野菜のクロワッサン」も毎年夏になると必ず登場する定番商品だ。しかし、年によって使用する材料が少し変わる。今年は、アスパラ、ブロッコリー、ナス、パプリカ、ズッキーニを使用している。これら夏野菜を軽く炒めて、舟形に成形したクロワッサン生地にのせて焼く。 1日30個程度は売れる手堅い商品だという。 夕方までパンが焼けるようにする プリゼ生地を焼いたタルト台にカスタードクリームを絞って、フレッシュのマンゴーをのせた「フレッシュマンゴーのタルト」(230円)も夏場限定商品だ。同じタルト台に、カスタードクリームを絞って、フレッシュのブルーベリーをのせた「山ノ上さんのブルーベリータルト」(250円)もある。こちらの方は、ブルーベリーを農家から直接仕入れていて、農家の主人の名前を商品名に使っているそうだ。 同ベーカリーオーナーの仁礼正男さんは「夏は売上が落ちるのは仕方がありません。なるべくロスを出さないように製造量は控えめにしています」と話す。さらに「夏は1日に売れる量が少ないわけですから、売れる時期と同じように朝パンを焼いてしまうと、『朝出し1回』で終わってしまいますので、1回の焼成量を少なくして、夕方までパンが焼けるような状態を作るように心掛けています」という。 |

| 注文を受けてから加工するホットドッグが好調。 - パン・タパス(名古屋市熱田区)
本格的なソーセージを使用
愛知県名古屋市熱田区のパン・タパスでは、7月後半からホットドッグの製造販売を始めた。この商品が夏向けに出した商品の中ではかなり成功しているという。プレーンとチリビーンズの2種類がある。 生地重量70グラムの全粒粉入りのパンを背割りにして、長さ約22センチの本格的な粗挽きソーセージをはさんだ商品だ。1日約30個程度売れる手堅い商品になっているという。 提供の仕方が、他のパンとは違う。実はこの商品は、客の注文を受けてからパンとソーセージをパニーニグリラーを使って焼いて提供するのだ。 全粒粉のパンは朝焼いて用意しておく。ソーセージもあらかじめボイルしたものを用意しておく。客の注文を受けると、全粒粉のパンを、背割りした部分を広げて、パニーニグリラーの上に、背割りした面を下にして置く。上から焼成盤をパンをつぶさない程度に軽く押しあて、上下から加熱する。パンの表面がかりっとして香ばしくなる。ソーセージも同じようにパニーニグリラーで上下から熱を加え、ジューシーな感じに焼き上げる。パンにソーセージをはさんでレリッシュなどをトッピングして完成。テイクアウトのほか、イートインのコーナーでも食べられる。 同ベーカリーの尾碕明隆店長は「ソーセージはドイツで金賞をとったほどのいいものを使っています。仕入れ値もそれなりにしますが、粗挽きの美味しいソーセージには、全粒粉のパンがとてもよく合うんですよ」と話す。 猛暑が続いて苦戦を強いられる 同ベーカリーは、名古屋市熱田区のイオン熱田ショッピングセンター内にある。 尾碕店長は「今年の夏は猛暑が続いて苦戦しています。ショッピングセンター全体でも、特に飲食関係は苦戦しているようです。お客様の来店ピークが、夏以前は昼と午後3時の2回あったのですが、暑くなってからは3時以降の来店が多くなりました」と話す。 |
| 今年の夏は、例年の夏より、夏向け商品を絞り込んだ。 - パン焼き人(東京・目黒区)
毎年恒例の冷やして食べるパン
東京・目黒区のベーカリー「パン焼き人」には、毎年夏になると製造販売する商品がある。冷やして食べる商品の「アイスクリームのパン」、「パン・サバラン」など3品目だ。 アイスクリームのパンは、液体状のアイスクリームの種で仕込むブリオッシュ生地を使う。卵と牛乳の代わりにアイスクリームの種を使うのだ。6取り天板で高さ約8センチに焼き上げ、一晩ねかせて「シベリヤ」の形(三角形)にカット。店に出す前に、アイスクリームの種にくぐらせる。陳列するのは冷蔵ショーケースだ。 パン・サバランは、バンズの形に焼き上げたブリオッシュを同割りのシロップに漬け込んで、横にカットを入れ、生クリームをサンドした商品。同割りのシロップにはラム酒も入っている。こちらの方も冷蔵ショーケースに陳列する。 「いやあ、これだけ暑いと・・・」 「いやあ、これだけ暑いと、やはりお客様が外出されないですからね。特にウチの場合は地元の年配の方が多いので、あてが外れました」とオーナーの安井定義さんはいう。 夏の定番商品には、前述の冷やして食べるパンのほかにも、マンゴーやパパイヤなどを使ったデニッシュ類などがある。 ただ、今年に限っては、夏の定番商品の種類を、いつもの夏よりかなり絞り込んだそうだ。 「やはりひくところはひいて、力を蓄えるということも大事だと思います」と安井さんは言った。 塩や砂糖不使用のパンの売れ行きは? 安井さんは今年初め、塩や砂糖を使用しないパンなどに特化したベーカリー「カロリー」を「パン焼き人」の隣にオープンした。「生活習慣病で食事制限をしている人や痩せたくてダイエットをしている人などにもおいしくパンを食べてもらいたい」という思いからだった。安井さんはこうしたパンの夏期の売れ行き動向に興味を持っている。 |
| 暑い中、来店してくれた客を心からもてなす気持ちが大切 - ベーカリーコンサルタント、橋本泰之氏の話
夏だからこそできることがある
夏は、無理やり売ろうとせずに、暑い中足を運んでくれたお客様を精一杯もてなすことが大事だと思います。例えば、お客様が入ってきたら、冷たい麦茶を差し上げるとか、やることは色々とあると思います。「ご自由にお飲みください」でもいいのですが、できたらスタッフが声をかけて出してあげれば、気持ちが伝わるし、ベターだと思います。お客様が少ない夏だからこそできることですから。 私がお手伝いしているあるお店では、今年の夏、地域の子供たちを対象にしたパン教室を開きました。動物パンと飾りパン作りを体験してもらって、焼き上がったパンを、作った本人にプレゼントしました。こうしたことはいつまでも心に残ります。地域貢献にもなるし、長い目で見るとそれが店の売上にもつながってきます。そして、忙しくない夏だからこそできることでもあります。 他にもやることはたくさんあります。例えば、新商品の開発や商品の見直しです。試作をする時間もあるわけですし、じっくりと商品構成を見直すこともできると思います。 忙しいときにはできない、大掛かりな掃除もできると思います。リフレッシュするために、休みをとるのもいいでしょう。 「夏は無理に売ろうとしないで」とはいっても、売るための努力をしなくてもいいということではありません。何もしなければ売上は本当に落ちます。夏場対策をすれば少なくても落ちる度合いを減らすことはできます。私は昔、夏になるといろいろなミニパンを作って販売していました。食欲が減退する夏でも、ミニパンには比較的手が伸びるみたいです。アイスクリームやかき氷を販売したって、全然OKだと思います。要するにお客様が暑いときに何をしてほしいか、を考えて行動することが大切だと思うのです。 結論をまとめれば、「夏は、売上の落ち方を極力少なくする最大限の努力をした上で、普段できない大きな視野にたったことも実行する」ことが大切です。このことが店の長期的な繁盛に必ずつながってきます。 |
2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。






