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| 連載／2022年12月号 |
2023年11月18日から、発行から１年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
| 対立の構図からは何も生まれないキーワードは、「敵方の軟着陸」 - 普通のパン屋さんが普通に頑張れば繁盛出来る話(66) | ||||
番組のキャスティングも、世の中の現状に対して物申す若い人が中心になっていることが多く、地上波のテレビ番組では得られない貴重な気付きに遭遇することがしばしばです。 こうした数々の番組を見ている中で、私の頭に形成された考えのひとつは、世の中を動かしている色々な組織の中枢にいる人達には、世の中を変えることはできないという事実です。 様々な報道で指摘されているように、日本は過去20年の間、経済の仕組みの進化の時間が止まってしまいました。日本は、労働者の賃金が上がらない、先進国では珍しい国になってしまいました。先進国では珍しいということは、もはや先進国ではないのかも知れません。 過去20年は、日本の経済システムを変えなければいけない時期だったのです。「東洋の奇跡」とまで言われた戦後の日本の高度経済成長を支えた人達は、その栄光の経済システムを維持管理する様々組織の中枢の中で、知らず知らずのうちに金や名誉という既得権益に惑わされるようになりました。自分たちが築き上げたという自負と誇りは、当然ながら大切にされるべきものです。そして成功を成し遂げた時期の世の中の価値観が変わらない一定期間の間は、彼らがその自負と誇りを胸に、一定の権益を享受することは、当然の権利であると言えるでしょう。 しかし、過去20年は、世の中の価値観が大きく変わった時期でした。ですから、高度経済成長を支えた人達が日本経済の中枢で、その余韻に浸り続けてしまったことは、日本にとっての最大の不幸でした。 ここで注目したいのが、前述のＹｏｕＴｕｂｅの深掘り解説の番組です。既得権益とは無縁のところにいる物申す若者たちの発言が、ＹｏｕＴｕｂｅという新しいメディアを通して、同じく既得権益には無縁で、しかも優秀な人達に届くようになったことで、日本経済の変革を志す様々な人達の一種のコミュニティーが出来上がりつつあるように思います。そして重要なことは、このコミュニティーが、高度経済成長に起因して形成された様々な権威から完全に独立して存在していることです。 ＹｏｕＴｕｂｅの深掘り解説の番組が、日本経済再生に極めて重要な役割を果たすことは間違いないと思いますが、そうしたＹｏｕＴｕｂｅの番組を見ていて若干不快に感じるのは、物申す優秀な若者が、既得権益を享受している立場の人たちを、これでもかと言わんばかりに、非難するシーンです。 番組で議論することが、実際に日本経済を再生することを目的としていて、今の実際の日本経済が、既得権益を享受している立場の人たちで動かされていることを認めるなら、まずは、彼らにも軟着陸できるようなアイデアをひねり出さなくては、改革が一向に進まないのは明らかです。互いの立場を理解しようとしない対立の構図は、どちらか一方が他方をせん滅するまで続きます。今現在日本経済を動かしている人たちをすべてクビにしてしまったら、「日本の給料は上がらない」などと流暢に言っている場合ではなくなります。 かつて民主党が、理想論を掲げたものの、官僚や経済界の支持を得られずに、失敗したことが思い起こされます。 翻って、パン業界について見てみると、特にリテールベーカリーの世界では、消費者との直接の結び付きが強いせいか、業態の進化はスムーズに進んできたように思われます。ホールセールベーカリーは、リテールベーカリーの製パン法の変化を注視しながら、少しずつ自己改革を進めているように私には見えます。（ＲＯ） | ||||
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