カリフォルニア プルーンベーキングセミナー 油脂の代替となるプルーンピューレの活用法 - カリフォルニア プルーン協会 - ブランスリー電子版


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講習会/2013年7月号

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カリフォルニア プルーンベーキングセミナー 油脂の代替となるプルーンピューレの活用法 - カリフォルニア プルーン協会
講師を務めた山粼豊氏
カリフォルニア プルーン協会日本マーケティング事務所プログラムディレクターの金子美和氏
 カリフォルニア プルーン協会(日本マーケティング事務所=東京・港区)は東京・渋谷区の日本製粉東部技術センターで5月9日、ベーカリーコンサルタントの山粼豊氏を講師に招き、「カリフォルニア プルーンベーキングセミナー 油脂の代替となるプルーンピューレの活用法」を開催した。
 会場を提供した日本製粉製粉事業本部・製粉営業部の久保田誠人氏は、「昨年末の政権交代で景気が少しずつ回復してきていますが、消費者はまだ安さを求める流れがあると思います。しかし、安さよりおいしさを優先するという人もいます。今回はプルーンピューレについて、その使用方法と、おいしいパン作りへの活用方法を学んでいただき、お店の売り上げアップにつなげていただきたいと思います」と述べた。
 同協会日本マーケティング事務所プログラムディレクターの金子美和氏は、「当協会が日本で1987年に活動を開始して以来、単独で開催するセミナーは今回が初めてとなります。活動開始当初はスーパーで珍味コーナーに並ぶほど目立たぬ食材でしたが、今ではその栄養価の高さや強い抗酸化力を持つ点などが注目され、日本の市場でも身近な食材として認知されてきました。今回のセミナーでは、パンの素材としても魅力的であることを、特に保湿性を与えることができるということに着目して、お伝えすることができたらと思っております」とセミナー開催の主旨を説明した。
 講師を務めた山粼豊氏は、「プルーンピューレには、ほかにもいろいろな機能があると思いますが、今回はバターを入れなくてもこんなにソフトなパンが作れるということがよく分かっていただけるようにベーシックな配合のパンを紹介します」と述べ、スイートロールやミルクブレッドなど7品目のパンを製造実演した。
 山粼氏の実演の後、健康料理創作家の茨木くみ子氏が「今、油脂の入らないパンが求められている」というテーマで講演を行った。



スイートロール
スイートロール
写真1(右がプルーンピューレ使用のもの)
 プルーンを使うことで、ソフトな食感だけではなく、もちもちとした食感も出る

【中種配合%】
強力粉(イーグル)‥‥‥‥‥‥70
甜菜糖‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥5
イースト‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥4
水‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥40
【中種工程】
ミキシング‥‥‥‥L3分LM2分
捏ね上げ温度‥‥‥‥‥‥20度C
フロアタイム‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
‥‥‥‥‥26度C75%1時間30分
【本捏配合%】
強力粉(イーグル)‥‥‥‥‥‥30
甜菜糖‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥20
塩‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥1・5
脱脂粉乳‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥3
卵黄‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥8
プルーンピューレ‥‥‥‥‥‥‥12
水‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥12
バニラビーンズ‥‥‥‥‥‥‥‥‥
‥‥‥‥‥1本(粉1キロに対して)
【本捏工程】
ミキシング‥L3分LM3分(プルーンピューレ投入)L1分LM4分
捏ね上げ温度‥‥‥‥‥‥26度C
フロアタイム‥‥28度C75%25分
分割‥‥‥40グラム(分割後丸める)
ベンチタイム‥‥‥‥‥‥‥15分
成形‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥丸め
ホイロ‥‥‥‥‥32度C85%55分
焼成‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
上火220度C下火190度C9分
 山粼氏のコメント バターをプルーンピューレに代えただけのベーシックなタイプのスイートロールの配合と工程だ。バターで作ったものと、このようにプルーンピューレで作ったものと食べ比べると(写真1)、バターで作ったものの方が、食感や風味など、食べ慣れたおいしさとして感じるかもしれない。プルーンピューレで作った方も、ソフトに仕上がるが、そこにもちもち感が加わる。そこが面白いところだと思う。プルーンピューレは、ミキシングの際、最初から入れても良い。



ミルクブレッド
ミルクブレッド
写真2
 牛乳だけで捏ね上げたパン・オ・レ生地にプルーンピューレを添加することで少し噛み応えが増す

【配合%】
強力粉(イーグル)‥‥‥‥‥‥50
フランスパン用粉(Fナポレオン)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥50
甜菜糖‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥10
塩‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥2
脱脂粉乳‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥5
プルーンピューレ‥‥‥‥‥‥‥12
卵黄‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥10
生イースト‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥3
牛乳‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥65
バニラビーンズ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
‥‥‥‥‥1本(粉1キロに対して)
【工程】
ミキシング‥L3分LM3分(プルーンピューレ投入)L1分LM6分
捏ね上げ温度‥‥‥‥‥‥24度C
フロアタイム‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
‥28度C75%80分(パンチ)40分
分割‥250グラム(分割後丸める)
ベンチタイム‥‥‥‥‥‥‥20分
成形‥‥‥‥‥‥‥‥なまこ形にし、粉をふってクープを入れる(写真2
ホイロ‥‥‥‥‥32度C85%55分
焼成‥‥‥‥上火220度C下火190度C20分(スチーム少量注入)
 山崎氏のコメント いつも自分が作っているパン・オ・レの生地に、プルーンピューレを加えたもの。プルーンピューレを加えることで、噛み応えが増すが、口どけはよい。実際はソフトな食感のパンだが、オーブンで直焼きすることで、かたそうな見た目のパンに仕上げることができる。このような見た目のパンを店頭に並べると、「かたそう」だと思ってトングでつかみ、「あら、やわらかいのね」と驚いた様子を見せるお客様を見ることがある。ハード系が売れなくて困っているときは、こうした見た目のギャップがあるパンを置いてみるのも面白いかもしれない。



プルーンクッペ
プルーンクッペ
写真3
 プルーンピューレを入れることで少しひきのある食感になる

【配合%】
フランスパン用粉(Fナポレオン‥
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥70
フランス産小麦粉(メルベイユ)‥
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥30
塩‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥2
モルトシロップ‥‥‥‥‥‥0・3
ドライイースト‥‥‥‥‥‥0・4
プルーンピューレ‥‥‥‥‥‥‥20
水‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥58
▼発酵種‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥15
【工程】
ミキシング‥‥‥‥L6分LM3分
捏ね上げ温度‥‥‥‥‥‥24度C
フロアタイム‥‥‥‥28度C75%1時間30分(パンチ)1時間30分
分割‥250グラム(分割後丸める)
ベンチタイム‥‥‥‥‥‥‥25分
成形‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥クッペ型
ホイロ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
‥28度C75%1時間(ホイロ後粉をふり、クープを入れる=写真3
焼成‥‥‥‥‥‥‥上火235度C下火215度C25分(スチーム注入)
▼発酵種
【配合%】
フランスパン用粉(Fナポレオン)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥100
塩‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥2
モルトシロップ‥‥‥‥‥‥0・3
セミドライイースト‥‥‥‥0・4
水‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥66
【工程】
ミキシング‥‥‥‥L6分LM1分
捏ね上げ温度‥‥‥‥‥‥24度C
フロアタイム‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
‥‥‥‥‥26度C75%1時間30分
発酵‥‥‥‥‥‥‥‥‥5度C1晩
 山粼氏のコメント プルーンピューレを入れることで、食感に特徴が出る。使用しているフランスパン用粉だけでは、出ないはずのひきが、プルーンピューレを入れることで出るようになるからだ。また、プルーンピューレを入れていることで糖度が若干上がっているので、焼成時は下火の調節に気を付ける。

グラハムブレッド
グラハムブレッド
写真4(ホイロ後の生地)
 弾力感があって歯切れのよいグラハムブレッド。プルーンピューレが全粒粉の臭いをマスキングする

【配合%】
グラハム粉‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥20
熱湯‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥25
強力粉(ゴールデンヨット)‥‥40
強力粉(イーグル)‥‥‥‥‥‥40
甜菜糖‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥5
塩‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥2
脱脂粉乳‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥3
プルーンピューレ‥‥‥‥‥‥‥14
イースト‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥2
水‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥45
【工程】
ミキシング‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
‥‥‥‥‥L3分LM6分MH1分
捏ね上げ温度‥‥‥‥‥‥24度C
フロアタイム‥‥‥‥26度C75%1時間30分(パンチ)1時間30分
分割‥300グラム(分割後丸める)
ベンチタイム‥‥‥‥‥‥‥15分
成形‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥なまこ形にし、粉をふってクープを入れる
ホイロ‥‥32度C85%50分(写真4
焼成‥‥‥‥‥‥‥上火220度C下火190度C25分(スチーム注入)
 山粼氏のコメント プルーンピューレを入れることで、全粒粉の臭いをマスキングできる。また、弾力のある歯切れの良いパンに仕上げることができる。生地はしっかりとしているので、いろいろな具材を入れても沈むことなく焼き上げることができる。グラハム粉は熱湯処理しておくと、もちもち感が増す。焼くときは、食パン型に入れてもいいし、直焼きしてもかたくならずソフトに焼ける。

今、油脂の入らないパンが求められている
 健康料理創作家の茨木くみ子氏の話 油脂を使わないパンというと、ぱさつくとか、味気ないとかというイメージがあると思います。その一方で、生活習慣病など、現在問題になっている病気は食生活が大いに関係しており、油脂を使わないパンは求められていると思います。
 私は「ふとらない」シリーズというレシピ本を出していますが、おかげさまで好調な売れ行きです。2011年に出した「ホームベーカリーで作るふとらないパン」は、「ふとらない」シリーズの中で今最も売れています。これは日々改良を重ね、従来の油脂を使わないパンのイメージを変えようとして作り上げたレシピ本です。
 今年1月に行った日本政策金融公庫の調査によると、20〜70歳代の男女2000人のうち、「食に関して意識していること」として、「健康志向」を挙げた人が半数近くに及んだそうです。また、若年層は「健康」や「安全」より「節約」と「手軽さ」を重視し、さらに太らないものを求めるという傾向があるようでした。
 特に戦後は著しく食生活が変わりましたが、油脂に関して言うと、1960年の頃と比べると、現代は4〜5倍にも摂取量が増えています。1グラムあたり9キロカロリーの油脂は、炭水化物やたんぱく質と比べて、高カロリーと言えます。そして過剰摂取は動脈硬化や脳卒中、心筋梗塞の原因にもなります。
 健康志向の人々にとって、「油脂は太る」というのはもはや常識となっています。パンについても、「太らない」こと、「健康を害さない」ことが求められていると思います。しかし、おいしくない食べものは続きませんから、油脂が使われていなくておいしいふわふわのパンであることが重要です。
 プルーンは、ビタミンやミネラル、食物繊維、カリウムなどが豊富に含まれている健康食材です。プルーンをパン作りに使用することで、しっとりもちもちに仕上がり、かたくなりにくくする効果があります。
 おいしくて、カロリーを控えたパン作りができるプルーンの可能性に今後期待していきたいと思います。

日本製粉製粉事業本部・製粉営業部の久保田誠人氏


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