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| 特集/2024年10月号 |
2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
| 小さいパン屋
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津田さんにとって、作業の中で一番楽しいのは、アイデアを出して新しい商品を作る事だ。自分が考えて作った商品が、売れるかどうか予測ができないところが逆に面白いという。 「売れると思っても売れないこともあるし、売れないと思ったものが売れることもあります。それが面白いんです」と津田さんはいい、「綺麗な宝石みたいなフルーツをのせたデニッシュだね」などとは言ってもらえるのですが、地域柄、高齢の方が多いのであまり売れないんです」と有加さんは話す。 やはり実際によく売れるのは定番の商品だ。それでも自分達が好きですすめてみたいと思う商品は作り続ける。効率を考えると本当はもっと商品数を絞った方が良いかもしれないと思う時もある。 しかし、同店の場合、チラシの配布や販促のイベントは行っていないため、販促の費用も手間もほぼゼロ。インスタグラムも客層の中心がSNSをあまり使用しない高齢者のため、あまり力を入れていない。外販もほとんど行なっていない。 こうしたことから、製造面での負担をある程度許容できるのが、同店の強みになっている。 「値札はお年寄りでも見やすいよう、大きくはっきり、柔らかめの文字で書くようにしています。小さい気配りは大切にしていますね」(有加さん) 子供の独立後、夫婦二人で起業 ベーカリーを開業する前、津田さんはシフト制で夜勤もある仕事の会社員で、有加さんはケーキ屋でパートの仕事をしていた。 高校の同級生で17歳の頃からの付き合いという夫妻。十代で結婚したため、40歳を迎える頃には既に子供が独立。まだ働き盛りの年だったが、夫婦二人だけの生活となったため、残りの人生をどう過ごすか考えるようになったという。 「はじめは都会の喧騒を離れ自然豊かで人口の少ない地方へ移住する事も考えました。でもやっぱり住み慣れた場所で、二人で力を合わせてできる事で何か事業をやりたいなと思うようになったんですね」(有加さん) 起業に関する色々な説明会にも参加し話を聞いていくうち、一時はタルトケーキの店のオーナーになるなどの話も進んだ。 「色々ありましたが、二人ともパンが好きだったし、やっぱりパン屋を開業することにしました。パン作りは全く未経験でしたがベーカリーの開業を支援してくれる専門の会社の研修を受け、店を開く準備を始めました」(津田さん) 当時は同じ千葉県内でも船橋市の船橋法典駅近くに住んでおり、物件もその近くで探した。しかし同じ駅前に競合となりそうな店ができると聞きやめた。以降2年位、物件探しをやめて迷っていたが、ある時、千葉市内に居抜きで入れる賃貸物件があると紹介され、その店での開業となった。以前のオーナーはその店で7年ほど営業をしており、地域住民からも好評の店だったが、オーナーの家庭の事情で店をやめることになったため、次のテナントを探していたのだという。 「住宅街という条件などが一致し、昔からの高齢者の方を中心に人口も多い場所だったためここに決めました。ただ高齢のお客様は確かに当初は多かったのですが、コロナ禍が長引く中で外出する人が減り徐々に減っていった感じもあります。代わりに増えてきた客層が20〜30代位の若い世代の人達です」(津田さん) 働き盛りの若い世代の客層は週末に買いだめする傾向もあり、客単価を押し上げてくれる。一方で客層の中心として高齢者層はまだ多く、常連でいつも同じ商品を買っていく人や、混雑時がすぎた時間にふらっと来て長話をしていく人もいる。全体的に客数自体は増えている。 「色々なお客様がいますが、4年かけて店の事が色々な人に知られるようになってきているのであれば嬉しいです。まだ伸びしろはあると考えていますが、この規模で、夫婦二人でできることを考えながら、力を合わせて店を育てていきたいですね」(津田さんと有加さん) SHOP DATA 店名:国産小麦と無添加生地 むぎのぱん 住所:〒260‐0041 千葉県千葉市中央区東千葉1丁目1−15 電話:043‐256‐3577 営業時間:午前10時〜午後6時(売切れ次第終了) 定休日:月曜、火曜 品揃え:40〜60品目 スタッフ:製造常時1人、販売常時1人 店舗面積:厨房8坪、売り場4坪 | |||||||||||||

| 子育て世代が多い振興住宅街で、小規模店の良さを活かした地域貢献 - panya no.. takesan! | |||||||||||||||||||
「もともと駅前を避け、住宅街で人通りが程々にある場所を狙って物件を探していました。この場所は『公園がすぐ近くにある店』というコンセプトにも合っていたので決めました」 埼玉県戸田市、埼京線の戸田公園駅から徒歩12分ほどの場所にあるベーカリー「panya no.. takesan!(パンヤノタケサン)」の店長である竹内翼さんは開業に向けて物件探しをしていた当時をこう振り返る。同店は今からちょうど10年前の2014年8月にオープン。 当時1歳だった娘を抱えた妻の亜紀さんも共に働き、それ以来10年、二人で店を運営してきた。駅前の物件を避けたのは、会社帰りの人が多く来店するため夕方忙しくなるからで、小さい子供を育てながら夫婦二人だけで店の仕事を行うには、忙しい時間帯が午後3時以降にくるのは避ける必要があったのだという。 住宅街の大通り沿いにある同店は店名である「panya no.. takesan!」が白抜きで書かれた紺色のシェードの下に、店の様子が上から足元までよく見える縦長のドアと窓、白い漆喰の壁があり、右横の真っ赤なポストが印象的だ。どことなくアメリカ西海岸風のスタイリッシュな外観だ。中に入ると、3坪ほどの小さな空間に2段の木製ショーケースを設置した対面式の売り場がある。 接客の中心は販売を担当する亜紀さんだが、売り場の後ろ側から奥に続く厨房があり、早朝から製造作業を行う竹内さんも常に来店客の様子を覗く事ができる。もちろん「ありがとうございました」などの声かけは竹内さんも一緒に行うし、麺台から会話をすることもある。 「接客も、もともと好きで、この規模の店にしたのは作るだけじゃなく、作ったものがどんな風に売れていくのか、お客様の反応を見たかったというのが大きいですね。修業時代は大手勤務だったので、厨房に篭りがちで、お客様の顔が見えないのが少し寂しかったんです」(竹内さん) ハード系が好きでパン職人の道へ ホテルベーカリーなどで10年ほど修業したのちに開業した竹内さん。店の商品はイーストを極力抑え、低温で長時間発酵させたハード系の商品が中心だ。原材料小麦は北海道産と埼玉県産の小麦が中心。週末のみ「農林61号」を原料とした埼玉県産の全粒粉「61(SIXTY−ONE)」を使用したバゲットも販売している。 「生産者との距離の近さを大切にしていきたいので、小麦はなるべく国産、できれば埼玉県産を使用したいと思っています。国産小麦の扱いも、品質的に前ほどぶれなくなってきているので、作業的にはそれほど負担ではありません。ただ内麦はやはり価格が高いので、それを踏まえた上で商品価格を決めています」(竹内さん) 一番人気の看板商品は、高加水のリュスティックに粒あんとバターを挟んだ「あんバター」(税込259円)。バゲットやカンパーニュ、パンドミなどの食事パンの需要も多い。「TSUMAMI」(税込302円)や「クリームチーズくるみ」(税込313円)などバゲットやカンパーニュ生地をベースにした商品も人気。また、ベーグルや惣菜パン、菓子パンなどもバランスよく揃え、夏場はおよそ25種類、冬はおよそ35種類に絞って商品を展開している。 竹内さんは子供の頃からハード系のパンが好きだった。 「何もつけないけれど噛めば噛むほど旨味が出てくるパンを味わうのが好きでした。父親が飲食関係の会社に勤めていたのも影響していると思うのですが、食に対する興味が強く、高校生の時にはもう何となくパン職人になりたいなと思うようになっていましたね」 そんな竹内さんだが、パン職人になる前に調理全般を勉強したいと考え、高校卒業後は調理の専門学校へ進んだ。専門学校卒業後は主にホテルベーカリーなどでパン職人としての経験を積んだが、20歳の頃にはうっすらと10年以内には独立して店を持ちたいと考えるようになっていたという。 | |||||||||||||||||||

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客との距離が近い店にしたかった
当初は20坪くらいの店を考えていた。考えが変わったのは、小規模の店を出していた先輩の店を見てからだった。 「何ていうか、昔ながらの八百屋や肉屋みたいな個人商店で、お客様との距離が近い感じがいいなと感じたんです。そんな店が、自分にとっては憧れの店でした」(竹内さん) 先輩の店のように10坪くらいでなるべく夫婦二人でできるような規模にしようと考えた。また「住宅街で公園が近くにある店」というコンセプトも決めていたため、物件探しをする際は、それまで住んでいた東京の赤羽から、荒川を超えて埼玉県戸田市までを物件探しの範囲にした。 最終的には子育て世代が多く公園も多い現在の場所で物件を見つけることができたという。 もともとは飲食業ではなく、別の業種の会社が入っていた物件だったが、手前に小さめの売り場、奥に細長い厨房を配置することで、理想的な動線を確保できるレイアウトが可能な物件だった。 さらに、同物件は、駅から離れているとはいえ、目の前には「市役所通り」という大通りがあり、駅から戸田市役所に向かう途中の場所にあった。また、すぐ近くに親子連れが多く集まる公園と、白く輝く新しい校舎が印象的な小学校もある。公園を訪れる地域住民や市役所へ向かう人などが多く行き来するし、学校関係者などの通行も多い。 「物件が見つかってから3カ月位で工事を終えました。内装はある程度手作りで、売り場のレイアウトを決めたり、妻と一緒に壁の漆喰を塗ったりもしながら楽しみながら進められたと思います」(竹内さん) 店は2014年の8月にオープンしたが、それ以来10年の月日が流れた。 小規模店のメリットとデメリット 戸田市はJR埼京線で荒川を越えれば簡単に都内に行ける利便性もあり、近年子育て世代を中心とした人口が急増。埼玉県内の市町村では最も平均年齢が若いまちとして知られている。同店に訪れる客は竹内さんらと同じ若い子育て世代が中心だ。 オープンしてから10年が経ったが、周囲の協力もあって今まで何とか店を続けながら、子供も育てる事ができた。オープン当時は1歳だった竹内さんらの子供も今はもう小学校5年生になった。 「この規模の店を運営するメリットは、まず物事を決めるのが早くできるという事ですね。大手と違って色々な人の意見を聞いたり、まとめたりする必要がないので、必要な事は夫婦二人で伝達し合い話し合えば即決める事ができます。だから毎日の変化が早くて、単調ではなく色々な事が起きる感じがします。また毎日会えるので、子供の話など仕事以外の相談事も合間にできて、家庭との両立もしやすいですね。小規模店でも自分一人だけの店だったら続けるのは難しかったと思います。二人だったからなんとかやってこられたんだと思いますね」(竹内さん) 様々なメリットがある一方で、小規模ゆえのデメリットもあるという。 現在、亜紀さんが店頭での販売と接客のほか、サンドイッチの製造も行っているが、パンの製造は竹内さんがほぼ一人で行っているため、店頭に出せる商品数は多くても40種類位までが限度だという。 「種類が多いほうが、お客様にとっては、選べる楽しさがあるので良いとは思うのですが、中々難しいですね」と話す竹内さんだが、同店のハード系生地の商品には定評があり、最近は若い世代だけではなく、年配の客や一人で買いに来る男性の客などにもファンが増えているという。竹内さんによると、コロナ禍を機に年配の方でハード系の商品を求める人が増えてきた印象があるという。 「店をオープンした当初は硬いパンは苦手という人も多かったのですが、最近では状況が変わってきました。10年の間にハード系の認知度も上がったし、色々な人に買いに来ていただけるようになったのであれば、それに合わせた商品作りも考えていきたいですね。今は、男性のお客様に需要の高い惣菜系のバリエーションを広げていきたいと考えています。商品数を極端に増やす事はできませんが、出したものの中での満足度は上げられるように、商品構成は考えていきたいですね」(竹内さん) SHOP DATA 店名:panya no.. takesan! 住所:〒335‐0022 埼玉県戸田市上戸田2丁目36‐8荻野ビル1階 電話:048‐430‐7345 営業時間:午前9時30分〜午後6時 定休日:日曜、月曜 品揃え:秋冬春は約35品目、夏は約25品目 スタッフ:製造1人、販売1人 店舗面積:厨房6.7坪、売り場3坪 |
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