栄一の母が言った「あんたが嬉しいだけじゃなくて、みんなが嬉しいのが一番なんだで」の本当の意味 - 普通のパン屋さんが普通に頑張れば繁盛出来る話(56) - ブランスリー電子版


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連載/2022年2月号

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栄一の母が言った「あんたが嬉しいだけじゃなくて、みんなが嬉しいのが一番なんだで」の本当の意味 - 普通のパン屋さんが普通に頑張れば繁盛出来る話(56)
 先日、日本製パン製菓機械工業会がオンライン配信で行った新春講演会を拝聴させて頂きました。日本経済の父と言われる渋沢栄一の5代目の子孫である渋沢健氏を講師に迎えて行われた講演会でした。渋沢栄一が残した言葉を、現在の日本経済が置かれた状況の文脈で読み直し、今後の日本経済が進むべき道を探ろうという趣旨でした。
 渋沢健氏によると、渋沢栄一の言葉の多くは、1916年に出版された「論語と算盤(そろばん)」という栄一の講演集に残されていて、栄一はその中で、「経営者一人が大富豪になり、そのために社会の多数が貧困に陥るような社会は、幸福の実現度が低いし、長くは続かない」と言っているそうです。また、「正しい道理の富でなければ、その富には永続性がない」とも言っているそうです。
 「格差の拡大」は、現在の日本の社会が抱える大きな問題のひとつです。株主至上主義が掲げられ、「リストラすれば株価が上がる」とまで言われ、日本の会社は、従業員をクビにしない経営から、会社の業績に合わせて、従業員の数と賃金を調整できる経営に大きく舵を切りました。その是非は別として、その負の結果のひとつが格差の拡大だったのかと思います。
 ベーカリー業界の実情はどうでしょうか。最初に言っておきたいのは、経営者は、裕福であってまったく問題ないということです。ただし条件が一つだけあります。それは、従業員の給料とのバランスがとれているということです。栄一の言葉を少しだけ書き替えれば、「オーナーシェフ一人が裕福になり、そのために従業員の多数が貧困に陥るようなベーカリーは、幸福の実現度が低いし、長くは続かない」ということになるでしょう。そうした状況での富は、栄一が言いう「正しい道理の富」にはなりません。
 私の肌感覚では、従業員の給料を上げ、労働時間を短縮しようと試行錯誤するベーカリーが以前より多くなってきているように思います。特に繁盛ベーカリーのオーナーの方々からそうした声が聞かれます。
 では、オーナーシェフと従業員の給料のバランスはどうとったらいいのでしょうか。まず言えることは、オーナーシェフの給料は従業員の給料より高くなくてはならないということです。このことに異議を唱える人は少ないと思います。
 私は、このバランスについては、極めて単純に考えればいいのではないかと思います。つまり、例えばですが、まず、オーナーシェフの年収を「X円以上であって、最も賃金が低い従業員の年収のY倍を超えてはならない」と決め、最も賃金が低い従業員の年収を「Z円以上であって、オーナーシェフの年収のW分の1未満であってはならない」と単純に決めておくなどすればいいと思います。
 この場合、仮にXを「1000万」、Yを「5」、Zを「280万」、Wを「5」と決めて、オーナーシェフの年収が1200万円だとすると、一番年収が低い従業員が280万円以上の年収を得なくてはならないことになります。
 会社の売上の急上昇が見込める場合に、仮にオーナーシェフの年収を1800万円に上げたとすると、一番年収が低い従業員が360万円以上の年収を得なくてはならないことになります。実際には、従業員の給料が翌年に28%増などということは考えづらいかも知れませんが、栄一が言う「正しい道理の富」とは、そういうことなのです。
 講演会で、渋沢健氏は「パーパス経営」の重要性についても触れていました。「パーパス」とは英語で目的のことで、つまり、会社経営において、その目的を明確化することが大事だというのです。それは、経営者が会社運営に関わる目的であると同時に、各従業員が会社に関わる目的でもあります。
 ベーカリーのオーナーシェフであれば、自ら事業を立ち上げたわけですから、目的意識ははっきりしていると思いますので、問題は従業員の目的意識だと思います。
 ここで重要なことは、各従業員の中で、ベーカリーとしてのパーパスと、それとは別の、従業員個人のパーパスがうまく融合していなくてはならないということです。
 具体的には、以下のようなことになると思います。「このベーカリーのパーパスの実現の過程に参加し、技術や考え方を学び、ゆくゆくは自分の店を持って、今度は自分のパーパスを実現したい」。 (RO)







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