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| お店拝見／2021年6月号 |
2023年11月18日から、発行から１年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
| 看板商品も頻繁に少しずつ改良していく - ボンジュール・ボン イトーヨーカドー武蔵境店 | ||||||||||||||||
東京・武蔵野市のベーカリー「ボンジュール・ボン イトーヨーカドー武蔵境店」は、ＪＲ武蔵境駅南口のスーパー内に２０１９年６月に開業。運営する「ボンジュール・ボン」の田中善教社長は、このほかに、東村山市と中野市で「ボンジュール・ボン」を各１店舗展開。両店舗とも開業して20年以上となる。昨年は武蔵野市に食パン専門店「告白はママから」を開業した。 イトーヨーカドー武蔵境店で店長を務める桃井直也さんは、「スーパー内への出店は、当社にとっては初めてのことだったので、路面店との違いを実感しています」と話す。 「路面店ではパンを購入する目的意識がある方の来店が主ですが、当店では他の用事のついでというような方が多いですね。ですので、まずは興味を持ってもらうため、コロナ禍になる前は試食を10種類くらい出していました。焼きたてをどんどん出すことで漂うパンの香りや、声掛けも重視していました。現在は、パンを並べる前に袋詰めしておくことや、大声を出すのを自粛することなどが求められているので、商品自体の魅力を上げていくことに、より一層努めていかなければならないと思っています」（桃井さん） 商品の魅力を高めるために行っているのは、新商品開発や定番商品の改良だ。創業時から人気で、メディアにいくどとなく取り上げられている看板商品の「メープルメロンパン」（税込１９０円）や「ビッグエッグカレーパン」（税込１９９円）なども、改良を続けているという。 「味は創業時から大分変わっています。お客様に楽しんでいただくために、毎月新商品開発を行っているのですが、定番商品の改良も、それと同等に重視し頻繁に行っているんです。改良は何度も行っていますが、一回改良ではお客様に気付かれない程度に抑えるようにしています。すでに人気がある商品を変えるのには勇気が要りますが、お客様の味覚や嗜好は変わり続けていますから、それに合わせるようにして、改良し続けていくことは必要だと思っています」（桃井さん） 「メープルメロンパン」の大きな変化は、以前はハードな食感だったクッキー部分が、現在はサクッと軽い食感になっている。高齢者にも食べやすくという思いからだ。 「ビッグエッグカレーパン」は中に入れるゆで卵が、当初は１個の４分の１だったが、現在は半個に増えている。 「ゆで卵を増量することで、インパクトの強い商品になったと思います。しかし卵が増えると全体の味がマイルドな方へ偏ってしまうので、カレーフィリングの改良が欠かせませんでした。コクを深くしたり包む量を破裂寸前にまでに増やしたり、試行錯誤してきました」（桃井さん） 試食は家でじっくり味わってもらう 品揃えは、東村山と中野の両店舗とほぼ同じだが、全店にそれぞれ限定商品を設けている。同店の限定商品は、北海道産小麦の「はるゆたか」と「ゆめちから」を使用した「国産 湯種製法生食パン」（税込４３２円）だ。特徴は、もっちりとした食感と乳製品由来の風味の良さ。３店舗共通の定番商品「湯種仕込 マーヴェラス食パン」（税込３５０円）より高価格となっている。 「食パンは最も力を入れていることもあり、開業前日まで試作していました。スタッフ皆で試食して、もっと味が濃い方がいいのではなどと、意見が分かれましたが、最終的には、甘みの上品さと、飲み込むときのミルキーな感じを重視ししました。原価が高い分、高価格になっているのですが、当店の商品全体がお手頃価格に設定しているので、当初は価格だけで見ると少し浮いてしまうようなところがありました」（桃井さん） 「オープニング景気がしばらくして落ち着きだすと、売れ残りがかなり出てしまうこともあった」（桃井さん）が、商品価値を守るため安売りはしなかった。２日間は焼かずにそのままでもおいしいという特性を活かし、翌日の試食用に回した。 「味を知っていただけたら、確実にリピーターが増えてくる商品だと思っていたので、軌道に乗るまである程度時間がかかることは覚悟していました。試食は、一口大にカットしてその場で食べてもらうのではなく、スライス２枚を袋に入れてレジでお客様に手渡ししました。その場で食べるだけでは、おいしいと思ったとしても記憶に残りにくいと思うんです。家で食べるときのような、普段と同じシチュエーションで、落ち着いて味わっていただけるようにしました。そうしているうちに、『いただいた食パンはどれですか』と聞いて、購入されるお客様が増えてきて、嬉しかったですね」（桃井さん） | ||||||||||||||||
インストアベーカリーという立地上、味や品質で差別化を図り価格競争に巻き込まれないことが重要だ。「もっちりツイストドーナツ」（税込１５０円）も、ホールセールと同様の商品より高価格だが、味の違いを強調すべく開発した製品だ。 「イーストドーナツはベーカリーの定番アイテムですが、一般的な味にはせず個性を追求しました。本来は口どけのいい生地を使用するのですが、食感に特徴を持たせるため、『国産 湯種製法生食パン』の生地を使用しました。ほどよくもちもちした食感に仕上がって、全く別物の味になっていると思います」（桃井さん） 同店は25坪の売り場の横に、５坪のイートインスペースがある。席数は、新型コロナウイルス対策のため、昨年から10席に減らしている。開業時は16席だった。 「昨年緊急事態宣言が発令していたときはイートインスペースの利用は中止して、テイクアウトだけの営業でした。宣言が解除された後は再開しましたが、席数を減らしたほか、セルフサービスで利用してもらうトースターやトングの消毒を頻繁に行ったり、利用後のテーブルをすぐに消毒するなどして安全に利用してもらえるようにしています。将来的にはイートイン限定メニューを充実させていきたいですが、今は、シンプルに当店の焼きたてのおいしさを楽しんでもらう場所として使っていただけたらと思っています」（桃井さん） SHOP DATA 店名：ボンジュール・ボン イトーヨーカドー武蔵境店 住所：〒180-0023 東京都武蔵野市境南町2丁目2-20 イトーヨーカドー武蔵境店東館１Ｆ 電話番号：0422-30-8844 営業時間：午前１０時〜午後９時 定休日：不定休（イトーヨーカドー武蔵境店に準する） 品揃え：７０品目 スタッフ：製造常時４人、販売常時３人 店舗面積：売り場25坪、厨房18坪、イートインスペース５坪 日商：平日約37万円、土日約45万円 | ||||||||||
| この記事の読みどころ
●定番の人気商品も改良するが、少しずつ行い、１回の改良では、味の変化が客にわからないようにして、何度も改良を重ねた結果、「ふと気づくと前と味が違う」と思ってもらえるようにする。
●店として自信があって売りたい商品は、試食を長く提供するなどして、我慢しながら育てる。 |
2023年11月18日から、発行から１年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
