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| 連載/2020年7月号 |
2023年11月18日から、発行から1年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
| パンが私の人生を豊かなものに - 一粒の麦から56(文・本行恵子) | |
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趣味の世界からパン業界へ
新型コロナウイルスの影響で思いもかけなかった生活が続き、手つかず状態だった仕事関係の資料や写真を整理する毎日です。懐かしい写真や講習会の記録、著名な方々から頂いたお手紙や資料を眺めていると、思い出に浸る時間が多く、一向に作業は捗りません。 パンと一緒に歩んできた私は、とても充実した人生を過ごしてきました。 母から受け継いだ自家製のパンに導かれ、趣味の世界からパン業界へと関わるようになり40年以上になります。 その間に取材した方々から教えを受け、支えて頂きました。勉強会の「JPB(ジャパンプロフェッショナルベーカーズ)友の会」ではプロの製パン技術と精神を、「R・Cアミカルジャポン」ではレイモン・カルヴェル先生を通じて、パンだけでなく、フランスの食文化全体を学ぶことができました。 そしてパンニュース社の創業者、西川多紀子社長との出会いは、平凡な主婦だった私の人生を大きく変えました。入社当時しばらくは社長に同行し、取材の見習いから始まりました。そして数年後には普通では考えられない幸運に恵まれ、世界に飛び出し取材をする機会が与えられました。 パンの源流を訪ねるトルコ・エジプトへの旅から始まり、展示会などで訪れたフランス、ドイツ、イギリス、スロベニア、クロアチア、上海、アメリカ、ポルトガル、スペインなど各国のパン屋さんを訪問しました。 その体験から幅広い人脈と情報を得たおかげで、パンだけでなく料理やお菓子の世界も広がりました。また食の仕事に携わる女性たちの集まり「小正月の会」にも参加し、国内外で活躍される有名な料理研究家、ジャーナリスト、食関連会社社長とも交流が続いています。 一方、若くして亡くなられた方々もありましたが、私の心の中で生き続けています。フランスの食文化をパンとワインとチーズで広めたいと意気込んでいた「スリーブリッジ」(青森県弘前市)の三橋健さん、当時珍しかった石臼挽き小麦粉や厳選素材のバターや卵でパンを焼いていた「レオ・ナイスブレッド」(大阪市)の中村誠一郎さん、オーストリア、トルコで現地のパンを研究しチロル風の山小屋に大きな石窯を自分で作った「バック・ハウス・インノ」(山梨県北杜市)の猪原義英さん、北海道のパン職人の勉強会「ベーカリークラブN43°」のリーダーとして活躍した「ムーラン・ド・ギャレット」(札幌市)の渋谷英樹さん、地産地消のパイオニア「ブノワトン」(神奈川県伊勢原市)の高橋幸夫さん、地元鉾田市を盛り上げる地域活動に尽力した「大堀本店パン」(茨城県鉾田市)の大堀弘二さん、皆さんまだまだやりたいことがたくさんあったのに早すぎました。残念です。でも彼らが大地に蒔いた種は実り、次世代に受け継がれています。 そして、今の私の願いは、誰も取り残されることのない持続可能な製パン業界の実現です。皆さんが力を合わせ、ひとつになって作り上げて頂きたいと思っています。 連載の最終回を迎えて この連載がスタートしたのは2011年5月号です。あっという間に9年が過ぎてしまいました。本誌の編集発行人、小平隆一社長からお声をかけていただいたおかげで、様々な出会いや体験を紹介する、やりがいのある仕事をさせて頂けたこと、感謝です。しかし私自身の人生もそろそろ終盤を迎え、残された時間をどのように使うか考えています。 昨年訪問したブラジル・アリアンサで過ごした自給自足の体験も、生き方を考え直すきっかけになったのかも知れません。 以前西川社長から「引退したら今まで取材した全国のパン屋さんを訪問しようと思う。カバン持ちでくる?」と言われた言葉を思い出しています。 コロナが収束したらこれまで繋がってきたたくさんの友人を訪ね、その後の人生を語り合いたいと思います。 いつか皆さんにもお会いできる日を楽しみに。 本行 恵子(ほんぎょう けいこ) パンと食のライター。家庭製パン教室を10年間主宰した後、パン業界専門誌『B&C』の編集記者、編集長として勤務。16年間の在職中、日本各地のリテールベーカリーや欧米、アジア諸国を訪問し、パンと食文化を取材。現在はフリーの立場で、業界専門誌や企業ホームページでの執筆活動、業界関連団体への企画提案などを行っている。ライフワークは、パンのある食卓の提案。 |



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