どうしてますか、店の宣伝 - ブランスリー電子版


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特集/2016年11月号

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どうしてますか、店の宣伝




受け身から脱出、個人店の味を発信していく - ベーカリーハレビノ
千葉県柏市のベーカリー「ベーカリーハレビノ」の外観。店の前を帰宅途中の小学生の列が通ったり、外で遊んでいる子供達の姿が見られたりすることもある
人気の「幸せのバナナパン」(1本税別500円、ハーフ税別250円)
人気の「農家サンド」(税別420円)
「ベーカリーハレビノ」の店内の様子
売場にある「幸せのバナナパン」の紹介ボード
店舗入口の横には人気の「農家サンド」(税別420円)を紹介する垂れ幕がかかっている
オープン以来、3つの方法で集客
 千葉県柏市のベーカリー「ベーカリーハレビノ」は、ベーカリーのプロデュース会社に勤めていた店長の上野公之さんが2014年6月に一念発起して開業したベーカリーだ。人口が増加する柏市内の住宅地にあり、付近には小学校や幼稚園、保育園などがあるため、店の前を帰宅途中の小学生の列が通ったり、外で遊んでいる子供達の姿が見られたりすることもある。
 店内は広めのイートインカフェスペースを備え、キッズスペースも設置。子連れの主婦も入りやすいようなレイアウトを意識して作っており、地元、柏の農家とコラボし地元の野菜を挟んだ「農家サンド」シリーズや生のバナナを丸ごと2本練りこんだ「幸せのバナナパン」(税抜1本500円、ハーフ250円)などの人気商品のほか、イートインカフェでトーストもできる食パンやサンドイッチ、総菜パン、菓子パン、ハード系まで丁寧に手作りした味にこだわった様々な商品が並べられている。来店客は主に店から1キロ以内に住む住宅街の家族で、特に若年世代の主婦が多いという。
 「オープンから2年経ち客はだいぶ定着し、今では9割以上が常連の方です。ただし、まだ新規客を取り込む伸びしろはあると見ています。駐車場もあるので遠方の方も含め、まだまだ当店の知名度を上げていきたいですね。それには店の情報を広く発信していけるかどうかで決まると考えています」と上野さんは話す。
 同店はオープン以来、主に3つの方法で集客を行ってきたという。1つはネットなどを通じて拡散する口コミ。2つ目は紙媒体である地域情報誌への広告出稿。三つ目は店舗の外で行うイベントへの出店だ。それぞれ微妙にターゲットが異なっており、ネットは若い子育て世代の主婦など、地域情報誌は年配層、イベントへの出店は店から1キロ以上離れた遠方の場所に住む人達が、それぞれターゲットだ。
 「現在、多くのベーカリーが宣伝や店の情報発信に関しては受け身になりがちです。それぞれがせっかく付加価値のある良い商品を作っても、それが消費者に届かなければ店の売り上げを伸ばす事はできません。とてももったいない事です。消費が冷え込んで、ベーカリーの競合相手がコンビニになりつつある今、個人店でしか作れないパンの魅力を伝えていくための行動をとっていきたいと思います」と上野さんは話す。

入りやすい店づくりが宣伝になる
 同店のすぐ裏手のほうには産婦人科の病院があるため小さな子供を連れた主婦や妊婦の女性などが訪れる事も多いという。実は上野さんは開業当初から、立地条件を分析する際にこうした事も予測し、カフェを兼ね備えてベビーカーも入りやすい店づくりのため45坪という広めの物件をあえて探したという。また場所は駅から若干遠い住宅街の中を選んで、目的買いで来る客を集客の主な対象とした。その結果、今、同店は「ママ友」同士の交流拠点にもなっている。
 販促の企画などを行う店舗プロデュースの専門スタッフとして半年ほど前に入社したという岡野真美さんは同店近隣地域の「ママ友」同士の事情に詳しいという。
 「例えば病院で同じ日に子供を産んだお母さん同士が、その後もSNSを通じて交流を続け、オフ会の時に当店のカフェスペースを利用してくださったりしています。こうした中で店の情報がSNSなどの口コミで拡散する効果は大きいですね」(岡野さん)
 そのためお母さん達が入りやすいような店づくりを心がけており「駅前のスタバには入りにくい子連れ主婦の方達も、ここなら安心して入れて友達とも会えると思います。そうした中でおいしいパンを提供し季節ごとに新商品も出し、売り場も工夫し、店の事に興味を持ってもらうようにすることが、結果的に当店の宣伝になっていますね」(上野さん)
 毎月定期的に開催している親子向けのワークショップも評判が良いという。農家とコラボした「農家サンド」やスムージーを作るワークショップなどを開催してきたが、「普段の接客ではなかなか話せないようなところまで話し、直にコミュニケーションをとることができたという実感があります。自然な形で当店に興味をもってもらえることにもつながっていますね」と上野さんは話す。



店内にはキッズスペースも設置されている
ティーバック販売のコーナー。ノンカフェインの商品などが人気だ
店のショーウィンドウからは店内の様子が良く見えるようになっている
店内は広めのカフェスペースを備え、子連れの主婦も入りやすいようになっている
「ベーカリーハレビノ」のフェイスブックの画面
一致団結し店の情報を外部へ発信
 実は上野さんは今年の4月、千葉県で初のパンの祭典である「柏の葉パンフェスタ」を企画・主催した。柏市内とその近隣のベーカリーを中心に15店舗が出展し、マルシェ形式で様々な目玉商品の販売を行うというもので、1日で約5000人が来場、大きな反響をよんだ。
 「やってみて感じたのは、皆、実は店の情報を積極的に外部へ発信できる場を探してはいたが、思い切ったことができず、そのままきてしまったという店が思いのほか多かったという事です」(上野さん)
 1日のイベントで出展料は1店につき5000円だが、破格の値段と言われることが多いという。「普段の自分達の商圏から離れた場所も含めて広く店の知名度を上げる事ができるので、参加する価値は高いと考える店が多いようです」(上野さん)
 店舗プロデュース担当の岡野さんは「第1回に参加した店舗さんはイベントの運営にも協力的で、終わってからも『第2回があれば参加したい』など色々と問い合わせを受ける事が多いんです。イベント当日に買えなかった商品をその後店まで来て買いにきてくれたお客様がいたという声も聞きました」と話す。
 第1回の開催が大変好評だったので、第2回を10月2日に開催する事となり、取材当日はちょうどその準備をしているところだった。
 「皆さんそれぞれ競合であり、どこまで棲み分けできるかはわからないですが、こういった場では一致団結することで、お互いに良い影響を与え合うことができるのではと思います。今後も半年に1回位のペースで開催していきたいですね」(上野さん)。



店長の上野公之さん(左)と販促企画や店舗プロデュースを担当する岡野真美さん
「第2回柏の葉パンフェスタ」でのハレビノブースの様子。農家サンドは20分で200個完売した
第2回柏の葉パンフェスタのチラシ
地域情報誌のクーポン付きのチラシ
発信の手段を絞り込み過ぎない
 上野さんは以前、ベーカリーのプロデュース会社に8年ほど勤めていたことがある。個人店のベーカリーの開業を目指す様々な人の相談にのる仕事だった。上野さんが勤め始めた初期の頃は、開業したばかりのベーカリーの集客・宣伝の方法は、まだチラシなど紙媒体が主流だったという。
 「ただし徐々にネット活用の波が大きくなっていきました。それでも紙媒体のほうも一定の需要があるのです」と上野さんは話す。同店は地域情報誌へのクーポン付きの広告を年に数回出しているが、年配者には昔ながらの紙媒体から離れられない層がいるため、一定の露出は必要なのだという。
 一方、ネットでの発信は、今ではHP、LINE、ツイッター、フェイスブック、インスタグラム、メルマガ、ブログと様々なツールがあるが、そのどれに偏ることなく、色々なツールで情報発信ができるようにすることを重視している。
 「紙にしてもネットにしても、ツールを絞り込みすぎず、発信の手段を広く持つことが、お店をより広い層の人に知ってもらえることにつながります」(上野さん)。
 目下、専用のアプリをダウンロードしたスマートフォンがレジではポイントカードになり店の情報が定期的に発信されるようにもなるサービスを準備中だ。年配の人でSNSはやっていなくてもスマホは持っているという人が割と多いので、より広い範囲で情報を届ける上では効果が期待できるという。

ベーカリーハレビノ
〒 277-0023 千葉県柏市中央2-11-13
電話04-7166-7166

ブログやアンケートで目的買いの客を取り込んだ - トーチドットベーカリー
JR蒲田駅から線路沿いに徒歩10分ほどの場所にあるベーカリー「トーチドットべーカリー」
店の看板は、すぐ近くを通る電車の窓からもはっきり見える
「コンシェルジェデスク」ではパンに関する様々な質問や相談などを受ける
店のコンセプトに合わせて少し薄暗くした空間に松明(たいまつ)のようなほのかな灯りを灯した店内
食パンの「松明」(税別260円)は乳製品や卵を使わず、小麦本来の甘さを引き出し、湯種製法でもっちり感を出した味わい
フェイスブックも立ち上げ、新商品や営業日などの情報を発信
開店4カ月前にブログを開設
 「キャンプファイアーの松明(たいまつ)の灯を中心に、この街の人々が集まるような、そんなイメージの店を目指し松明を意味する『トーチ』を店名に取り入れたこの店をオープンしました」と話すのは、東京・大田区のJR蒲田駅から線路沿いに徒歩10分ほどの場所にあるベーカリー「トーチドットべーカリー」の代表を務める川端慎之介さん。同じく代表で学生時代からの友人である松本喜樹さんとともに2015年1月にこの店をオープンした。川端さんは蒲田に長く住み、松本さんも蒲田に住んでいた時期があり、この地は二人にとって思い出深い街だ。
 「蒲田は昔ながらの商店街があり、和菓子屋さんや和食の食材の店などは多いのですが、ベーカリーは見かけないなと思って、馴染み深いこの街で新しいことをやってみたくなりました」と川端さんは話す。友人の松本さんは、社会人になってからは、某大手ベーカリーチェーンに入社し、10年間パンの製造のほか店舗運営などの業務を経験。川端さんはホテル業界に入り、人事、総務、情報システム、現場のコスト管理、レストランサービスなどホテルに関する業務を12年間幅広く経験した後、松本さんと一緒にベーカリーを開業することを考え、2年前に脱サラした。
 開業にあたって、物件を利便性の高い駅前の商店街の中ではなく、線路沿いのこの場所に決めたが、その代わり、いかに集客のための宣伝をしていくかを考え、綿密な計画を立てたという。
 「駅から少し遠いとはいえ、隣にスポーツクラブがあり有名な『タイヤ公園(西六郷公園)』も近くにあること、また線路沿いなので店の姿が電車からはっきり見えることなどからここに決めました。ただし目的買いのお客様を取り入れるためには、やはりこちらから何らかの形で当店の事を知ってもらえるよう、情報発信をしていかなくてはなりません」(川端さん)
 そこで目的買いの客を取り入れるため川端さんがしたことは、開店の4カ月前からブログを立ち上げることだった。
 「店の場所が決まって工事が始まったら、入口の貼り紙などを見て『何だろう』と気になってネットで検索してくれる人も多いんです。そんな時に当店の情報を開店前から伝えていけるよう『こんな店をこれから作ろうとしているんだ』みたいな感じで日記風のブログを綴っていました」(川端さん)
 ブログには、川端さんが融資を受けたり、店のレイアウトをコンセプトに合わせて作ったり、ロゴマークを発表したりといったオープンまでの経緯が綴られている。こうした話題作りのような事を地道に積み重ねていったことがオープン前の効果的な宣伝につながった。
 またオープン後は、間口の広い入口上部に取り付けられた看板の「Torch.bakery 店内パン工房 食事パン おやつパン」という文字が傍の線路を通る電車の窓からもはっきり見えるようになっているため、それ自体が宣伝になった。店のコンセプトに合わせて少し薄暗くした空間に松明のようなほのかな灯りを灯した店内や、川端さんのホテル業界での経験からきた発想で設置した「コンシェルジェデスク」も注目を集めていたという。「コンシェルジェデスク」は川端さんがパンに関する様々な質問や相談などを受ける受付窓口のようなコーナーだ。
 また松本さんの職人としての技術力を生かした食パンの「松明」(税別260円)は乳製品や卵を使わず「白神こだま酵母」を使用して小麦本来の甘さを引き出し、湯種製法でもっちり感を出した味わいが評価され、多くのリピーターがついた。
 パンを購入すれば10円でコーヒーを買って休める「ベンチコーナー」と、ドリンクかランチセットを頼めば購入したパンとも合わせて楽しめる「カフェゾーン」を分けて設置したことも同店を特徴づけた。カフェゾーンはベビーカーも入りやすいような広さをとり、ベビーチェアも設置。皆が集いやすい場所にしたいという当初の想いを実現するための工夫を施した。

「カフェゾーン」はベビーカーも入りやすいような広さをとり、ベビーチェアも設置
オープンの4カ月前に立ち上げたブログ。店の情報を開店前から日記風に綴っていた
国産小麦にライ麦と石臼挽き粉をブレンドした「トーチ」(左、税別180円)と「トーチ」にバターとチョコを挟んだ「ショコラ・ブール」(右、税別240円)
ベーカリー「トーチドットべーカリー」の代表を務める川端慎之介さん
入り口前の松明の木をモチーフにした案内のオブジェ
アンケートを兼ねたチラシを配布
 実は、同店では、画期的な試みとして、オープン約1カ月前の2014年12月19日からプレオープンという形で営業を開始していたという。プレオープン中はオーブンの焼成能力を見極めるため1日約30種500個の限定販売をし、12月20日〜30日までを「朝9時半〜午後6時」の営業時間にし、年明け1月4日〜12日までを「正午〜午後9時」として、2パターンの営業時間帯で営業した。
 その時に近隣地域を対象にアンケートを兼ねたチラシを配布し、営業時間は何時から何時までが良いか、定休日は何曜日が良いか、充実してほしいパンの種類は何かといったことを聞いた。
 「異なる営業時間で営業してみて、お客様の需要が高い時間帯を調べました」(川端さん)
 アンケートへの回答のほか、近隣のある一カ所の一日の通行人数を調べ入店者数との対比で出る入店率を確認したりもしたという。
 「通常、ベーカリーの開店直後は一時的に人が沢山来ますから、あまり派手に宣伝しても過剰負担になってしまいます。そこをふまえ、大掛かりな宣伝はせずに、来てくれる方の要望に添える店になって、徐々にオペレーションの許容量を拡大しながら成長させようと思いました」(川端さん)
 宣伝する一方で、客の声にも耳を傾ける。チラシには10%オフや20円値引券配布などのキャンペーンと引き換えにアンケートに記入してもらうようにし、また質問項目には、普段はどこで、どれ位の頻度でパンを購入し、いつパンを食べるか、好きなパンは何かといった質問も取り入れた。
 またフェイスブックも立ち上げ、新商品や営業日などの情報を発信。客側からもパンの感想や店の運営に関する意見などをもらい、よりコミュニケーションが深まるようにした。
 同時にLINEアカウントも開設し、「雨の日クーポン」や「18時以降来店クーポン」なども配信。駅から離れた場所で、雨の日や遅い時間は人通りも減るため、近隣の人の来店頻度を上げる狙いがあった。

原価計算女王
原価計算女王
店の外側からガラス越しに見た店内。煌々とした灯の効果で、幻想的な空間が広がっているように見える
LINEアカウントも開設し、「雨の日クーポン」や「18時以降来店クーポン」なども配信
プレオープン前に作成したアンケートを兼ねたチラシの表側は、プレオープンの概要や営業時間の説明などを記載
プレオープン前に作成したアンケートを兼ねたチラシの裏側(右)はアンケートになっている
ネットとチラシを使い分ける
 オープン後は地道に常連客の需要を掴んでいった同店だが、店舗のオペレーションが安定してきた今、もっと積極的な宣伝、販促活動をしていきたいという。
 「最近はLINEのほうが手軽に使えるためか、普及が進んでいるので、今までLINEはほぼクーポンのみの発信でしたが、これからは広く店の情報を発信していきたいですね。その一方で紙媒体であるチラシの重要性も認識しています」(川端さん)
 蒲田という土地柄、若年世代の夫婦や若者もいる一方で、昔から住んでいる高齢者や熟年世代も多く、そうした層に対してはポスティングなどのチラシがやはり一番効果が高いという。まずは2周年などの区切りに向けて、今後は蒲田駅を挟んで店がある方とは逆の東側の地域にクーポン付きのポスティングなどをする事も考えている。
 催事も現在はオペレーション上の問題があって控えているが、地元・大田区が主催する観光展には出展し、徐々に足場を固めている。
 「起業して一番変わったのは、地域の人達と直で話せるようになった事です。地元に根付いて地域貢献できるような店として今後も成長していきたいですね。そのためには、催事にも徐々に参加していけるようにして、当店を広い範囲でアピールしていきたいですね」(川端さん)。

トーチドットベーカリー
〒 144-0056 東京都大田区西六郷1‐2‐14
電話03-6424-5929


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