顧客のパンの選択範囲を広げる努力 - ブーランジェリー コシュカ - ブランスリー電子版


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お店拝見/2007年11月号

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顧客のパンの選択範囲を広げる努力 - ブーランジェリー コシュカ

カシューナッツとチョコチップを練り込んだ「カシューショコラ」(右)と自家製レーズン種使用の「パン オ ノア」(左)
住所:東京都世田谷区深沢5-23-1
電話:03-3703-5771
営業時間:午前10時〜午後7時
定休日:日曜日(日曜日以外に月1回の不定休日あり)



試食をきめ細かに提供する

大納言を巻き込んだ生地を馬蹄型に成形して焼き上げた「大納言」


店構えは落ち着いた雰囲気だ。


オーナーの秋元英樹さん
 今年7月、東京・世田谷区深沢にオープンしたブーランジェリー コシュカ。東急大井町線・等々力駅から徒歩10分強の場所で、食品スーパーのサミットの向いだ。品揃えは約60品目で、6坪ほどの店内には、焼き色の濃い本格的なハースブレッドがセンスよく陳列されていた。一方で、「チョココロネ」(140円)や「メロンパン」(120円)など、菓子パン類も多く並んでいた。
 「この地域の人たちがどんなパンを求めているのか。また、この地域の人たちに自分としてはどんなパンを食べてほしいのか。そんなことを考えながらオープン以来、いろいろと悩んできました」とオーナーの秋元英樹さんはいう。
 「オープンまでに自分が納得できるパンが出来なかった」(秋元さん)ことも重なって、それからの3カ月間、試行錯誤の連続だった。商品の入れ替えも頻繁に行ってきた。
 「口溶けや香りが、自分が理想とする状態に中々ならなくて苦労しました。水の質などいろいろな要素があったと思います。窯のスチームの加減を業者に調節してもらったりもしました」
 現在は、オープン当初に比べると、かなり納得できるパンが出せる状態になったという。オープン以降に、顧客の要望に応えて作り始めた商品もたくさんある。主に菓子パン類が多いという。
 「お客様が求めているパンは作っていかなければなりません。でもその一方で、こちらからも提案していかなくてはならないと思うんです」
 「提案の方法は」との質問に、秋元さんは、「試食を提供することです」と即答した。しかし、闇雲に提供するのではない。「もう、お客様の顔は大体わかってきました。そして、どのお客様がどんなパンをいつも買っていかれるのかも、ある程度わかってきたので、例えば、いつも菓子パンを買っていかれる方には、ハード系のパンを、レジで商品を包装して渡すときに、『食べてみてください』といってそっと入れて差し上げるんです。逆にいつもハード系を購入される方に対しては、デニッシュをサービスするとか、お客様によって、提供する試食を変えているんです」(秋元さん)
 秋元さんとしては、食事系のパンを多くの顧客に理解してほしいという思いが強い。バゲットやバタールなどはすでによく売れているそうだ。
 「売れなくても、作り続ける商品があってもいいと思うんです。オープン当初はこのことがよくわかっていなかったような気がします」
 固定客の数もだいぶ多くなってきたという。そして、秋元さんの思いと、顧客の思いがだいぶ馴染んできているように見えた。
 「お客様の期待に応えることができて、店がきちんとまわっていけばそれで充分です」
 秋元さんはあくまで謙虚だった。



「多くの先輩方、仲間達のおかげです」

「オランジュ」や「ブルーベリー」などのデニッシュ類も充実していて、鮮やかな色彩が売り場に華を添えている。


約6坪ほどの売り場には、趣のある木製の陳列台に様々なパンが陳列されている


レジ台にも趣のある木製の台が使われ、温かみのある雰囲気を醸し出している


「アーモンドクッキー」(210円)などの焼き菓子類も製造販売している


ソフトフランスに練乳クリームをサンドした「ミルクフランス」(160円)


カンパーニュ生地に、レーズン、くるみ、オレンジピールを練り込んだ「パン オ フリュイ」


クロワッサンの2番生地を利用した「ケーゼ・シュタンゲン」
 「まだ、完全に納得がいくパンが出来ていません」と秋元さんはいうが、店内に並ぶパンは、一種の風格をたたえているようにさえ見えた。
 「カシュー ショコラ」(180円)は、フランスパン生地に、カシューナッツとチョコチップを練り込んで焼き上げた商品。フランパン生地はオートリーズ法で仕込んでいる。
 「大納言」(180円)は、大納言を巻き込んだ生地を馬蹄型に成形して焼き上げた商品で、秋元さんが以前働いていたペルティエで作っていたものを再現したものだという。
 「ケーゼ・シュタンゲン」(100円)はクロワッサンの2番生地をシート状にして、エダムチーズを折り込んで、紐状にカット、ツイストして焼成。
 「パン オ フリュイ」(300円)はカンパーニュ生地に、レーズン、くるみ、オレンジピールを練り込んだ商品で、ポーリッシュ種を使用。おむすびのような三角形がユニークだ。
 「オランジュ」(210円)や「ブルーベリー」(240円)などのデニッシュ類も充実していて、売り場に華を添えている。
 秋元さんは、独立前は、ユーハイムやペルティエなどで合計で12年間修業を積んだ。特に、志賀勝栄氏(ユーハイムやペルティエなどで活躍し、現在は、世田谷区三宿で「シニフィアン・シニフィエ」の総指揮をとる)の下で働いた期間が長く、大きな影響を受けた。同じく東京・世田谷区の有名店、ベッカライ・ブロートハイムでも働いたことがある。
 「いろいろと悩んでいたときには、多くの先輩方、特にブロートハイムの明石さんには、本当にお世話になりました。パンを持ち込んで見てもらったこともあります。今こうして、やっていられるのはそうした先輩方、そして仲間達のおかげです」と秋元さん。
 同ベーカリーの現在の日商は平日が約8万円、土日が約10万円。今後秋の深まりと共にさらに伸ばせれば、と秋元さんは考えている。
 店舗面積はおよそ22坪。そのうち、売り場がおよそ6坪、厨房がおよそ10坪で、残りは材料などをストックするスペースなどだ。スタッフは、製造が秋元さんを含めて2人。販売は専属が常時1人で、製造スタッフもなるべくレジに立つようにしている。



対等で良好な関係

取材メモ 顧客の思いと、店の思いが何らかの形でかかわりあって、初めて商売は成り立つ。顧客から店への一方通行でも、逆に店から顧客への一方通行でも駄目だ。コシュカの秋元さんは、まずは、顧客の声を聞き、その要望に積極的に応えた。しかしそのあとで、もしくはそれと並行して、店側の思いを伝える努力も続けている。顧客と店、どちらが主でも従でもない。あくまで対等で、良好な関係を築けてこそ、真の商売繁盛があるのだ。

原価計算女王
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