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3日に1度食べ続けられるパンが理想形 - 普通のパン屋さんが普通に頑張れば繁盛出来る話 |
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繁盛店のパンを購入して食べてみると、多くの人は美味しいと感じます。味覚は人それぞれで、味の好みはありますが、繁盛店のパンは多くの人達に愛されているのです。では、美味しさとはそもそも何でしょうか。 私が今一番美味しいと思うのは、自宅から徒歩約10分の最寄り駅の近くにある小さなベーカリーのパンです。客が3人入ったら一杯になってしまうような小さな売り場で、パンはショーケースに入れて、対面方式で販売しています。販売員は、いつも2人いて、同時に2人の客に対応できる体制です。すいているときは1人の時もあります。あんぱんやクリームパンなどの菓子パンから、バゲットなどのハード系まで品揃えは幅広いのですが、アイテム数はそれほど多くありません。 味は、美味しさがすーっと身体に溶け込んでいく感じです。攻めてくる美味しさではなく、食べる人を無条件で優しく包み込むような美味しさです。 パンを作っている職人さんはおそらく1人で、見た目40歳ぐらいの感じです。厨房から出てきたときや、店の外のベンチで休んでいるときなどに見かけると、「いらっしゃいませ」と挨拶してくれるのですが、そこからは誠実な感じが自然に伝わってきます。 販売員は、そのパン職人の母親であると思われる女性を中心に、近所に住んでいると思われる女性のスタッフたちで固めています。パン職人の母親であると思われる人は、しっかりもので芯の強い女性であることが表情から読み取れます。接客態度は、普通の気が利く女性が丁寧に応対している感じで、プロっぽさがないところが、逆にいい感じです。 私は都心に出たとき、その先々で有名店に立ち寄ってパンを購入しますが、やはり有名店だけあって、パンは一級品です。ただ、美味しさの質が、前述の私の最寄駅近くのベーカリーとは違います。都心の有名店のパンの多くは、ブランドを背負っているせいもあってか、ぐいぐいと攻めてくる感じの美味しさなんですね。久しぶりに食べると、その過剰なまでの積極性も、心地よい刺激になるのですが、2〜3日おいただけで再び食べると、その積極性の陰に隠れていた、味の粗さ、生々しさなどが、浮かび上がってしまうことがあります。憧れの女性との3回目のデートで、ふとした瞬間に、かかとの靴づれを見てしまったような感じでしょうか。 美味しさにも色々な種類があると思います。多種多様な美味しさを、人それぞれの感性で楽しめばいいのだと思うのですが、私はやはり、頻繁に食べても飽きない、ほころびが見えずらい美味しさが、商圏を絞った小規模ベーカリーが目指すべきものではないかと思います。相手を包み込むような優しい美味しさは、パン職人や販売スタッフの人柄や店の雰囲気などにも関連したものです。そうしたものがパンの味と一体となって、客の心の中に、店へのゆるぎない信頼感を生み出していくのだと思います。 パンは庶民の日常食と考えるなら、毎日とまではいわないまでも、せめて3日に1度食べたとしても、違和感なく食べ続けられるような味を目指すべきで、そのためには、まずは店のスタッフが、3日に1度自店のパンを食べ続けられるか確認してみるのがいいと思います。(RO)
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