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| パン工場の生産性(1)／2001年7月号 |
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| リエンジニアリング、労働生産性
Writｔen ｂy Yasumasa Hironaka
弘中泰雅 テクノバ�蠎卍后’棲愬郢痢｜羞�製パンメーカーの研究課長、製造課長を経て、１９８７年、船井電機�蠅貌�社、世界初の家庭用製パン器の開発に中心メンバーとして従事。その後、電化部門技術責任者。 この間世界のトップレベルの生産性を誇る、フナイプロダクションシステム（ＦＰＳ）を修得。１９９９年、製パン工場生産性向上について研究を開始。２０００年、生産性向上のコンピューターソフト開発会社テクノバ�蠅鮴瀘�。ホームページアドレスは、http://www.technova.ne.jp/ |
| 生産性がいかにパン企業の経営を左右するか！ | |
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パン製造業とはパンを製造する企業である。製造業というからには省くことの出来ない行為がある。もの作り、即ち生産するという行為である。もの作りには「新製品を開発する」ことと、「その製品を効率よく生産する仕組みをつくる」側面がある。
「新製品を開発する」ことについては、どこかに売れる商品がないか、多くのパンメーカーが耳をそばだて、目をこらし、その結果コピー商品が巷にあふれるくらい熱心である。それがパン業界の現状であろう。もうひとつのもの作りである「製品を効率良く生産する仕組み作り」に関してはどうであろうか。本連載では、この「効率よくパンを生産する」ことに着目して考えていく。 生産性とは… それでは生産とは何か？ 「生産とは人（労働）、設備、物（原材料など）、金に、情報を加えたものから、顧客にとって有益な商品を生み出す付加価値を高める活動」と定義できよう。したがって、効率よく生産するとは、労働、設備、原材料などの投入量と、これから作り出される生産物の産出量の関係が良いことであり、生産性と呼ばれる。そして生産管理とは生産の立場でみた管理、すなわち、生産をマネジメント、あるいはコントロールするという意味合いである。生産の活動においては、種々の変化や予期できないことが常に発生するので、生産管理とは、変化に応じて生産に必要な生産要素の活動を計画（Plan）し、実行（Do）して、チェック（Check）およびアクション（Action）することである。すなわちPDCAサイクルを用いて、生産活動を効率的に実施するための管理技術である。 リアルタイムの生産管理 生産の効率化を図る対象である三大管理特性は、品質(Quality)、コスト(Cost)、数量･時間(Delivery)である。生産管理は広くはこれら三つの特性を対象とするが、狭義にはDeliveryを対象とする。 Deliveryを対象とする管理といっても、(1)戦略レベル（年単位の期間の事業そのものの管理）(2)戦術レベル（月や週を単位とした生産計画）(3)業務レベル（日、時間単位の実際の製造着手時間、順序の決定）があり、生産管理といっても数年を要するものから、リアルタイムで対応を要求される問題がある。企業の競争力の観点において、Deliveryの重要性のキーワードは時間競争である。時間競争とは、変化の大きなマーケットに対し、開発、製造、販売がいかにタイムリーに出来るかの競争である。 生産の効率化に取り組む方法 生産の効率化に取り組む方法として、現状の条件の中で最適な方策を考える方法と、条件そのものを革新する方法がある。例えば製造のリードタイム（段取時間＋加工時間）はそのままにして、最適なスケジューリングをする事により、生産量（スループット）を増加し、作業完了時間（メイクスパン）を最小化する事は前者にあたり、ステータスクオと呼ばれる。 後者は段取作業の改善、自動化設備の導入、冶具の開発により作業・段取時間を短縮し生産量を増加させる、ブレークスルーである。これに対し、日常的にPDCAサイクルを回しながら、製造条件などを変更し、生産性を向上するやり方がある。即ち現実を観察し、問題を発見して対策を繰り返すことで、生産性を上げていく方法はジャストインタイム（JIT）に代表され、改善と呼ばれるわが国で生まれた概念である。 生産を取り巻く環境は常に変化に晒されているので、高額設備投資によるブレークスルーを行なっても、時間と共に機能の低下をきたし、機能を維持する為には改善を続けることは必須である。 リエンジニアリング 図１はステータスクオ、改善、ブレークスルーの関係を示す。これらは生産性の向上に必要な要素である。狭義の生産管理はステータスクオの取り組みであり、様々な数理的な問題解決が可能になっている。これらの三つの視点を持ち、新たな発想で抜本的に改革し、問題に応じて今どうすればよいか定め、生産性を向上させていかなければならない。即ちパラダイムの変化に対応して、リエンジニアリングにチャレンジしなければならない。 労働生産性 生産性が良いということは、労働、設備、原材料が効率良く生産に利用されるということであり、労働生産性が良いということは、投入される労働力が効率良く生産に利用されるということである。特にわが国は最も人件費の高い国であり、多くの産業が労賃の低い中国などの国々に工場を移すなどの現実がある点からも、労働生産性の向上は極めて大切である。現状パンは生鮮食品であり、消費地の近隣で生産されており、簡単に海外に脱出するわけにはいかないので、この点からも労働生産性を高める必要がある。 パン企業と労働生産性との過大な関係 それでは労働生産性がいかに、パン企業の経営に決定的な要素になっているか、見てみよう。 表１は平成１１年発行の「中小企業の原価指標」をもとに作成したパン製造業の製造原価指標である。パン企業の１０社のうち、健全企業と欠損企業に分けて、それぞれの製造原価を１００とした時の内訳である。 即ち同じ出荷金額の場合、健全企業は直接労務費が２６・５％であるのに対して、欠損企業は４０・３％に達している。平たく言えば消費者は工場出値１００円のパンを買ったとき、健全企業のパンの場合、人件費分として２６・５円、欠損企業のパンを買った時は４０・３円ほど支払っていることになるわけだ。そのことは自ら材料費の差になって現われ、健全企業のパンは５４・１円の材料が使用されているが、欠損企業のパンは４３・４円の材料しか使用されていないわけである。このことは欠損企業のパンは健全企業のパンに比べて、小さいか、安い（低品位の）原材料から作られるしかないわけである。これでは売れない。売れなければますます経営を圧迫する。欠損企業、利益の出ない企業は、労働生産性を上げて、労務費を削減するしか、健全企業に変わる道がないことは明らかである。いかに労働生産性が大切であるかがわかる。 |
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