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特集/2017年12月号
パンの機械選び備忘録 これは成功だった あれは失敗だった

 リテールベーカリーにとってパンの製造機械は最も大切なもののひとつだ。職人の手足となって、職人の感性に忠実に従って働いてくれなくてはならない。今回の特集では、ベーカリーの職人たちに、パンの製造機械の選定でこだわった点や、現時点での反省点などについて取材した。

低温長時間発酵のための冷蔵庫 - クーロンヌ とりで
クーロンヌジャポンの
田島浩太社長
茨城県取手市のベーカリー「クーロンヌとりで」の外観
毎回の修理費の高さに不満を覚える

 茨城県と栃木県にベーカリー8店舗、ピッツェリアとペンションを各1店舗経営するクーロンヌジャポンの田島浩太社長。これまでの23年間のベーカリー営業の中で、機械全般について思うことは、修理費の高さだという。
 「複数の店舗を営業していると、オーブンやミキサー、冷蔵庫などの故障に直面することはそう珍しいことではありません。それぞれ購入したメーカーに修理をお願いするのですが、修理賃の高さにいつも驚かされます」(田島社長)
 修理でかかる費用について、項目ごとに確認しても、納得し難いものがあるという。
 「故障した機械のメーカーにしか直すことができませんので、ほかに選択肢がないんです。毎日の売上がかかっていますから、すぐに使える状態に直すのに、迷っている間もないんです」(田島社長)
 オーブンなどの大型機械は、買い替えは滅多になく、ほとんどの店が開業時の一度きりだ。しかし複数店舗を営業する同社は、新店オープンのたびに購入を重ねてきた。
 「修理時の対応や、日頃のメンテナンスに満足できるかどうかは、次に購入するときのメーカーを選ぶ基準になります。特にオーブンは一番高価なものですし、使い続けていくためにメンテナンスが大事です。メーカーと長く付き合っていくことになりますから、慎重に選ぶ必要があります。選ぶときは、4社くらいを比較して決めた方がいいですね」(田島社長)

焼きたいパンに適格なオーブンを選ぶ

 オーブンは、ドイツのメーカーや日本のメーカーなど3つのメーカーのもののいずれかを、全店にぞれぞれ導入している。
 「オーブンを選ぶときは、自店のスタイルを判断した方がいいですね。ハード系を多く提供していきたいのか、それとも、菓子パンや焼きこみ調理パンなどのソフト系を多く焼いていきたいのか。ハード系をうまく焼こうとすると、ヨーロッパのメーカーや、特別なオーブンが必要になってくると思います。通常のものより、1・5倍は高額になってしまいますね。オーブンは、一番高い機械ですから、もしハード系を重視しないのであれば、貴重な開業資金をそこまでオーブンに充てる必要はないかと思います。また、20〜30年前は、ヨーロッパのメーカーと日本のメーカーのオーブンはかなり差がありましたが、最近は日本のメーカーのものがかなりよくなってきているので、実際テストして検討するのがいいと思います」(田島社長)
 ミキサーも、オーブンと同様にパンの品質に大きく影響する機械だという。
 「ミキサーがどのような構造をしているかが、生地の仕上がりにとても影響しますね」(田島社長)

冷蔵庫を増やし、分割機を新たに導入

 今年つくば店で台数を増やした機械がある。パン生地用の冷蔵庫だ。
 「低温長時間発酵が必要なパンの比率が増えてきたことや、生地の状態でストックすることが増えてきたことなどから、冷蔵庫を増設しました」(田島社長)
 しかし厨房には、新たに冷蔵庫を設置できる空きスペースはなかった。
 「食洗器が壊れたのを機に、食洗器を取り払い、その場所に冷蔵庫を入れました。食洗器より、冷蔵庫を増やす方が、効率アップに繋がるからです。ただ、冷蔵庫は、温度が下がらなくなってしまったり、故障する頻度が一番高い機械かも知れません。メンテナンスが特に重要になってきますね」と田島社長。
 そして、つくば店では、新たに分割機を導入した。「分割機は、人件費削減の目的で入れました。高価なのでこの決断には多少勇気が要りましたが、入れたメリットはかなり実感しています。分割機もとても進化していて、生地をノンストレスで分割できますし、パートのスタッフでも簡単に作業できます」(田島社長)
 ほかの店舗でも今後、生産量の多い店舗から順に、分割機の導入は検討していきたいという。

SHOP DATA
住所:〒302‐0034 茨城県取手市戸頭2‐12‐13
電話:0297‐78‐6321
営業時間:午前6時30分〜午後7時
定休日:水曜(水曜が祝日の場合は営業)
品揃え:100品目
月商:約800万円

優秀な人材がいてこその機械導入 - パンステージ プロローグ
オーナーシェフの山本敬三さん
神奈川県横浜市のベーカリー「パンステージ プロローグ」の店内
信頼できるメーカーにリールオーブンを注文

 神奈川県横浜市のベーカリー「パンステージ プロローグ」は19年目を迎えた昨年、厨房を増築してまで新たに導入した機械がある。特注したリールオーブンだ。
 同店は、炉内に溶岩を使用した溶岩窯を開業当初から使用している。オーナーシェフの山本敬三さんは、溶岩窯の良さを実感しており、リールオーブンも、溶岩を使用したものを特注した。
 「溶岩窯は、遠赤外線でパンの中心まで一気に温度を上げられるという点がほかのオーブンとの最大の違いですね。講習会などでほかのオーブンを実際に使うことがあるので、違いがよくわかりますし、良さを実感できています。今回リールオーブンを特注したメーカーとは、18年前に初めて溶岩窯を作ってもらってからの付き合いなので、信頼関係がありましたから、いろいろと要望をまとめて、希望のオーブンを作ってもらいました」(山本さん)
 同リールオーブンは、食パンだけでなく、スチームを入れる機能も付けているので、フランスパンなどのハード系もしっかり焼くことができるという。 
 「あらゆる種類のパンが焼ける万能性があります。ファンも付けてもらったので、ラスクなど時間がかかるものも、一度に大量に焼くことができます。また、窯の開閉部分が腰の位置にあるので、女性スタッフにも作業しやすいようにできています」(山本さん)
 焼成時間も短く、一度の焼成で焼ける量も多いという。
 「平窯と比較するとかなり効率がいいですね。例えば食パンだと、平窯は40〜50分かかるところが、リールオーブンだと25分程度で済みますし、一度に入れられる本数も、平窯の倍近い60本ほど入ります」(山本さん)
 リールオーブンはかなり高額ではあったが、製造効率を劇的にアップできたことによって、その価値は十分に発揮できている。

機械導入の最大の目的は従業員の労働環境改善

 リールオーブンの導入とともに、ドウコンも3台増やした。
 「食パンは、生地の丸めまでを前日にやっておいてドウコンに入れておき、翌朝は、すぐに成形して焼成できるようにするためです」(山本さん)
 食パンのほかにも、ドウコンでオーバーナイトさせる製法をとるアイテムを増やしている。
 「種ものが増えてきている傾向もありますが、従業員の朝の出勤時間を遅らせることが最大の目的です」(山本さん)
 山本さんは、従業員の労働環境の改善に開業当初から意識的に取り組んでいる。厨房の増築後の昨年12月、同店から車で5分ほどの東急田園都市線たまプラーザ駅前に、「プロローグパサージュ たまプラーザ駅前店」をオープンしたのだが、同店には厨房はなく販売のみとなっている。販売店を開業したことも、従業員の労働環境の改善目的なのだという。
 「労働時間を減らして休みを増やし、賃金アップするためには何が必要か、逆算したんです。従業員の負担を減らしていかに売上げを上げるかを考えなければなりません。厨房を作ればまた人手がかかります。厨房なしの販売店で利益を出し、その利益を従業員の福利厚生に充てて改善しようと考えました。そこで、製造効率アップと労働力削減を可能にするリールオーブンの導入やドウコンの増設、厨房の増築へと至ったんです」(山本さん)
 販売店の初年度の売上げは好調で、予想を上回るほどの売れ行きだったが、それにも対応できる製造能力があることを確認できた。
 「機械を入れてどれだけ厨房環境を充実させても、結局それを扱うのは人です。リールオーブンも、一人前の職人でなければ扱えません。当店なら、3年以上の経験がある人なら、ある程度使いこなせると思います。というのも、3年で一人前に育てることを念頭においているからです。入社一年目でもほかの従業員と同じことをしてもらいます。失敗しても、投資と思わなければ、優秀な職人は育ちません。優秀な人がいなければ、機械があっても意味がありません」(山本さん)

SHOP DATA
住所:〒225‐0001 神奈川県横浜市青葉区美しが丘西1‐3‐1
電話:045‐902‐7879
営業時間:午前6時〜午後7時
定休日:なし
品揃え:平日は280品目、土・日曜は300品目
日商:平日60万円、土・日120万円

ソフトなパンが焼けるオーブン - ぱん工房 桜道
店主の鴻巣邦治さん
千葉県松戸市のベーカリー「ぱん工房 桜道」の外観
和風のパンを焼くためにオーブンは特注で頼んだ

 千葉県松戸市のベーカリー「ぱん工房 桜道」は一軒家の建物の1階部分が和風のお茶屋さんをイメージした店舗となっている全体的に和のイメージで統一したベーカリーだ。
 商品構成も和風のパンの特徴を出したものが多く、全てのパンにライ麦から起こした自家製の天然酵母を使用。あんパンやクリームパンなどソフトな菓子パンを主力としている。また医食同源との思いから漢方薬にもよく調合される生姜を練り込んだ「生姜入り食パン」なども好評だ。そんな同店だが、開店時から現在まで、製造は店主の鴻巣邦治さんのみのほぼ一人体制で行っている。2007年の同店オープン時、鴻巣さんは開業資金の50〜60%をパン製造のための機械類購入に費やしたという。
 買ったのは、オーブン、ミキサー、ホイロ、ドウコンディショナー、リバースシーター、天然酵母発酵器など。オープンから半年後にミニモルダーも買った。冷蔵・冷凍庫は、内装を頼んだ設計・施工会社が一緒につけてくれた。
 購入した機械のうち、中でもオーブンには最もこだわった。
 「和風のソフトなパンを主力にしたかったため、国産の窯を選びました」(鴻巣さん)
 選んだのは4段のデッキオーブンだ。ただ鉄板を横に2枚差しのものにしたかったため特注で頼んだ。200万円位かかった。
 「2枚差しですと、前と後ろに入れるタイプはあったのですが、横に並べたものはありませんでした」と鴻巣さん。製造を一人で行うため、焼きムラがないよう前後の鉄板を途中で切り替える手間を極力省きたかった。そのために鉄板を横に2枚並べる形にしてもらったのだという。
 「当店の主力である、あんぱん、クリームパンなど丸い形の和風の菓子パンを、程良い柔らかさで焼き色をつけられるように、手間なく大量に焼き上げるためには必要でした」(鴻巣さん)
 購入したオーブンは、鴻巣さんが通った製菓・製パンの専門学校でも使われていて馴染みがあった。
 「4段でそれぞれ温度設定できるオーブンは、厨房の広さに限りがある中では便利です。特注でも輸入品に比べれば安く済み、自分にとってはベストな選択でした」(鴻巣さん)

ミキサーはドラゴンフックが必須

 一方、オーブン以外の機械類はある展示会に出品されていた某メーカーの型落ちの商品を購入させてもらった。
 中でも縦型ミキサーでドラゴンフックのものを入れることができたのは大きかった。
 「口どけのいいパンを店の個性として出したかったので、ミキシングがしっかりできることにこだわりました。フックが一直線だと生地を下に落とす必要がありますが、螺旋型のドラゴンフックだと自然と落ちるので、生地が滑らかな状態になりやすく、自分が理想とするパン作りに適しているのではと思いました」(鴻巣さん)
 また食パンを均一に成形するのに必要なモルダーは、開店当初はなかったが、さすがに一人で全て成形し続けていくのは難しいと考え、半年ぐらい経ってから買い足すこととなった。また、店舗のレイアウトは白紙の図面から自分で何回も書き直す形で鴻巣さんが考えたという。
 厨房のレイアウトは、オーブンは厨房の売り場に近い位置にし、厨房と隣接した棚には売り場に出ずに焼きたての商品を並べられるようにした。厨房内は作業の手順に合わせて全体的にドーナツみたいな動線を作った。
 同店は周りに建物や柵がない一軒家の1階部分に作った店舗のため、店内にいてもその面積の割には開放感を感じる。店の前にもう一台分位、駐車スペースがほしいと思うこともあるそうだ。
 それからオーブンは初期投資がかかるので、当たり前のように電気オーブンにしたが、光熱費がそれなりにかかっている。
 「今後電気代が値上げされていく事を考えると、ガス式のものも多少話を聞くくらいはしておいても良かったかもしれません」と鴻巣さんは話していた。

SHOP DATA
住所:〒270‐0021千葉県松戸市小金原8‐28‐20
電話:047‐702‐3480
営業時間:午前10時〜午後5時30分
定休日:水曜
品揃え:30種類

本当に必要な機械に絞って購入 - ブーランジュリー ドド
店長の本行多恵子さん
千葉市稲毛区のベーカリー「ブーランジュリー ドド」の外観
目標に合わせて機械を揃えた

 千葉市稲毛区のベーカリー「ブーランジュリー ドド」は、木造2階建てのアパート1階を改装し古いものと新しいものを取り入れた内装とヴィンテージ感漂う外観が印象的な、隠れ家的なベーカリーだ。店長の本行多恵子さんがほぼ一人で製造するこぢんまりとした店で、販売スタッフ2、3人が交代で売場に立つ。
 商品は本行さんが独立前に修行していた東京・丸の内のベーカリーや留学先のフランスで身につけたカンパーニュやバゲットなどのハード系が中心で、近隣の主婦のほか、千葉市内で本格的なハード系の商品が買える店と聞いて遠方からの客も訪れる。
 同店は2011年2月にオープン。その際、本行さんは厨房設備の機械類に計600万円位をかけた。ベーグル屋だった物件に居抜きで入ったので「冷蔵庫のついたコールドテーブルは残してくれていましたが、ミキサー、ドウコンディショナー、オーブンは新品を買い揃えました」と本行さんは話す。
 今後の事を考えるとしっかりとしたものを買い揃えたかったが、予算オーバーするわけにはいかず、売場2坪、厨房8坪の広さの店内でのスペースの制限もあった。
 ただその中で本行さんは「フランスで見て感銘を受けた本格的なハード系の食事パンの魅力を伝えていきたい」という目標からぶれないようなパン作りのための機械・設備を揃えたかった。
 「ミキサーは、ハード系パン生地のミキシングに適していると感じるスパイラルのものにこだわりました」と本行さん。中でも、あるメーカーのスパイラルミキサーは、本行さんが東京・丸の内の有名ベーカリーで修行していた時の上司だったシェフから良品と聞いていたのもあって、店を出す前にそのメーカーの家庭用のミニスパイラルミキサーを使っていた。業務用も性能は十分満足でき、値頃感があると思ったためそのメーカーからの購入に踏み切った。またその際に、そのメーカーを通して、他社のドウコンディショナー、オーブンも3点セットで購入。
 オーブンは、修行先はフランス製のものを使っていて、「品質の高さや使い勝手の良さを感じていましたが、高価なため予算を考えると敷居が高く感じていました」と本行さん。実際に購入したオーブンは、省コストで場所も取らず、天然石を使用した炉床板を採用するなどしていて蓄熱製もあるなど、ハード系のパンをバランス良く焼くための性能面の充実が感じられた。

工夫して無駄のない店舗運営をする

 その後、無事開店し6年以上経った同店だが、機械類の故障は開店から5年目の一昨年、オーブンの蒸気が出なくなった事があったくらいだったという。その際には担当者がすぐ駆けつけてくれて部品交換をし直してくれた。
 本行さんは、開業前の内装のペンキ塗りや床はりを友人と協力しあって手作りで行ったり、小物類で必要な備品は100均ショップで揃えたり、家賃も場所の割には安めのところをうまく探してきたりして、全面的に無駄を省いた店舗づくりを行った。一方で売り場にちょっとした掘り出し物の小物を置くなど、費用をかけず、器用さや心配りを感じさせる店舗づくりを行っている。
 厨房に関しても、広さに制限があるのでモルダーやリバースシーターなどの機械は買わず、成形は主に手作業で行ってきたが、商品構成を考えると特に問題はない。冷凍庫を開店後3、4年してから一台買い足したが、今後は機械類は増やす予定はない。
 ただ、厨房のレイアウトに関しては少し見直したいところがあるという。作業場所となる麺台を壁にくっつけて置いているので一方向にしか通れず、若干不便を感じているそうだ。「一人で作業する分には良いのですが、最近はパートの方にも製造の補助のような事をやってもらっているので、複数の人間が動く上ではちょっと手狭な感じです」と本行さん。麺台を中央に置いて動線を一周させる事ができるようなアイランド式のレイアウトの厨房にしたいという。
 「ただそうなるとお店を何日も休んで改装作業をしなくてはならず、少し大がかりです。悩むところですね」(本行さん)

SHOP DATA
住所:〒263‐0042千葉県千葉市黒砂1‐14‐5
電話:050‐1075‐9654
営業時間:午前11時〜午後6時(商品がなくなるまで)
定休日:日曜、月曜、第1火曜
品揃え:30種類
日商:平日4万円 土曜7万5000円

一人で安心して作れる機械を選ぶ - フェルマータ
店長の鈴木純一郎さん
東京・国分寺市のベーカリー「フェルマータ」の外観
オーブンは迷わず新品を購入

 東京・国分寺市のベーカリー「フェルマータ」の店長、鈴木純一郎さんは2008年のオープン時、開店資金の6割をかけてパン製造のための機械・器具類を揃えた。
 同店は売場3坪、厨房6坪の店内で、鈴木さんがほぼ1人で製造を行う小規模ベーカリー。そのためパン製造をはじめとする店舗運営には効率性が不可欠で、機械選びと厨房作りには妥協したくなかった。
 中でも最もこだわったのが、オーブン。新品のデッキオーブン3段で2枚差しのものを購入し、窯からパンを出す姿が来店した客にはっきり見えるよう、厨房と売り場の境目に置いた。3段で4枚差しのものもあったが、店のスペースが制限ある中で考え、あえて2枚差しのほうにした。オーブンは、自分の使い用途に合わせて育てていきたいという思いが強かったため、迷わず新品を購入。開店当初はハード系の商品もこだわって作っていきたいと考えていたため、バゲットがしっかり焼けるような蓄熱性が高い御影石を入れた炉床のタイプを選んだ。
 「購入したオーブンは開業前に勤めていたベーカリーでも使っていて馴染みがありました。故障が少なく性能もよいと思いました。ドウコンとホイロも同じメーカーの新品を買いました」(鈴木さん)

安心して機械に温度管理を任せた

 購入したドウコンは、他にあまりない1台に3室あるものだった。
 「一人で製造作業をするので、3通りの温度設定で、それぞれ平行して生地作りができる点が魅力でした」(鈴木さん)
 3室の使い分けは、低温モード、高温モード、20度Cでの低温長時間発酵モードの3通りで行った。特に低温長時間発酵モードはバゲットを作る上で、安定した品質のものができるので必要だった。
 「室温ですと季節によって温度が安定しないため、調節が難しいですが、低温発酵室を使うことでだいぶ楽になっていると思います。さらに、途中で生地が乾いて霧吹きをしなくてはならないという事もなく、温度が安定しているので、安心して機械に温度管理を任せられるという感じです」(鈴木さん)

厨房のレイアウトは、細かな図面を書いた

 そのほか冷凍庫も同じメーカーの新品を購入。ミキサーとリバースシーターは中古で、ミキサーは厨房業者から、リバースシーターは新品も扱う専門のメーカーから購入。上に作業台を乗せて生地成形作業に使えるコールドテーブル2台と売り場の冷蔵ショーケースは新品を購入した。機械によって品質向上を図れるところは図っていきたかったというのが鈴木さんの思いだ。
 また厨房のレイアウトにもこだわり、鈴木さんが自分で細かな図面を書いて決めた。その際には、まずオーブンの位置を決め、そこから1、2歩で必要なものが手に届くようなレイアウトを作り上げたという。売り場から厨房の中の様子がほぼ隅から隅まで見えるレイアウトで、来店客を安心させる手づくり感のアピールにつなげられるようにした。

修理の手配に手間取ったことも

 開店から9年がたち、店は当初、鈴木さんが思い描いたようなハード系の商品も多く売るような店ではないが、食パンやこだわりの焼き菓子なども評判の店となり、地域の人々に愛され、信頼される店となった。
 全てが想定通りではないが、とりあえず、厨房のレイアウトと機械には満足しているという。一度ドウコンディショナーの温度センサーが不調だった事があったが、メーカーに連絡し、素早い対応で直してもらい、業務にも支障は出なかった。
 ただ、中古で購入したミキサーでスイッチの調子が悪くなった時には、メーカーから直で購入したものではなかったので、修理を手配するのに少し手間がかかってしまった。
 「販売してくれた厨房業者に修理の窓口がなかったため、取り次いでもらうのに二度手間な上、メーカー側も、直で購入したユーザーと違って担当者がいるわけではないので対応しづらかったようです」(鈴木さん)

SHOP DATA
住所:〒185‐0035東京都国分寺市西町5‐36‐7
電話:042‐534‐3334
営業時間:午前8時〜午後6時頃(売切れるまで、月曜は午後3時まで、土曜は午前7時〜午後6時頃=売切れるまで)
定休日:日曜
品揃え:平日40種類 土曜60種類

一号店での経験を最大限に活かす - トーチドットベーカリー
トーチドットベーカリー大森の松本喜樹シェフ(中央)
東京・大田区、JR蒲田駅近くにある「トーチドットベーカリー」。「トーチドットベーカリー大森」は、トーチドットベーカリーの2号店だ
厨房が広くできて、大き目の機械を導入

 東京・大田区に今年8月、オープンしたベーカリー「トーチドットベーカリー大森」は、同区内で、JR鎌田駅近くにある「トーチドットベーカリー」の2号店だ。本店の「トーチドットベーカリー」の開業は2015年1月で、「トーチドットベーカリー大森」の開業は、その2年半後というタイミングとなる。
 「トーチドットベーカリー大森」のシェフを務めるのは、本店の開業当初からパンを作り続けている松本喜樹さん。
 今回の2号店オープンに当たって松本さんは、本店での経験が、2号店の厨房の環境づくりに大いに活かされたという。
 「場所やスペースの違いはありますが、本店で気に入っているところは2号店にもできるだけ取り入れています。例えば、作っているところがお客様から見える造りにしたところです。パフォーマンスにもなりますし、安心感を持ってもらえると思っています」(松本さん)
 洗い場などあまり見せたくない部分は奥の方に配置するというところも、本店と同様にした。
 また、水道、ミキサー、ホイロ、窯という並びも、使い勝手の良さを実感していたことから、同じようにすることにこだわった。
 一方、本店と違う点は、導入した機械のサイズだ。
 「本店より0・5坪ほどスペースを広く取れたので、ミキサーと冷凍庫をサイズアップしました。冷凍庫は本店の1・5倍程度の容量です。雨が続いたり、暑い日が続くと必ずロスが出ますので、その対策として冷凍庫は欠かせません。食パンやバタールは冷凍保存し、後日フレンチトーストやラスクなどの2次加工品にできますから」(松本さん)

オーブンは本店と同じタイプのものを導入

 オーブンは、本店で使っているものと同じタイプのものを導入した。
 「作るアイテムは本店とほぼ同じで、ハード系と食パンが中心です。ですので、本店で使用しているオーブンに満足していたので、それと同じタイプのものを導入しました。炉床が石で、スチームが入るタイプです」(松本さん)
 両店で人気のパンは、食パンの「松明(たいまつ)」(税抜260円)で、焼成時間は40分と全アイテム中で最も長い。
 「『松明』は、4段すべてを占領して40分かかって焼き上げます。それ以外の時間は、種類を多く入れるようにして焼き上げ、こまめにいろんな種類の焼きたてを出せるようにしています。2枚差の4段は、こうした焼き方がやりやすいだけでなく、雨の日などあまり焼成しない日は、半分電源を切って節電することもできるので助かっています」(松本さん)
 機械のメーカーの選択については、3社に見積もりを依頼した。
 「メンテナンスのことを考えると、一つの会社に任せた方が楽なので、そうしました。さらに一社に一括でお願いすると、値引き交渉もしやすく、運搬や設置に関しても安心してお任せできます。また、故障の際など、必要な部品をすぐ取りに行けたりするので、近い場所にあるメーカーに決めました」(松本さん)

ミキサーもサイズをアップしてフックも変更

 ミキサーも、蒲田本店より大きなものを導入し、使用するフックも別の形にした。
 「本店では、通常タイプのドウフックを使用しているのですが、ドウフックでは仕込み量が多くなると、生地が上がってきてしまい、その都度ミキサーを止めて下ろす作業を行う必要がありました。ですので、ドラゴンフックに変えたのですが、ドウフックのときのような問題はなく、快適に使えています」(松本さん)
 また、本店ではミキサーの使用音による騒音問題があったことから、2号店では対策を打った。「マンションの1階にある本店では、マンションの住人から騒音について苦情を受けたことがあり、同じくマンションの1階にある2号店では、騒音防止のゴムシートを施して、ミキサーを設置しました」(松本さん)

SHOP DATA
住所:〒143‐0023 東京都大田区山王3‐28‐3
電話:03‐6809‐9055
営業時間:午後10時〜午後6時
定休日:月曜日(月曜が祝日の場合は火曜)
品揃え:50品目
日商:15万円


ブランスリー報道社では、パンの機械のBtoB展示会、ブランスリー業者街を主催しています。パンの機械探しに是非お役立てください。


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