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特集/2016年6月号

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ふすまパンってどうですか?
 「ふすま」と呼ばれる小麦の表皮部分を製粉した粉を主原料とした「ふすまパン」が注目を集めている。糖質や炭水化物の摂取量を制限して、たんぱく質や脂質を多く摂取する「低糖質ダイエット」に不可欠なパンとして語られることも多い。糖尿病などで、糖質を制限しなければならない人にも食べられている。また、低カロリーで微量栄養素を豊富に含む健康食品としても、コンビニなどで、人気を集めてる。

フスボン・ショップ
左から販売スタッフの上野さん、オーナーの川谷洋史さん
定番の「プレーン」(税込280円)
一番人気の「クランベリークリームチーズ」(税込380円)。どこから食べても中の具材にあたるようつなぎ目のないリング状の形になっている
東京・渋谷区にある「ふすまパン」専門店の「フスボン・ショップ」
売場に並ぶ商品。それぞれ糖質量やカロリー値、たんぱく質、食物繊維、脂質のグラム数などが記載されている
店内には実物のふすまを使用材料として展示している
血糖値コントロールについて考えてもらいたい

 「安易に低糖質ダイエットをすすめるというより、糖質制限を通じて自分の体調を管理することについて考えてもらえるようになればと思いました。今は健康に関する話題や議論がたくさんあふれていますが、ただ、血糖値をコントロールすることが健康にとって最も重要な事の一つであることは間違いないと思っています」
 東京・渋谷区にある「ふすまパン」専門店の「Fusubon Shop(フスボン・ショップ)」のオーナー・川谷洋史さんはこう話す。
 2014年9月にオープンした同店では、小麦などの穀物の外皮や胚芽部分で、糖質を多く含む胚乳が一切含まれていない「ふすま」を主原料にした低糖質ふすまパン「Fusubon(フスボン)」シリーズを販売する。ふすまパンは「ブランパン」という別名もあり、健康食品として注目され、コンビニなどでも売られているが、同店で販売する「フスボン」は、厳選された有機ふすまを使用し、素材や製法、形状などにこだわりのあるものを販売している。
 大阪府富田林市にある川谷さんの自宅一室を改築した工場で製造したものを冷凍で配送して販売しているが、売上の中心はオンラインショップ経由のものだ。購入者の中心は運動や美容のため身体作りを目的に低糖質ダイエットを始めた20〜30代。実店舗はアンテナ的な役割を担う形だが、実店舗もあらかじめ調べて訪ねてくる人が大半という。
 「通りすがりの一見さんが話を聞いて買っていくケースはまだまだ少ないですね。健康のために糖質管理をしていく意義などから説明していく必要があり、短時間ではなかなか伝わりません。今後の高齢化社会を考えるとロカボ(緩やかな糖質制限)市場自体は大きな流れになっていくとは思うのですが、まだ正確な情報は十分に伝わっていないので難しいところです」(川谷さん)

添加物が入っていない低糖質でもおいしいパン

 実は川谷さんは地元・富田林市の市会議員だ。2足のわらじを履いて活動する川谷さんだが、これからの高齢化社会を考えていく上で、普段の生活習慣を改善し、健康でいられる期間の「健康寿命」を国民全体が伸ばす必要性を強く感じている。
 川谷さんは、友人とのゴルフやジム通いをする中で、自身の体調管理を考え実際に低糖質ダイエットを始めたことがあった。
 「低糖質ダイエットは、カロリーだけを減らすダイエットと比べると量が食べられる分、無理なく行えるダイエットでした。主食を低糖質でおいしく食べられないかと考えているとき、ふすまパンや大豆粉パンといった糖質を控えたパンの存在を知りました。しかし、糖質を控えている点では健康的なのですが、ふすまに残留する農薬や、マーガリンに含まれるトランス脂肪酸、人工甘味料、、保存料、防腐剤などが僕自身とても気がかりでした。血糖値をコントロールしたい方々の中には添加物が気になる方が、僕以外にもきっといるはずだと思って開発を始めました」と川谷さんは話す。
 父親が糖尿病で苦しむ姿を目の当たりにするなど、家系的に糖質コントロールの必要性を感じ、「健康寿命」を意識したことも後押しし、色々と勉強する中でふすまパンづくりにのめりこんでいくこととなった。
 同店で販売するふすまパンは、そんな川谷さんが夢中になって生み出したものだ。大きな特徴は、細かく粉砕した有機ふすま粉に有機大豆粉を加えるなど配合の工夫により、独特の伸びやコシのあるもっちり感を出していることだ。また一部商品以外は、不溶性食物繊維の小麦ふすまと水溶性食物繊維を含むオーツ麦ふすまをバランスよく配合し、胃腸に優しく食べやすいものにしている。
 食に対する興味はあったが、パン作りは初めてだったという川谷さん。しかし、もともと理系で実験・研究する過程が好きだったという。
 「コンクリートの物性を操作する実験などをしていたのですが、色々な素材を用いパン生地の発酵の具合を実験する等、似通ったところがあってすぐはまりました」(川谷さん)
 専門店をつくり事業化しようと考えたのは2013年の年末頃。川谷さんは、パンに関して技術的な知識のある人の意見なども聞きながら、さらにレシピを研究した。
 開発した「フスボン」は、希少糖、ドライフルーツ、ステビアなどの天然甘味料を使用し、ほのかな甘みを出すなど工夫も重ねた。成形も手作りにこだわり、どこから食べても中の具材にあたるようつなぎ目のないリング状にした。
 「ねらいは大量生産ではないニッチな市場でした。そのため、手作りで一手間かけることにこだわりました」(川谷さん)。

3月に東京・池袋の「西武池袋ハニカムモード店」内にオープンした「フスボン」などが体感できるカフェ
スーパーフードのアサイーと有機キアヌを使用した「アサイークリームチーズ with キヌア」(税込454円)
「十勝あんパン with チアシード」(税込320円)
「三種レーズンのマフィン」(税込394円)
正しい情報を伝え市場を開拓していく

 食品メーカーやコンビニで低糖質シリーズの商品が出たり、低糖質ダイエットに関する本が売れたり、ロカボ市場自体は、一つの大きなブームとなりつつある。「フスボン・ショップ」も、こうした流れの中でウェブを活用した情報発信にも力を入れてきたが、川谷さんは、「ただまだロカボ市場も正しい情報や知識が浸透しておらず、低糖質ダイエットも一般的な話ではありません。だからどう伝えていくかが課題です」と話す。
 取材時、川谷さんは、糖質の吸収度合いの高い食品と低い食品のそれぞれを摂取した場合の血糖値の変動を表した線グラフを描いてくれた。吸収度合いが低い食品のほうが血糖値は緩やかに上昇し、そしてその分ゆっくり下降する。
 「血糖値の急激な上昇と低下を抑えることで糖を脂肪に変える働きがあるインスリンの分泌を抑えます。こういった知識の伝授も必要ですね」(川谷さん)
 また開発で一番苦労した点は、天然の甘味料だけで人工甘味料のように後味が残らず素早く甘みを感じられるように配合を工夫したことだそうだが、こうした自然界の素材に対するこだわりも積極的に伝えている。
 実はこの3月には東京・池袋と千葉、横浜の3カ所で、デパートのファッションフロアの一角に「フスボン」や低糖質ドリンクが体感できるカフェもオープンした。また関西でもデパートの食品売り場に期間限定ショップをオープンしている。
 「今後もデパートなどでも徐々に販路を広げていきたいですね。その場合こうした血糖コントロールに関する知識を商品の採用を決めるデパート側の担当者へどう伝えていくのかが課題です。フスボン・ショップの実店舗でも、接客でこうした事を正しく伝えられるスタッフを育てていく必要があります」と川谷さんはいう。
 さらに、 「フスボンのような低糖質ブランドを生み出すことでロカボ市場自体を活性化し、皆に健康寿命や糖質コントロールについて考えてもらえたらと思っています。まだ途上ですが、自分のライフワークととらえ、どこまで可能かどうか見ていきたいですね」とも話した。

フスボン・ショップ
住所:東京都渋谷区東3‐15‐3
電話:03‐6427‐4830
営業時間:午前10時〜午後7時
定休日:不定休
品揃え:30品目
スタッフ:販売常時1人(製造は大阪の厨房に常時5〜6人)
店舗面積:売り場3坪(大阪の厨房は7・5坪)
日商:4万円(店舗のみで)

みんなのパン
販売を担当する伊藤隆子さん。食生活指導士の資格を持っている
都営地下鉄菊川駅からすぐの場所にある「みんなのパン」。ふすまパンをのぼりと写真付きの看板でアピール
4台の丸テーブルが設置されたカフェスペース。テラス席もあり、「コーヒー」(税抜277円)などドリンクと、購入したパンを食べることができる
ふすまや大豆を使ったパンが並ぶ陳列棚
写真左は「ふすまの黒ごまあんこのおやき」(税抜196円)、写真右は「ふすまのあんぱん」(税抜144円)
「プレーンふすまの食パン」(税抜908円)
アレルギー対応のパン作りをきっかけにふすまを知る

 東京・墨田区のベーカリー「みんなのパン」では、小麦の外皮である「ふすま」を使った「ふすまパン」を2007年から販売している。現在はふすまパンに加えて、大豆を製粉した大豆粉を使ったパンも販売している。
 同店の店主、伊藤博之さんの妻、隆子さんは、ふすまパンを扱い始めたときの様子をこう話す。
 「前例がないことでしたし、作り始めてから2年間くらいは、試行錯誤して作っていて、どうやって販売していけばいいのかも分からない状態でした。売れ行きもよくなくて、並べたトレー1枚のパンが、ロスになってしまうこともありました」(隆子さん)
 同店は10年前に開業した。開業後約1年間は、ふすまパンは作っておらず、小麦の外皮ではなく胚乳部分の粉である小麦粉を使用した一般のパンを揃えるベーカリーとして営業していた。現在も販売している開業当初からの定番商品「キングブレッド」(税抜277円)は、卵、バター、グラニュー糖を使用した贅沢な味わいを売りにした食パンだ。
 ふすまパンを作ることになった経緯について、隆子さんはこう語る。
 「小さなお子様連れのお母さんから、卵や乳製品を使っていない、アレルギー対応のパンを求められました。そこで、卵と乳製品不使用の生地で、動物を模ったパンを作ったりしていたのですが、それと同時に、小麦を使わないパンはできないものか考えていました。子育て経験者の私にとっても、子どもが自分で手に持ち、自分のペースで食べられるという点でも、パンは母子ともに便利な食べ物だということは、よく分かっていました。ですので、何とかできないかという気持ちで、小麦粉の代替品を探していたのですが、そんなとき、ふすまに出合ったんです。ふすまパンは、小麦由来のグルテンを添加しなければならないので、アレルギー対応のパンとしては不向きです。しかし、ふすまパンは、糖質量を低く抑えることができるので、糖尿病など、糖質を制限しなければならない方には、主食として食べていただけます。大豆粉を使っても、低糖質のパンが作れます。アレルギー対応のパンも、予約販売は続けていて、卵と乳製品不使用のパンと、小麦粉不使用のパンをご用意できます」(隆子さん)

ふすまパンを知ってもらうだけでも価値がある

 ふすまパンは、「プレーンふすまの食パン」(税抜908円)や「ふすまの五穀コッペ5個入」(税抜575円)など食事パンのほか、「ふすまの焼きカレーパン」(税抜201円)や「ふすまのあんぱん」(税抜144円)などといった、惣菜パンや菓子パンもあり、14種類ある。また、大豆粉を使った「大豆の食パン」(税抜1350円)など5種類のパンと、「ふすまのクッキー」(税抜260円)もあるので、低糖質に特化した製品は全部で20種類揃う。
 ふすまを使用した製品も、大豆粉を使用した製品も、弾力があって、ふわふわしっとりしている。唾液で溶けていく感じはないので、咀嚼回数が多くなり、満足感を得られる効果がありそうだ。
 「糖質量を抑えることを第一に作っているので、血糖値を上昇させにくい糖アルコール由来の砂糖を使い、ふすま粉も、色々な種類がある中から、できる限りでん粉質を含まないものを選んでいます。また、ふすま特有の臭いを抑えるためにシナモンを入れています」(隆子さん)
 売り場は、陳列スペースが2つに分かれており、片方は低糖質の製品、もう一方は「キングブレッド」などの一般のパンが並ぶ。一般のパンも約20種類あるので、低糖質のパンと一般のパンが半分ずつの割合だ。
 「当店の低糖質でない一般のパンを購入される常連のお客様は、ふすまパンはほとんど召し上がらないです。でんぷんが口の中で糖に変化するときのあのおいしさは、ふすまパンにはありませんから。でも、ご家族や知人、もしくはご本人が、今後糖質制限の食事が必要になったら、ふすまパンの存在を知っているという、それだけの知識でも役に立つのではないかと思っています。以前、妊娠糖尿病の方が、出産を諦めるよう診断されて落ち込んでいたとき、ふすまパンを知って当店を訪ねてきてくれました。糖質制限の治療を勧める病院を知っていたので、紹介でき、無事出産されました」(隆子さん)
 販路は現在、店頭だけでなく、ネットショッピングや隣接区の病院内売店まで広がっている。糖質制限が必要な人と、ふすまパンが着実に繋がり始めているのだ。

「ふすまの五穀コッペ5個入り」(税抜575円)
「大豆のオニオンベーコンガーリック」(税抜260円)
「ふすまの焼きカレーパン」(税抜201円)
相談者には、隆子さんの健康診断の記録を公開している。その記録をもとに、糖質制限やふすまパンの効果を説明する
自分の実体験をふすまパンの販売に活かす

 「売れるようになった理由は、味が改良されてきたことだけでなく、販売方法に関してもあるんです。販売する私自身が、ふすまパンで体調を改善できて、その姿をお客様に見ていただくことができたからなんです」(隆子さん)
 隆子さんは、健康診断で糖尿病予備軍と診断され、病院の指導に従った食事を6カ月続けたが、ほとんど効果がなかった。ふすまパンの販売の仕方を模索していたのも、その頃だった。
 「病院からは『様子をみましょう』と言われて突き放されたようなショックを受け、姉からは、『その体型では説得力がない』と言われました。この一言は効きました。5カ月間、ご飯の代わりに毎食ふすまパンを食べて糖質制限をしました。結果、約10キロ減量でき、次の健康診断では、すべての検査項目の数値が標準値に改善でき、糖尿病などの病気のリスクがなくなったんです」(隆子さん)
 検診結果や体重の推移、毎食の食事内容など、隆子さんの身体の変化が分かる一切の記録は、糖質制限の必要に迫られた客などに公開している。店内では、糖質制限に関する書籍や、血糖値を上げない食品も紹介している。また、隆子さんは食生活指導士の資格も取り、幅広い観点から食生活を見直せる知識も得た。
 「ブームではなく、大事な毎日の食事として、ふすまパンを取り入れて欲しいと思っています。私の実体験も参考に、毎日少しずつ、実感しながら食生活を改善していただきたいですね。食を見直すことは、一生の宝になると思っています」(隆子さん)
 一方で、同店のふすまパンは、今話題となっている、糖質の摂取量を抑えることで痩せようとする「低糖質ダイエット」を目的とした人からのニーズも増えてきているという。
 「『低糖質ダイエット』に関する情報が出回る中で、ふすまとダイエットが結びつくようになってきています。ただ、『低糖質ダイエット』を行うに当たって、糖質以外の栄養素、特に動物性たんぱく質はしっかり摂らないといけません。カロリー制限のダイエットと混同しないよう、正しいやり方を理解しなければ、効果は出ませんし、続けていけないと思います」(隆子さん)
 同店は、低糖質のパン、卵、乳、グルテンアレルギー対応のパン、一般のパンを作り、パンについての様々なニーズに応えている。
 「『みんなにおいしく食べてもらいたいね』という息子の言葉通りに、当店は育ってきたなと思っています」(隆子さん)

みんなのパン
住所:東京都墨田区菊川3‐17‐2 アドン菊川ビル1F
電話:03‐5600‐3300
営業時間:午前9時〜午後7時
定休日:日曜、水曜
品揃え:約40品目
スタッフ:製造常時2人、販売常時1人
店舗面積:売り場(カフェスペース含む)約10坪、厨房約7坪
月商:約230万円


編集部からひとこと:
「ふすまパン」はここのところ「低糖質ダイエット」が話題になるのとともに注目を集めていますが、糖尿病などで、糖質制限をしなくてはならない人たちには、大変ありがたい主食として重宝されてきました。今回は、2軒のパン屋さんを取材しましたが、「ふすまパン」への思いは深く、そこにベーカリー経営のための多くのヒントがありました。


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