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| いろいろ、エッセイ／2009年3月号 |
2023年11月18日から、発行から１年を経過した記事は、会員の方以外にも全文が公開される仕様になりました。
| 景気低迷でも過去最高益 - 武市 多美夫(パンを売り続けてきた男)
いろいろ、エッセイ(27)
フットパスが最近新たな話題になっている。フットパスとは、イギリスを発祥とする、森林や田園地帯、古い街並みなど、地域に昔からあるありのままの風景を楽しみながら、歩くこと「Ｆｏｏｔ」ができる、小径「Ｐａｔｈ」のことと、ガイドブックに説明がある。 我家からほどない所に、そのコースがある。興味をそそられた私は早速女房殿を誘い、寒風をもろともせず歩いてみた。 雑木林や竹林や昔ながらの古街道がある。コースガイドによると、江戸を結ぶ近道として人が行き交い、物資が運ばれ、近藤勇や土方歳三、沖田総司などが剣術の稽古で通った道とのことだ。そこには、のどかでゆったりした時間が流れていた。 最近、不景気風も避けて通るほど勢いのあるベーカリーに三軒出会えた。その中の一軒がフットパスのコースの終着地点にあった。 １００％天然酵母を使用して焼き上げた数々のパンが焼きたての香りを連れて、次々に陳列台に並べられた。店内に入った途端に焼きたてのいい香りがする。 こだわりを持っているのが手にとるように分る店でお客が引っ切り無しに入店していた。 直ぐ隣が宅配ピザ屋で、それ以外に店はない。住宅街の中にあるベーカリーだが、その店の周辺だけが輝いているように見えた。 世界的な景気低迷の中で、過去最高益を記録している企業がある。先に紹介したユニクロ以外にも、マクドナルドやサントリー、アサヒビール、東洋水産などがそうだ。 その要因も様々で、品質が保証された低価格メニューが人気を呼んだり、消費者のニーズを素早く商品に反映させて需要を掘り起こした商品に人気が集まったりしている。 好調の裏には「低価格」「独自性」「ニーズの把握とスピーディな対応」「商品開発」が、大きなポイントになっている。ベーカリー業界にとっても多いに参考となる。 昨年パンを値上げした途端に客足が鈍り、極端に売上が落ちた店の責任者が取った策は、低価格帯の製品を集めて販売するというものだった。その結果客足が戻り売上がアップした。「商売は来店者がいてお買い上げ頂かないとどうにもならない。そんな事は前から頭では分っていたつもりだが、身にしみて分った。それだけでも収穫でしたよ」と一言。やけにリアルな言葉だった。 不景気だ不景気だと言っているだけでは何も変わらない。時には古街道や田園風景の中に身を任せて、思考を思い切って変えてみるのもいいかも知れない。 |
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