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読者を訪ねて三千里／2007年3月号

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息子にいい形で引き継ぎたい - 寿屋ベーカリー

東京都羽村市栄町２‐１０‐１１、電話０４２５‐５５‐８１２３

昔からの馴染み客が支えになってくれた

リニューアルして人気の「フレッシュクロワッサン」

オーナーの長文男さん（中央）と具子夫人（右）、長男の武雄さん（左）

どこか懐かしい雰囲気を醸し出す寿屋ベーカリーの店構え

売り場は約１０坪の広さだ。

　東京・羽村市の寿屋ベーカリー。創業は１９８３年。
　「平成８年がピークでした。それはよく売れました」とオーナー夫人の長具子さんは話す。
　売り場は約１０坪、厨房は約２０坪。ピーク時の年商はおよそ７５００万円。パンの品揃えは、およそ１００品目。全体的に価格は低めの設定だ。
　オーナーの長文男さんは、２２歳のときに、電気関係の重機を作る仕事から、パン職人に転向した。８歳上の兄がベーカリーを営んでいて、その手伝いをしながら、東京製菓学校の夜学に通った。
　１４年後の１９８３年、現在の場所に店を出し、独立した。固定客がどんどん増えていって、売上は年を追うごとに伸びていった。
　「息子の感性をもっともっととり入れていきたいと思っているんです」と長さんはいった。長さんの長男、武雄さんは、６年前からいっしょにパンを作っている。武雄さんは美容師として働いた経験がある。
　「『高いけど、これだったら買う』といわれるような店を目指したいんです」と武雄さんはいった。
　同ベーカリーの人気商品のひとつ、クロワッサンは、以前は１個１２０円で販売していたが、材料を１から吟味し直して、「フレッシュクロワッサン」の商品名で１５０円で発売したところ、予想以上の売れ行きをキープしているという。「フレッシュバターか発酵バターかで、相当迷ったのですが、焼き上がったときの味の差がなかったので、バターを選びました」と武雄さんはいう。
　さらに「うちのお客様はすべて顔を知っている人たちなので、今後は新しいお客様をどんどん開拓していけたらと思っています」
　しかし、「顔を知らない客が一人もいなかった」ということが強力な武器ともなった。武雄さんがいっしょに働くようになる５年前の平成８年から、売上は少しずつ落ちていった。
　「町もだんだんと老いていきます。子供たちが大きくなって、独立し、町から離れていきます」（長さん）。数年前に近くに、大型ベーカリーができて、さらに売上が落ちた。同じ町のベーカリー２軒が、廃業に追い込まれた。
　そんなときに力となってくれたのが、昔からの馴染み客の「顔を知っている人たち」だった。「うちの場合は、レストランなどに収めるパンが比較的多かったのも、支えになりました」と具子夫人は話した。

高付加価値のパンを適正な価格で

フレッシュバターを配合して人気の「イギリスパン」（右）。左は、同じ生地から作る角食パンの「フレッシュモーニング」（１斤２３０円）

「ハムサンド」や「タマゴサンド」などの三角サンドも根強い人気があるという。

「メープルラウンド」などのラウンド食パンは、スライスしたものも、ひとつ５０円で販売している。

中央の平台に並ぶ様々な商品。各商品の前には試食が置いてあった。

各種ラスクの販売にも力を入れている。

　寿屋ベーカリーでは、ずば抜けて売れる商品はなく、どれも平均して売れているという。売り場には様々な商品が並んでいた。
　「フレッシュクロワッサン」（１５０円）は、前述の通り、武雄さんの発案で、リニューアルした商品だ。大き目のサイズで、フレッシュバターを使用。価格を３０円上げたが、売れ行きが鈍るということはまったくなかったという。
　「イギリスパン」（１斤２３０円）は、フレッシュバターを練り込んだ山型食パンで、「袋を開けると、なんともいえないバターの香りがする」などと評判の商品。「コクとコシがあるのがセールスポイントです」と長さん。
　調理パンも人気が高いという。「コロッケサンド」（１６０円）は、コロッケと千切りのキャベツをたっぷりとはさんだパンで、どこにでもある商品だが、人気が高い。たっぷりの千切りキャベツとハムカツをサンドした「ハムカツサンド」（１１０円）も好評。
　「ハムサンド」（１６０円）や「タマゴサンド」（１６０円）などの三角サンドも根強い人気があるという。
　「メイプルラウンド」（ハーフカット２２０円）、「いちごラウンド」（ハーフカット２２０円）などのラウンド食パンは、２センチ程度の厚さにスライスしたものも１つ５０円で販売している。「最初に買っていただく時に、１本やハーフカットだと買いづらいのではないかと考えました。スライスをまず買っていただき、気に入っていただけたら、ハーフカットを買っていただきたいということです」（長さん）
　「ガーリックラスク」（１袋１６０円）や「シュガーラスク」（１袋１６０円）などのラスクにも力を入れている。フランスパンやクロワッサンを再利用して作る。
　寿屋ベーカリーは、製造が長さんと武雄さんのほか、製造補助のパートが数人。販売やサンドイッチ製造などを担当するスタッフが具子夫人とパートスタッフ数人の体制た。平均日商は、およそ１７万円と健闘している。
　「なるべく早く息子に譲りたいと思っているんです」と長さんは穏やかに微笑みながら言った。
　「自分としては、品数をもっと絞り込んで、価格も今より高めにして、高付加価値の商品を作っていきたいと思っています。それと飛び抜けて売れる看板商品を何とか作りたいですね」と武雄さんは目を輝かせた。

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