看板商品になった「和田さんちのカスタードクリームパン」
「カスタードクリームパン」のバラエティー商品の「和田さんちのコーヒークリームパン」も製造販売している。
昔ながらの店構えが印象的な冨士屋製パンの外観
売り場は約１５坪の広さだ
「お客様をよべる看板商品があって、それを買いに来たお客様が、ついでにほかの商品も買ってくれる、というのがひとつの理想的な形だと思うんです」
東京・渋谷区、冨士屋製パンの和田篤尚オーナーは、こう話した。
同ベーカリーは１９３０年創業の老舗で、和田さんは、３代目だ。ずっと、小田急線・代々木上原駅近くの現在の場所で営業してきた。和田さんはおよそ２４年前に家業を継ぐ形で、オーナーとなった。
「この辺は、学校の併合が示すように、人口が減ってきています。しかし、ありがたいことに昔からの馴染みのお客様に多く来店していただいています」（和田さん）
同ベーカリーは、製造が和田さんと、午前中に入るパート３人。販売は、安子夫人やパートの女性がシフトを組み、常時１人の体制だ。平均日商はおよそ１０万円。
和田さんは、昔ながらの小規模ベーカリーが生き残っていくためにはどうしたらいいかをいろいろと考えてきた。そして得た結論が「昔ながらのパンにさらにみがきをかけて、それを店の個性として打ち出していく」ということだった。
「この近くにも競争相手のパン屋はたくさんあって、そのほとんどが、今流行のヨーロッパタイプのハード系のパンを一生懸命作っています。うちは、そこをぐっと思いとどまって、その対極の昔ながらの日本のパンに力を入れていきたいと思うんです」
そんな和田さんは１年ほど前に、クリームパンをリニューアルした。理由の一つは、それまで販売していたクリームパンの売れ行きが鈍ってきていたこと。まず、カスタードクリームを自家製のものにかえて、生地もクリームパン専用のものを仕込むことにした。開発に当たっては、いろいろな人に教えを請い、多くの書物を調べた。
そうして出来上がったのが「和田さんちのカスタードクリームパン」（１３７円）だ。同時に、「和田さんちのコーヒークリームパン」（１４７円）も発売した。こちらは、コーヒー味の自家製カスタードクリームを包んだ商品で、生地にもコーヒーを練り込んでいる。
発売した当初、「和田さんちのカスタードクリームパン」は１日８０個は売れるヒット商品になった。１年経った現在でも１日４０個程度は売れているという。
「話は簡単です。手をかけた商品は売れるんです」（和田さん）
